悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本物に『ざまぁ』した結果→彼女は嵌められてた!本当の悪役は、まさかっ!?

鼻血の親分

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第1章 ざまぁがしたいっ!!

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 オーケストラの軽やかなリズムに合わせ、わたくしたちは楽しそうにステップを踏む。お互い微笑み合い卒なく踊るものの、王子様の本心は分かったものじゃない。

 笑顔の裏に何をお考えなのだろうと、憧れの御方ではあるけれど…今は怖い印象しかなかった。

「シェリー様、素敵ですわー!」

 取り巻きから歓声を浴びる。

 ふと、踊りながらジャック様の姿を捉えた。彼は優しげな眼差しを向けている。怒ってる素振りは見られなかった。

 まあ、いち早く王子様がお誘いになられたから、わたくしの選択は間違ってなかったよね? そうよ、大丈夫、大丈夫。

 …と自身を励ました。そして、気になるアイツが何してるのか目で追ってみる。すると一瞬しか分からなかったけど、会館の片隅で顔を上げてボトルごと姿が垣間見えた。

 まさか…いえ、今、ラッパ飲みしてた…あの馬鹿、絶対にそうだ。おいおい、飲み過ぎでしょう! 今のわたくしたちに気がつかないくらいお酒に夢中なの⁈ ったく、やっぱり馬鹿女だ…!

 などと笑顔の裏にそんな悪態を吐いていた。

 やがて曲が終わりかけると王子様と見つめ合い、微笑みを交わす。

 取り敢えず無難にこなしたわ。ジャック様と踊るより別の意味で緊張したけどね。でも…何故わたくしとダンスを?

 その答えを見出せないまま曲が終了し互いに礼を取ると、会館から割れんばかりの拍手喝采が巻き起こった。続いてオーケストラは二曲目に入ろうと演奏の構えを見せる…が、その時だった。王子様がわたくしの手を握り、ホール中央まで引っ張って行ったのだ。

 えっ⁈ えっ⁈ なに⁈ なに⁈

 オーケストラも突然の出来事に動きが止まった。そしておもむろに王子様は声を荒げたのです。

「ご来場の皆様にご報告があります!!」

 エ、エリオット様…??

 会館の全員が彼に注目した。

 王子様は先程とはうって変わって、冷酷な眼差しを向けながら、わたくしに言い放った。

「ここに居る!! 皆の前で声高らかに宣言しよう!!」

 わたくしは一瞬、何が起こったのか分からないくらい唖然とした。王子様の余りにも突然の宣言に会館は静寂に包まれた。

 い、今、婚約破棄って仰られた? は? は?

「聞こえなかったのか? もう一度言おう。シェリー、君とは婚約破棄だっ!!」

「…え? こ、婚約…破棄ですって…?」

 ま、まさか、王子様? 何を血迷られたのですか? あれほど言ったじゃないですか? ここでそんな宣言なされても勝ち目はございませんって…。それにわたくし、影武者ですけど貴方様に反撃の命令が下ってるんですよ。論破しなさいって。ああ、それなのに何て勇み足をなされたのですかー⁈

 すると、静まり返った会館から大きな笑い声が鳴り響いた。

「はーっはははははははははははっ!!」

「り、理事長? いえ、お父様?」

 これはマズい展開です。王子様、わたくしの援護射撃が現れました。これから二人して貴方様を論破しなければなりません!

 

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