島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

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64.狂人

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※ジェラール視点

「…………」

い、いかん。頭が真っ白になった。次の言葉が全く見つからない。えーと、何だっけ…。

全員が固唾を呑む中で、思っきり嘘をつくのは後ろめたさを感じる。自信のない言葉だからこそ、詰まるのだ。

「ジェラール!」

後方の議長席から王太子の苛立った声が聞こえてくる。もうシダバタする状況ではない。

「オホン…先ず、順を追ってお話致します。二年前に私はペチェア島へ赴任致しました…」

い、言えたぞ。考えていた滑り出しとはちょっと違うが、とにかく言えた。落ち着け!落ち着くんだ!いいか、ルーク様は心臓を患っていた。それは手遅れに近い状態だった。私は王都から薬を取り寄せ必死に治療を続け、その甲斐あってか奇跡的に回復へ向かった。だが、先日…。

よし、例えそれがデタラメであっても私の言葉で皆を納得させてみせよう。

「ルーク様は既に監獄の特別室におられましたが、拝謁した際…」

私が自信に満ち溢れ出した、その時──、

ガタンッ!!

「うわっ、な、何だ!? 何をするっ!?」

それは余りにも突然の出来ごとだった。警護してるはずのブリスが、何と王太子を羽交締めにし、喉元に刀を突き付けているのだ。その光景に会場の皆が驚愕した。
 
「…は?」

ブリス?私の大事なスピーチをなぜ邪魔するんだ?やっと調子が出てきたところなのに…というか、お前何やってんだ?

「続けろ!ジェラール殿下!真実を語るんだ!」

ざわつく会場にブリスの大声が響き渡る。

「…は?」

真実って?

「ち、血迷ったかあー、ブリス!?」

血相を変えた陛下の怒鳴り声が聞こえた。

「おい、この反逆者を捕らえろ!!」

その声に反応して警護の者が一斉に動き出す。だが、ブリスには王太子という人質が居る。そう簡単に捕まえることはできない。怯む警護の者を嘲笑うかの様に彼は登壇近くまでゆっくりと歩いてくる。私はようやく事態を呑み込んだ。

「動くな!俺に手を出してみろ!王太子の喉元が血塗れになるぞ!」
「や、やめろ。おい皆んな、近づくな!」

怯えてる王太子の隣で、私は再び頭が真っ白になった。もう思考回路は皆無だ。

ど、どうすればいいのだ?兄を助けないと…いけない…のか?

「ジェラール殿下、続けろ!」
「…は?」
「ルーク様の話だ。隠すことはない!」

いやいや、こんな状態で私は何を語ればいいのだ?

会場はどよめきと緊張に包まれている。王太子の喉元に刀を突き付けてる狂人ブリスと、その隣に居る私。護衛に囲まれながら苛立ってる陛下。身動きできない警護の者。いつの間にか会場入口には兵隊が駆けつけ、戦闘態勢を整えていた。

そして、貴族は私が何を語るのか待っているのだ。











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