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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!
第18話 労働時間不正申告⑤
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「……で、伊集院係長。リサイクルセンターから問い合わせがあってね。君、強引に基盤を持ち帰ったそうじゃないか。どういうつもりなんだ?」
会議ブースへ呼び出された係長は青葉マネージャー自らが厳しく尋問していた。そして調書のために私と東薔薇さまも同席している。
「強引? ではないがね。ま、ちょっと気になることがあって」
「何を調べてるんだ?」
マネージャーは強気な姿勢だ。けれども係長は意も介さず不気味な笑みを浮かべている。
「タレコミですよ。過去に財務部で悪質な労働時間不正申告があったと」
「財務部は専務の出身だ。それがどういうことか分かってるよな?」
「ええ、だから内密に動いてた。揉み消すためにね」
「……なるほど。で、因みに誰だ? 証拠は掴んだのか?」
「財務部、現マネージャーと係長です。二年前のデーターをIT本部で復元して貰ったけど、確固たる証拠は出ませんでした」
「ふふん。これは内通者に悪意を感じるな。誰のリークだ?」
「さぁ、匿名なので分かりかねます」
「分からん? お前にしては片手落ちじゃないか!」
係長は何かを隠してるな。余裕綽々の表情が物語ってるよ。
「まぁ、内通者から連絡来たら上手く説明しときますよ……あ、それともう一つあった」
「ん?」
「いや実はね、ITに提出した基盤がもう一つあって……これ間違って渡してしまったんだがーー」
不意に係長は東薔薇さまを睨みつけた。
「出退勤入力の不正操作だ。休日をあたかも勤務したかの様に装い、賃金詐取した証拠を掴んだ。しかも一度や二度じゃない。マネージャー、彼を如何しますか?」
「えっ?」
「なっ……まさか!?」
青葉マネージャーは二人を交互に見やる。
「そうだ、お前だ。東薔薇!」
東薔薇さまの表情が急にこわばった。そして見たことのない怒りをぶち撒けてしまう。
「そんな復元は不可能だ! いい加減なこと言うなっ!」
「ふん。お前、俺のPCにアクセスしてるよな。夜中、勝手に事務所入って。俺が知らないとでも思っていたのか?」
「それは……いや待て、それとこれとは関係ないだろ」
驚いた。スパイだからってそんな本格的な活動してたなんて信じられない。我々は一企業人だよ?
「入退門ログを改ざんしてるよな」
「あっ」
「本当なんですか、東薔薇さん?」
「……専務の命だ。夜中に勤務実績残すわけにいかないだろ。だから帳尻合わせで休日出勤した様に遠隔操作で入退門ログを……」
「そんなことって出来るのですか?」
「あぁ。システムをプログラムしたのは僕だよ。IT本部時代にね」
呆れたわ。その才能、もっと別のことに役立ててください。
「マネージャー、不正操作したのは事実ですが業務命令なんです。僕を追い詰めると専務の名を汚すことになります」
東薔薇さまは専務を引き合いに出し、有耶無耶にするおつもりだ。
「処分はマネージャーに一任しますよ。彼の言葉、録音させて貰いましたが表には出しません。……が、東薔薇よ、二度と俺を探るな!」
そう捨て台詞を吐いて係長は出て行かれました。私も部下として後を追います。
さよなら。憧れの、いえもう憧れておりません。東薔薇さん。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
※池園視点
ランチタイムになると綾坂花が現れる。けれども今日はちょっぴりご機嫌斜めな様子だ。
「あぁぁ、私の恋路が終結しましたぁぁ。残念無念ですぅぅ」
えーと、貴女たち付き合ってもないけどね。ま、言うまいか。
「でもこれで東薔薇の動きを止めたわ」
「そーなんです。聞いたら事務所に小型カメラ設置してて、逆に彼を監視してたんです。凄いですね、うちの係長」
「ホント。東薔薇の基盤ってITに提出してないのに嘘並べて自白させるなんて流石は元刑事さんね」
そう、彼は尾行されてることを想定していた。そして追ってこないであろう埠頭で選別し、態と関係ない基盤をITに提出してたの。つまりはブラフ。本命の基盤は私が預かり社外の専門機関へ依頼してるわ。それが解析されれば……
「ところで先輩。背任疑惑のこと、隠してませんでした?」
「そうね。綾坂花をまだ信用してなかったから」
「奇想天外な上司だけど私は係長の部下です。妹さんのことだって協力したいです。だから……」
彼女は単純だ。いえ、純粋と言っておこう。
「分かったわ。その前に確認。貴女の役割はお目付役を演じながら彼の行動をサポートし、青葉マネージャーには嘘の報告をするの。できる?」
「私も確認を」
「何かしら?」
「最強最悪のモンスターは『門前専務』で合ってますか?」
ふふふ、面白いわ。そう、正に巨大モンスターね。
「花さん、私が追ってるのは背任疑惑ではなく、伊集院ララの消息とそれに関連してる門前の不祥事なの」
「不祥事?」
「ええ。全てをお話するわ……」
会議ブースへ呼び出された係長は青葉マネージャー自らが厳しく尋問していた。そして調書のために私と東薔薇さまも同席している。
「強引? ではないがね。ま、ちょっと気になることがあって」
「何を調べてるんだ?」
マネージャーは強気な姿勢だ。けれども係長は意も介さず不気味な笑みを浮かべている。
「タレコミですよ。過去に財務部で悪質な労働時間不正申告があったと」
「財務部は専務の出身だ。それがどういうことか分かってるよな?」
「ええ、だから内密に動いてた。揉み消すためにね」
「……なるほど。で、因みに誰だ? 証拠は掴んだのか?」
「財務部、現マネージャーと係長です。二年前のデーターをIT本部で復元して貰ったけど、確固たる証拠は出ませんでした」
「ふふん。これは内通者に悪意を感じるな。誰のリークだ?」
「さぁ、匿名なので分かりかねます」
「分からん? お前にしては片手落ちじゃないか!」
係長は何かを隠してるな。余裕綽々の表情が物語ってるよ。
「まぁ、内通者から連絡来たら上手く説明しときますよ……あ、それともう一つあった」
「ん?」
「いや実はね、ITに提出した基盤がもう一つあって……これ間違って渡してしまったんだがーー」
不意に係長は東薔薇さまを睨みつけた。
「出退勤入力の不正操作だ。休日をあたかも勤務したかの様に装い、賃金詐取した証拠を掴んだ。しかも一度や二度じゃない。マネージャー、彼を如何しますか?」
「えっ?」
「なっ……まさか!?」
青葉マネージャーは二人を交互に見やる。
「そうだ、お前だ。東薔薇!」
東薔薇さまの表情が急にこわばった。そして見たことのない怒りをぶち撒けてしまう。
「そんな復元は不可能だ! いい加減なこと言うなっ!」
「ふん。お前、俺のPCにアクセスしてるよな。夜中、勝手に事務所入って。俺が知らないとでも思っていたのか?」
「それは……いや待て、それとこれとは関係ないだろ」
驚いた。スパイだからってそんな本格的な活動してたなんて信じられない。我々は一企業人だよ?
「入退門ログを改ざんしてるよな」
「あっ」
「本当なんですか、東薔薇さん?」
「……専務の命だ。夜中に勤務実績残すわけにいかないだろ。だから帳尻合わせで休日出勤した様に遠隔操作で入退門ログを……」
「そんなことって出来るのですか?」
「あぁ。システムをプログラムしたのは僕だよ。IT本部時代にね」
呆れたわ。その才能、もっと別のことに役立ててください。
「マネージャー、不正操作したのは事実ですが業務命令なんです。僕を追い詰めると専務の名を汚すことになります」
東薔薇さまは専務を引き合いに出し、有耶無耶にするおつもりだ。
「処分はマネージャーに一任しますよ。彼の言葉、録音させて貰いましたが表には出しません。……が、東薔薇よ、二度と俺を探るな!」
そう捨て台詞を吐いて係長は出て行かれました。私も部下として後を追います。
さよなら。憧れの、いえもう憧れておりません。東薔薇さん。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
※池園視点
ランチタイムになると綾坂花が現れる。けれども今日はちょっぴりご機嫌斜めな様子だ。
「あぁぁ、私の恋路が終結しましたぁぁ。残念無念ですぅぅ」
えーと、貴女たち付き合ってもないけどね。ま、言うまいか。
「でもこれで東薔薇の動きを止めたわ」
「そーなんです。聞いたら事務所に小型カメラ設置してて、逆に彼を監視してたんです。凄いですね、うちの係長」
「ホント。東薔薇の基盤ってITに提出してないのに嘘並べて自白させるなんて流石は元刑事さんね」
そう、彼は尾行されてることを想定していた。そして追ってこないであろう埠頭で選別し、態と関係ない基盤をITに提出してたの。つまりはブラフ。本命の基盤は私が預かり社外の専門機関へ依頼してるわ。それが解析されれば……
「ところで先輩。背任疑惑のこと、隠してませんでした?」
「そうね。綾坂花をまだ信用してなかったから」
「奇想天外な上司だけど私は係長の部下です。妹さんのことだって協力したいです。だから……」
彼女は単純だ。いえ、純粋と言っておこう。
「分かったわ。その前に確認。貴女の役割はお目付役を演じながら彼の行動をサポートし、青葉マネージャーには嘘の報告をするの。できる?」
「私も確認を」
「何かしら?」
「最強最悪のモンスターは『門前専務』で合ってますか?」
ふふふ、面白いわ。そう、正に巨大モンスターね。
「花さん、私が追ってるのは背任疑惑ではなく、伊集院ララの消息とそれに関連してる門前の不祥事なの」
「不祥事?」
「ええ。全てをお話するわ……」
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