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そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!

第24話 品転⑥

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「あ、居ましたよ! 東薔薇さん」

ガラス張りの会議室で青葉マネージャーがアタフタと電話してる姿を目撃した。尋常じゃない面持ちだ。恐らく相手は品転に関係した取引先だと推測する。国税局査察部の抜き打ち監査で裏帳簿の存在がバレたと連絡があったのだろう。

私と東薔薇さんは彼の動向に目を光らせる。やがてマネージャーが慌ただしく動き出した。

「どちらへ行かれるのでしょう? 早く追跡しないと」
「綾坂さん、GPSで追えば大丈夫だよ」
「携帯の! なるほど。流石はIT担当です」
「例の領収書の保管場所へ行くんだろうね」

すかさず私は本社ショールームで係長の到着を待ってる池園先輩に一報を入れた。

マネージャーはフロアーを出てエレベーターに乗る。行き先は地下二階。備品や古い書類を収めてる倉庫だった。

「で、どのタイミングで声掛けしますか? 私たちだけで大丈夫でしょうか?」

二人だけでは不安だ。相手は幹部社員の上司。振り切られる可能性もある。

「そうだね。警備員を呼んでくれないか? 係長が到着するまでの時間稼ぎにはなる」
「かしこまりました」

東薔薇さんを倉庫に残し私は一階へ戻り、守衛所に駆け込んだ。不審者がいるって騒いで強引に二人の警備員を連れて行く。

けれども既に修羅場になっていた。

「何故お前がここに居る!」
「見つかっちゃったか。い、いゃあ……青葉マネージャー。実は貴方を見張ってまして」
「言ってる意味が分からん。いいから退け!」
「少しお話しませんか?」
「私は急いでるんだよ! 退かないか!」
「あっ……」

マネージャーは彼を突き飛ばし振り切ろうとする。

全く頼りにならないわね。こうなれば私がガツンと言ってやる。

「マネージャー、何を慌ててるのですか? それ、品転の領収書ですよね!?」

その言葉にマネージャーの動きは止まった。そして私が警備員二人を引き連れてる姿を見て、絶句した様だ。

「裏帳簿のコピーもここにあります。直に国税局も入ってくるでしょう。もう貴方は逃げられませんわ!」
「……」

マネージャーの手がわなわなと震えている。

「あ、綾坂くん……君が……何故それを?」
「私は業務を全うしてるだけです。会社に不利益を齎す社員を見逃す訳にはまいりません!」
「は……はは。それは相手と内容によるだろ。これが公になれば、それこそ会社の不利益になるぞ。さ、いいからそれを渡しなさい!」

マネージャーは正気を失った様に狂い出し、私から書類を奪おうとする。それを止めようと警備員が間に入り揉み合いになった。

「ここで終わる訳にはいかないんだ!」

ーーと、その時だった。

「お前はとっくに終わってるんだよ」

倉庫に伊集院係長と池園先輩が現れたのだ。

「か、係長ーー!!」

後方には恐らく国税局の方であろう男性も複数人いらっしゃる。

「さて青葉高文。専務室へ案内して貰おうか」
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