ご主人様は若い女性が苦手なのです。

鼻血の親分

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第1章〜ご主人様のプロファイリング〜

8. ご主人様は約束を守らない

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 へぇー、こんなにあるんだー。

 薬草学、薬草図鑑など王都でも中々お見かけしない書物でございますが、ここ辺境の地の伯爵邸で保管してるとは少々驚きですね。流石です。

「この書物お借りしようかな」

 手に取りましたのは栽培に関する専門書です。実家とは気候も違いますし何かとお役に立つと思います。これはこれで収穫でございます。

 さてそうと決まれば、わたくしどもは早々この場から立ち去らなければなりません。とても気まずいのです。

 先程から鬼の形相で睨みまくる侍女長。引き攣った笑顔で退出を試みましたが、残念なことに呼び止められてしまいました。

「ディアナ様。お話が」
「は、はい。何でしょうか」
「着任早々でございますが……」

 着任。なるほど。やはり侍女長はわたくしを妻とはお認めにならず薬剤師扱いなのですね。

「ご主人様の生薬が残り僅かだとドミニク様から伺いましたので、至急生産して頂きたく」
「……え、残り僅か?」
「はい。大至急必要です」

 ちょっと待って。昨日執事に半月分お渡ししたはずですが。ま、まさか乱用? 乱用ですね。

「ご主人様は用量を守られていらっしゃらない。と、言うことでしょうか?」
「はぁ? 貴女はご主人様のせいだと?」
「これまでお渡しした量と計算が合いません」
「計算など存じません。ご主人様がご所望されてるのですよ。ご用意するのが貴女のお役目です」

 一日一粒。そのお約束を守らないのはご主人様の方ですが。

「かしこまりました。直ぐに取りかかります。ですが一度、ご主人様と面談させて頂けませんか?」

 この要望は余りにも意外だったのでしょう。侍女長は目を大きく見開いて声を荒げてしまいます。

「なりませんっ!」
「では用量をお守り頂く様、お伝え願います」

 そう言い残し颯爽と書庫を後に致しました。

 あぁ怖かった。ついムキになりましたが雇われ薬剤師の分際で厚顔無恥こうがんむちと思われたでしょうね。どうしましょう……

 そう悔やんでいたらアンナとウラリーがわたくしの手を握りしめてくれました。

「奥様、カッコよかったです。あの侍女長に一歩も引かずで。ねー」
「うん。カッコいい、です。エヘヘ」

 うふふ。可愛いわ。励ましてくれてるのね。

「ありがとう。でも呑気にしてられないわ。早速取りかからなくっちゃ。カトリーヌ、薬草園に案内してくれる?」
「はい。私どももお手伝い致します」

 伯爵邸の薬草園……

 嫁ぐ前のこと。子爵邸にご主人様の部下が訪れ、わたくしが指示する薬草の苗を持っていかれました。それを伯爵邸で定植し生薬を生産できる様、専用の薬草園を造設されたのです。

 さて、幾ら作っても乱用されては生産が追いつきません。問題は乱用をどう防ぐのか?

 本来は面談して原因追求し対策を検討たいところですが、叶わないのであればご主人様のプロファイリングを行うしかない様です。

 まぁこれまでの情報で大体分かってますが。



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