8 / 26
第1章〜ご主人様のプロファイリング〜
8. ご主人様は約束を守らない
しおりを挟む
へぇー、こんなにあるんだー。
薬草学、薬草図鑑など王都でも中々お見かけしない書物でございますが、ここ辺境の地の伯爵邸で保管してるとは少々驚きですね。流石です。
「この書物お借りしようかな」
手に取りましたのは栽培に関する専門書です。実家とは気候も違いますし何かとお役に立つと思います。これはこれで収穫でございます。
さてそうと決まれば、わたくしどもは早々この場から立ち去らなければなりません。とても気まずいのです。
先程から鬼の形相で睨みまくる侍女長。引き攣った笑顔で退出を試みましたが、残念なことに呼び止められてしまいました。
「ディアナ様。お話が」
「は、はい。何でしょうか」
「着任早々でございますが……」
着任。なるほど。やはり侍女長はわたくしを妻とはお認めにならず薬剤師扱いなのですね。
「ご主人様の生薬が残り僅かだとドミニク様から伺いましたので、至急生産して頂きたく」
「……え、残り僅か?」
「はい。大至急必要です」
ちょっと待って。昨日執事に半月分お渡ししたはずですが。ま、まさか乱用? 乱用ですね。
「ご主人様は用量を守られていらっしゃらない。と、言うことでしょうか?」
「はぁ? 貴女はご主人様のせいだと?」
「これまでお渡しした量と計算が合いません」
「計算など存じません。ご主人様がご所望されてるのですよ。ご用意するのが貴女のお役目です」
一日一粒。そのお約束を守らないのはご主人様の方ですが。
「かしこまりました。直ぐに取りかかります。ですが一度、ご主人様と面談させて頂けませんか?」
この要望は余りにも意外だったのでしょう。侍女長は目を大きく見開いて声を荒げてしまいます。
「なりませんっ!」
「では用量をお守り頂く様、お伝え願います」
そう言い残し颯爽と書庫を後に致しました。
あぁ怖かった。ついムキになりましたが雇われ薬剤師の分際で厚顔無恥と思われたでしょうね。どうしましょう……
そう悔やんでいたらアンナとウラリーがわたくしの手を握りしめてくれました。
「奥様、カッコよかったです。あの侍女長に一歩も引かずで。ねー」
「うん。カッコいい、です。エヘヘ」
うふふ。可愛いわ。励ましてくれてるのね。
「ありがとう。でも呑気にしてられないわ。早速取りかからなくっちゃ。カトリーヌ、薬草園に案内してくれる?」
「はい。私どももお手伝い致します」
伯爵邸の薬草園……
嫁ぐ前のこと。子爵邸にご主人様の部下が訪れ、わたくしが指示する薬草の苗を持っていかれました。それを伯爵邸で定植し生薬を生産できる様、専用の薬草園を造設されたのです。
さて、幾ら作っても乱用されては生産が追いつきません。問題は乱用をどう防ぐのか?
本来は面談して原因追求し対策を検討たいところですが、叶わないのであればご主人様のプロファイリングを行うしかない様です。
まぁこれまでの情報で大体分かってますが。
薬草学、薬草図鑑など王都でも中々お見かけしない書物でございますが、ここ辺境の地の伯爵邸で保管してるとは少々驚きですね。流石です。
「この書物お借りしようかな」
手に取りましたのは栽培に関する専門書です。実家とは気候も違いますし何かとお役に立つと思います。これはこれで収穫でございます。
さてそうと決まれば、わたくしどもは早々この場から立ち去らなければなりません。とても気まずいのです。
先程から鬼の形相で睨みまくる侍女長。引き攣った笑顔で退出を試みましたが、残念なことに呼び止められてしまいました。
「ディアナ様。お話が」
「は、はい。何でしょうか」
「着任早々でございますが……」
着任。なるほど。やはり侍女長はわたくしを妻とはお認めにならず薬剤師扱いなのですね。
「ご主人様の生薬が残り僅かだとドミニク様から伺いましたので、至急生産して頂きたく」
「……え、残り僅か?」
「はい。大至急必要です」
ちょっと待って。昨日執事に半月分お渡ししたはずですが。ま、まさか乱用? 乱用ですね。
「ご主人様は用量を守られていらっしゃらない。と、言うことでしょうか?」
「はぁ? 貴女はご主人様のせいだと?」
「これまでお渡しした量と計算が合いません」
「計算など存じません。ご主人様がご所望されてるのですよ。ご用意するのが貴女のお役目です」
一日一粒。そのお約束を守らないのはご主人様の方ですが。
「かしこまりました。直ぐに取りかかります。ですが一度、ご主人様と面談させて頂けませんか?」
この要望は余りにも意外だったのでしょう。侍女長は目を大きく見開いて声を荒げてしまいます。
「なりませんっ!」
「では用量をお守り頂く様、お伝え願います」
そう言い残し颯爽と書庫を後に致しました。
あぁ怖かった。ついムキになりましたが雇われ薬剤師の分際で厚顔無恥と思われたでしょうね。どうしましょう……
そう悔やんでいたらアンナとウラリーがわたくしの手を握りしめてくれました。
「奥様、カッコよかったです。あの侍女長に一歩も引かずで。ねー」
「うん。カッコいい、です。エヘヘ」
うふふ。可愛いわ。励ましてくれてるのね。
「ありがとう。でも呑気にしてられないわ。早速取りかからなくっちゃ。カトリーヌ、薬草園に案内してくれる?」
「はい。私どももお手伝い致します」
伯爵邸の薬草園……
嫁ぐ前のこと。子爵邸にご主人様の部下が訪れ、わたくしが指示する薬草の苗を持っていかれました。それを伯爵邸で定植し生薬を生産できる様、専用の薬草園を造設されたのです。
さて、幾ら作っても乱用されては生産が追いつきません。問題は乱用をどう防ぐのか?
本来は面談して原因追求し対策を検討たいところですが、叶わないのであればご主人様のプロファイリングを行うしかない様です。
まぁこれまでの情報で大体分かってますが。
1
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー
コーヒー微糖派
ファンタジー
勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"
その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。
そんなところに現れた一人の中年男性。
記憶もなく、魔力もゼロ。
自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。
記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。
その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。
◆◆◆
元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。
小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。
※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。
表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる