宮廷婦人の侍女なのに、なぜか私が見初められる〜⁉︎

鼻血の親分

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第三部

19. お手つきの巻②

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「奇跡の侍女が来たか!いえ、貴女は奇跡を通り越した化け物よっ、ポピー!」
い、いきなり、化け物ってひどいです……。
総取締役のアメリアは苛立っていた。いつもの様にチェアーに踏ん反り返ってはいない。仁王立ちだ。多分、私が後宮の常識をぶっこわしたことへの八つ当たりだと思う。
「ったく、ジョーと接触するわ、不審者を捕まえるわ、今度はなに?侍女なのにお手つきですって⁉︎まったく信じられない!」
「あの、アメリア様、本当の事なのでしょうか?私、皇太子様とはつゆ知らずに……その……」
「あー、もう、だから何で気づかないのよ⁉︎」
「だって……」   
ライラ組3号館のメンバーはアメリアの興奮した様子を見て、茫然と立ち尽くしていた。
「ア、アンタ……本当に……?」
「お姉様……どうもそのようで……」
お手つき候補のメンバーはこの瞬間、自分たちが格下だと思い知らされたのです。でも、現実を認めたくないのでしょうか。皆さん、顔が引きつったままです。それもそのはず。私、先程まで姉の侍女でしたから。メイド服着てお毒味してましたから。

ただ、我が姉は気持ちを切り替えるのが早かったです。
「ポピー、でかしたわ!」
「お姉様?」
「悔しいけど、もうそんなのどうでもいいわ。アンタは殿下に見初められた!我が家に金貨が配給されるの!豊かになるの!それに名誉だわ!貧乏な私たちは貴族として恥ずかしくない地位を得るのよ!」
そんなに捲し立てられてもピンときません。

アメリアは天を仰いでいたが、気持ちを落ち着かせるためか、深呼吸を繰り返している。やがて冷静になった彼女はシルバーの指輪を渡してきた。
「これは?」
「一応、規則だから。貴女はお手つきになられたのです。これはその証です。それと急な話なのでエミリーを秘書官に付けます。今の貴女は侍女がいませんから。エミリー、後宮の一室へご案内して」
「か、かしこまりました」

こうして私は後宮の序列で言えば側妃お2人、お手つき8人に続く、11番の地位という扱いを受ける事になったのです。因みに我が姉はライラ組お手つき候補16番ですが、後宮婦人の序列は41番で、一気に抜き去った事になります。

***

お手つきのお部屋は後宮の一室にあり、中は幾つかの空間に分かれ、とても広々としている。そして、ゴージャスな雰囲気を漂わす装飾品の数々に圧倒されてしまう。納屋で暮らしていた私には相応しくないプライベートルームでした。
「エミリー、ギャップが大き過ぎて何だか落ち着かないわね」
「時期に慣れます。ここはドレスも沢山揃ってますし、専用のシェフも配置されるので、ポピー様には不自由なくお過ごし頂けると思います」
「ねえ、エミリー」
「はい」
「お手つきって何して過ごすの?」
「そうですね。通常は派閥の運営などに携わるのですが、そこの所はまだ定かでありません」
「派閥か!入りたくなーーい!」
「そうはいかないと思います。いずれ、ご指示があるかと……」
ああ、ジョーに会いたいな。派閥に入らなくても済む様に何とかならないかしら。……つか、思えばアイツがちゃんと説明してくれればこんな事にならなかったのよ。全く、麗しくないジョーめ!今度会ったらとっちめてやる!それにキース様、いえ、何ちゃら皇太子も同罪よ!覚えてらっしゃい!

私はあと3ヶ月で牧場に帰れるところだったのに。……ん?待てよ。お手つきになったって事はいつまで伏魔殿にいなければならないの?
「ねえ、エミリー。もう一つ質問」
「はい、何でしょう?」
「私の定年っていつ?」
「お手つきは30歳です」 
「はい⁈」
「だから30歳が定年です」
「えっ⁉︎えーーっ!そんなにいいっ!」

お父様、話が違うじゃないですか!私の不注意とは言え、あと3ヶ月で終了だったのが12年もこんな所に居なければいけないの⁉︎嘘でしょうーー!




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