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第三部
25. お手つきの巻⑧
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初めての時と同じ様に、殿下に身を任せた。言いたい事はまだいっぱいあったのに、もう頭の中が混乱している。でも、愛されてるうちに気がついたのです。
私はエリオット様が好きだ──
騙された感は払拭出来ないし悔しい気持ちもあるけど、やっぱり大好きな御方なのです。
「ポピー、愛してる」
「……はい。お好きにしてください」
私たちは一つになりました。でも……。
「いったーーいっ!死ぬぅーー!」
今日も死ぬほど痛かったです。
***
翌朝、エミリーが迎えに来てお部屋へ戻った。既に2回目の寵愛を受けた事が後宮中に広まっていた様で、途中グレース、ライラ組問わず、お手つきさんから敬意を表する会釈を受けた。
「皆さんの態度が何か違うわ」
「ポピー様はこれで序列3番になりましたので、当然の事でございます」
「3番?3番はへクセでは?」
「へクセ様は今日から4番に下がりました」
「何と!私の方が上位になったの?」
「勿論です。お手つきで2回目の御方はおられませんので」
「ふぅぅん、そうなんだ」
だからと言って日常的に何が変わるのか、今のところよく分からない。
結局、昨晩あのまま寝てしまいまして「宮廷行列したくない」とか「派閥から抜けたい」とか、殿下に我儘を言えずじまいだったのです。
程なく、私はグレースに呼ばれた。序列の話でしょうか?取り敢えず黒光りする法衣を纏います。
「何だかインチキ臭い占い師みたいね」
「ポピー様、少しは黒魔術の練習しましたか?」
「え?する訳ないじゃーん!」
と、歩いていたらグレースのお部屋の前でへクセと鉢合わせになり、反射的に会釈したけどプイッと無視された。そう言えば怒らせたままです。「ああ、気まずいわ」と思っていたら、何とエミリーがへクセに喰ってかかったのです。
「へクセ様?ポピー様からご挨拶されてるのにその態度は如何なものでしょう?」
「……ふん。まともにウォーキングも出来ない侍女上がりに挨拶など不要よ」
「そうかも知れませんが、ポピー様は皇太子様のご寵愛を受け、後宮婦人では貴女を抜いて序列3番になったのです。もうお耳に入ってるのでは?」
「……それはさっき聞いたわ」
「では、目上に対して、礼節を持って接してください。これは後宮秩序の問題です」
「ちょっとエミリー、もういいから」
流石にそこまで女官がお手つきさんに注意したらまずいと思ってエミリーを制した。けど、彼女は止まらない。
「良くありません。へクセ様、ポピー様に心から敬意を表してください。規則ですから!」
「……くっ、何でアンタなんかが寵愛受けるのよ」
へクセは顔面を近づけて私を睨む。でもその瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
「へクセ様、殿下が私の様な『おてんば婦人』を選ぶ理由は存じません。でも私も殿下が好きだと気がつきました。なので、これから何度でも御夜伽に参ります。痛いけど……」
へクセは天井を見上げ「はあー」と大きなため息をつく。そして後ろに下がって私に敬意を表したのです。
「これは大変失礼致しました。ポピー様、これまでの非礼をお詫び致します。お許しください」
「……いえ、私の方こそ。あ、そうだ今度、黒魔術を教えてね!」
「はい、かしこまりました」
お父様、皇太子に愛された回数で婦人の位が決まるなんて変なお話ですわ。昨日まで偉そうにしていた御方が今日は頭を下げなければならないなんて、さぞかし悔しいでしょうね。
そして私はもう後戻り出来ない気がします。宮廷婦人とやらの人生が幸せなのか、今のところ分かりませんが10数年此処で生きなければなりません。なので、何か生き甲斐を見つけようと思っています。あ、黒魔術じゃないですよ!
私はエリオット様が好きだ──
騙された感は払拭出来ないし悔しい気持ちもあるけど、やっぱり大好きな御方なのです。
「ポピー、愛してる」
「……はい。お好きにしてください」
私たちは一つになりました。でも……。
「いったーーいっ!死ぬぅーー!」
今日も死ぬほど痛かったです。
***
翌朝、エミリーが迎えに来てお部屋へ戻った。既に2回目の寵愛を受けた事が後宮中に広まっていた様で、途中グレース、ライラ組問わず、お手つきさんから敬意を表する会釈を受けた。
「皆さんの態度が何か違うわ」
「ポピー様はこれで序列3番になりましたので、当然の事でございます」
「3番?3番はへクセでは?」
「へクセ様は今日から4番に下がりました」
「何と!私の方が上位になったの?」
「勿論です。お手つきで2回目の御方はおられませんので」
「ふぅぅん、そうなんだ」
だからと言って日常的に何が変わるのか、今のところよく分からない。
結局、昨晩あのまま寝てしまいまして「宮廷行列したくない」とか「派閥から抜けたい」とか、殿下に我儘を言えずじまいだったのです。
程なく、私はグレースに呼ばれた。序列の話でしょうか?取り敢えず黒光りする法衣を纏います。
「何だかインチキ臭い占い師みたいね」
「ポピー様、少しは黒魔術の練習しましたか?」
「え?する訳ないじゃーん!」
と、歩いていたらグレースのお部屋の前でへクセと鉢合わせになり、反射的に会釈したけどプイッと無視された。そう言えば怒らせたままです。「ああ、気まずいわ」と思っていたら、何とエミリーがへクセに喰ってかかったのです。
「へクセ様?ポピー様からご挨拶されてるのにその態度は如何なものでしょう?」
「……ふん。まともにウォーキングも出来ない侍女上がりに挨拶など不要よ」
「そうかも知れませんが、ポピー様は皇太子様のご寵愛を受け、後宮婦人では貴女を抜いて序列3番になったのです。もうお耳に入ってるのでは?」
「……それはさっき聞いたわ」
「では、目上に対して、礼節を持って接してください。これは後宮秩序の問題です」
「ちょっとエミリー、もういいから」
流石にそこまで女官がお手つきさんに注意したらまずいと思ってエミリーを制した。けど、彼女は止まらない。
「良くありません。へクセ様、ポピー様に心から敬意を表してください。規則ですから!」
「……くっ、何でアンタなんかが寵愛受けるのよ」
へクセは顔面を近づけて私を睨む。でもその瞳には薄らと涙が浮かんでいた。
「へクセ様、殿下が私の様な『おてんば婦人』を選ぶ理由は存じません。でも私も殿下が好きだと気がつきました。なので、これから何度でも御夜伽に参ります。痛いけど……」
へクセは天井を見上げ「はあー」と大きなため息をつく。そして後ろに下がって私に敬意を表したのです。
「これは大変失礼致しました。ポピー様、これまでの非礼をお詫び致します。お許しください」
「……いえ、私の方こそ。あ、そうだ今度、黒魔術を教えてね!」
「はい、かしこまりました」
お父様、皇太子に愛された回数で婦人の位が決まるなんて変なお話ですわ。昨日まで偉そうにしていた御方が今日は頭を下げなければならないなんて、さぞかし悔しいでしょうね。
そして私はもう後戻り出来ない気がします。宮廷婦人とやらの人生が幸せなのか、今のところ分かりませんが10数年此処で生きなければなりません。なので、何か生き甲斐を見つけようと思っています。あ、黒魔術じゃないですよ!
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