26 / 30
第三部
26. お手つきの巻⑨
しおりを挟む
「ああっ、どうしようーー!1ヶ月後に宮廷行列があるよおおおおーー!」
「ポピー様、グレース様から具体的なお話があったのですか?」
「再来週から全体練習するんだって。もう最悪ーー!それにお茶会とか社交パーティーやら色々催し物が盛り沢山で超面倒臭いわーー!」
「それは大変です。差し当たっては行進ですね。で、またへクセ様にご指導してもらうのですか?」
「一旦は自分で何とかしますって言い切っちゃったの」
「えっ⁉︎何とかって?誰からも教わらずに?」
「まあ、一応教わったし。あんなもん適当にニコニコして歩いてれば良いんでしょう?」
「い、いえ、そんな簡単な事では無いと思いますが……」
「う、うん……そうだよね」
やっぱりやりたくないよう。私は大いに注目されるわ。侍女上がりの成り上がり婦人は『おっさん歩き』だったって嘲笑われるに決まってるっ!皇太子様は淑女に飽きてご乱心なされたって思われるのよ!
「ああっ、どうしようーー⁉︎」
私はテーブルに腰掛け、法衣のまま極小水晶に手をかざし黒魔術の真似事をしてみる。
「どうか、宮廷行列が中止になりますように!」
「あ、あのね……ポピー様???」
その時、コンコンっと扉からノックが聞こえた。エミリーが出るとそのご婦人は遠慮なしにズカズカとお部屋まで入って来ます。
「なあに、その格好⁉︎ぷぷぷぷ、あははははは」
「お、お姉様!」
そう、我が姉ハリエットが不意に訪れたのです。
「ポピー?いえ、序列3番のポピー様、2度目のご寵愛、おめでとうございます」
「や、やめてください。ポピー様だなんて」
「それにしても、何てちっちゃな水晶だこと。小指の先ほどしかないじゃない。そんなんで呪いを掛けられるのかしら?ぷぷぷぷ……」
「お姉様!私を嘲笑いに来たのですか⁉︎」
「いえ、アンタ、行進の練習してるのかなって?」
「うっ、それが……」
私はこれまでの経緯を説明した。
「そんなこったろうと思ったわ。よし、じゃ私が教えてあげる!」
「えっ⁉︎でもライラ様に怒られない?」
「黙ってれば分からないわよ。アンタも黙ってなさい」
「……ありがとう、お姉様」
「なに、気持ち悪いわね。私は、あと3ヶ月で後宮婦人が終わるの。良い思い出になったわ。それにある貴族と出会ったし……でね、暫く宮廷に残りたいから引退後はアンタの侍女をやるわ!」
「はい⁉︎」
「何度も言わせないでよ。アンタの侍女をやるの」
「お、お姉様が私の侍女ですって⁉︎」
「そうよ。アンタも私の侍女してたじゃん。別に問題なくてよ」
突然の侍女宣言に私は戸惑った。あのプライドの塊の姉が妹の侍女を引き受けるとは考えられない発想です。
「お茶会に社交パーティーから全て教えてあげるから、私を雇いなさい?」
「ポピー様、これは願ってもないお話です!」
「こうなったら、アンタは側妃になるのよ!」
側妃……。エリオット様からもそう言われた。私なんかが本当に成れるのかしら。もし成ったら上手く立ち回れるの?お作法も何にも知らないのに大恥かくだけよ。誰かに厳しく教えて貰わないとやっていけないわ。それにへクセはもう上位の私に気を使って遠慮がちだし。その点、我が姉なら遠慮なく指導してくれるはずだよね。
「お姉様、ご指導宜しくお願いします」
「ああ、任せなさい!」
お父様、この後宮のわけの分からない行事を無難にこなすには優秀なアドバイザーが必要不可欠です。ここは我が姉にすがってみます。何かといがみ合っていた姉妹は遠く離れた宮廷で結束するのです。パーキー家、いえ貧乏貴族の底力を見せてやります!
「ポピー様、グレース様から具体的なお話があったのですか?」
「再来週から全体練習するんだって。もう最悪ーー!それにお茶会とか社交パーティーやら色々催し物が盛り沢山で超面倒臭いわーー!」
「それは大変です。差し当たっては行進ですね。で、またへクセ様にご指導してもらうのですか?」
「一旦は自分で何とかしますって言い切っちゃったの」
「えっ⁉︎何とかって?誰からも教わらずに?」
「まあ、一応教わったし。あんなもん適当にニコニコして歩いてれば良いんでしょう?」
「い、いえ、そんな簡単な事では無いと思いますが……」
「う、うん……そうだよね」
やっぱりやりたくないよう。私は大いに注目されるわ。侍女上がりの成り上がり婦人は『おっさん歩き』だったって嘲笑われるに決まってるっ!皇太子様は淑女に飽きてご乱心なされたって思われるのよ!
「ああっ、どうしようーー⁉︎」
私はテーブルに腰掛け、法衣のまま極小水晶に手をかざし黒魔術の真似事をしてみる。
「どうか、宮廷行列が中止になりますように!」
「あ、あのね……ポピー様???」
その時、コンコンっと扉からノックが聞こえた。エミリーが出るとそのご婦人は遠慮なしにズカズカとお部屋まで入って来ます。
「なあに、その格好⁉︎ぷぷぷぷ、あははははは」
「お、お姉様!」
そう、我が姉ハリエットが不意に訪れたのです。
「ポピー?いえ、序列3番のポピー様、2度目のご寵愛、おめでとうございます」
「や、やめてください。ポピー様だなんて」
「それにしても、何てちっちゃな水晶だこと。小指の先ほどしかないじゃない。そんなんで呪いを掛けられるのかしら?ぷぷぷぷ……」
「お姉様!私を嘲笑いに来たのですか⁉︎」
「いえ、アンタ、行進の練習してるのかなって?」
「うっ、それが……」
私はこれまでの経緯を説明した。
「そんなこったろうと思ったわ。よし、じゃ私が教えてあげる!」
「えっ⁉︎でもライラ様に怒られない?」
「黙ってれば分からないわよ。アンタも黙ってなさい」
「……ありがとう、お姉様」
「なに、気持ち悪いわね。私は、あと3ヶ月で後宮婦人が終わるの。良い思い出になったわ。それにある貴族と出会ったし……でね、暫く宮廷に残りたいから引退後はアンタの侍女をやるわ!」
「はい⁉︎」
「何度も言わせないでよ。アンタの侍女をやるの」
「お、お姉様が私の侍女ですって⁉︎」
「そうよ。アンタも私の侍女してたじゃん。別に問題なくてよ」
突然の侍女宣言に私は戸惑った。あのプライドの塊の姉が妹の侍女を引き受けるとは考えられない発想です。
「お茶会に社交パーティーから全て教えてあげるから、私を雇いなさい?」
「ポピー様、これは願ってもないお話です!」
「こうなったら、アンタは側妃になるのよ!」
側妃……。エリオット様からもそう言われた。私なんかが本当に成れるのかしら。もし成ったら上手く立ち回れるの?お作法も何にも知らないのに大恥かくだけよ。誰かに厳しく教えて貰わないとやっていけないわ。それにへクセはもう上位の私に気を使って遠慮がちだし。その点、我が姉なら遠慮なく指導してくれるはずだよね。
「お姉様、ご指導宜しくお願いします」
「ああ、任せなさい!」
お父様、この後宮のわけの分からない行事を無難にこなすには優秀なアドバイザーが必要不可欠です。ここは我が姉にすがってみます。何かといがみ合っていた姉妹は遠く離れた宮廷で結束するのです。パーキー家、いえ貧乏貴族の底力を見せてやります!
0
あなたにおすすめの小説
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる