婚約破棄された悪役令嬢は、階段から突き落とされ記憶を失う。気がつけば召使いに〜。

鼻血の親分

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第8話 私が聖女って⁈奴隷ですけどー!!

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 この御方たちは雲の上の存在なんだわ。 

 ──わたくしは心からそう思った。



***



「ララコスティさま、何やら高貴な御方がお訪ねになられてますが如何いたしましょう?」

 ある晩のことでした。

「はて、奴隷部屋に訪れるなんてどなたでしょう?」
「見知らぬ女性です」
「……わかりました。お会いいたしましょう」

 煌びやかな衣装の女性が杖をつきながら、付き人と共に部屋へ入ってくる。年配ではあるが気品を感じる。勿論、その女性に見覚えはない。

 きっと何処かの貴族に違いないわ。

「ララコ……いえ、ララコスティ。やっと会えました」
「わたくしに?」
「ええ……私はモエミアン。タカフミィーニの母でございます」
「えっ⁈ タ、タカフミィーニさまの⁈」
「はい。それと……前世では貴女と一緒に過ごさせて頂きました」

 な、何を仰ってるのかしら、この御婦人は?

「あの、わたくしは……」
「貴女は記憶を失ってますね。私のことはわからなくて当然ですよ」
「申し訳ございません。覚えてなくて……」

 御婦人はわたくしの手を握り、急に肩を震わせながら涙を浮かべる。

「ああっ、良かった……また会えて」

 わたくしはどうして良いのかわからない。

 タカフミィーニさまの御母上さまが一体何の御用でしょう。それに前世ってなに?

「わからなくても聞いて頂戴。貴女に私の跡を継いで貰いたいの。ララコスティにはその力があります」
「お跡を継ぐ……とは?」
「聖女としてこの国の繁栄を願ってほしいの」

 聖女って──⁈ わたくし、ただの奴隷ですけどお⁈

「聖女は前世の記憶が残ってる人。貴女の記憶が戻れば聖女になれます。ただ、聖女は国に1人と決まってるの。私の命は残り僅かだから次は貴女に託したい。いいですか? 聖女同士が話す機会は引き継ぎの1度だけ許されている。ずっと貴女に会いたいと我慢してきた私の願いをどうか聞いて、ララコ」
「は、はぁ……」

 そう言われても困りますわ。それにわたくしはララコではありません。ララコスティですよ。

「貴女とは前世でタカフミィーニと共に過ごした間柄。とっても楽しかったわ。でも最後はあんな別れ方をして悲しかった……。生まれ変わりを神様にお願いして叶ったけど、まさか本当に彼の母親になるなんてびっくりしましたわ」

 ……もはや返答のしようがない。

「タカフミィーニのこと、貴女にお任せします。貴女たちは結ばれる運命だから」
「ありがたいお言葉ですがわたくしはただの召使いです。身分が違うかと……」
「近いうちにわかる日が来るわ。最後に貴女の記憶が戻るよう祈ります」
「は、はい。ありがとうございます」

 聖女とは、超越した魔力で国に繁栄をもたらす者──。聖女が居ない国は滅びるとされている。

 わたくしにそのような力があるなんて、信じられませんわ。

 でもモエミアンさまの『祈り』は疑心暗鬼のわたくしの心を少しずつ溶かしていった……。

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