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Ⅲ.貴方様と私の計略 ~ 婚約者 ~
144.魔王配下による閑話①
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某は、魔王セレスティン様の配下。名はありません。
セレスティン様は、某に名をくださらなかった。
恐らく、名に執着されないのだろう。そう思うことにした。
某に与えられた任務は、人の国を籠絡すること。
ただ、魔王として欲しているというよりは、道楽なのかもしれない。
何せ、
「僕の作った麻薬を使いたいんだよね。効果とか気になるだろ?」
と、仰っていたくらいなのだから。
ただ、魔王として悪質な秘薬を製造する行為は、禁じられていると記憶しているのだが、大丈夫なのだろうか。
まあ、某としては知ったことではないのだが、某まで巻き込まれるのは避けたいところである。
某は任務のために、人の国へとやって来た。人に紛れるために、某は『メイリーナ・マクスウェル』と名のることにした。
マクスウェルは、某のルーツとも言えるのだから、丁度良かろう。
人の国とは面白いものだ。某を食客として招くなど愚かであろうに。
身分も身元も不明であるのに、麻薬と魔力の知識に目がくらんだのであろな。
気付けば某は魔女と呼ばれ、不老を知るものと言われるようになった。
セレスティン様の作られる麻薬が、膨大であったために、それらを使う機会も多かった。それも、魔女と呼ばれる所以だったのだろう。
幾つかの麻薬は、秘薬となったが、悪質なものも多く、面倒事も増えた。
麻薬に酔った者が、ある国の有力貴族を殺害したと聞いた。某の元にまで、たどり着くことは途方もなく難しいはずだが、たどり着かれると面倒なことこの上ない。
故に、某は偽造することにした。人の世には、香る液体を体に吹く習慣があった。某は、香水と呼ばれるそれを利用することにした。
先ずは工房。香水を造る施設とそれを卸す母体となる組織だと聞いた。
工房自体は比較的簡単にできた。難しかったのは、麻薬を香水に偽造することだった。某の手にかかっても、2年の年月が必要だった。
成果は上場。とある国の王族を虜にしたようだった。
王族を傀儡にする事に成功した。麻薬の効果が遺憾なく発揮できているようで、なによりだ。
ただ、丁度良い隠れ蓑であったが、1年ほどで利用できなくなった。
煩い羽虫が嗅ぎ回って、鬱陶しかったからだ。
決定的な何かを掴まれた感じではなかったが、潮時だろうと判断し、拠点を換えることにした。
山を越え、谷を越え、海を渡り、在る森までやって来た。
丁度そこは、魔界との隣接点にもなっているようで、丁度良かった。
名を『リリーナ・マクスウェル』と改め、森の魔女となった。
某を尋ねてくるのは、人には言えぬ欲望を持つ者ばかり。
惚れ薬が欲しいと来た者には、魅了の麻薬を渡した。
政敵を陥れたいと来た者には、傀儡の麻薬を渡した。
性欲剤が欲しいと来た者には、興奮の麻薬を渡した。
魅了の麻薬は、他者を虜にする麻薬。虜にされた者は、半永久的に囚われる。麻薬が秘薬となるまで囚われ、虜となる。
傀儡の麻薬は、相手を傀儡にする麻薬。傀儡にされた者は、繰られ貶められる。麻薬の効果がぬけるまで繰られ、人形となる。
興奮の麻薬は、利用者の性的興奮を高める麻薬。摂取したものは、永久的に麻薬でなければ性的興奮を得られない。麻薬が秘薬となるまで不能となり、また麻薬を求める。
今日もまた、某の元に麻薬を求める者が現れる。
それが、己の破滅を招くものだと気付かぬ愚か者。
そろそろ、セレスティン様の麻薬が切れる。
遠い噂でセレスティン様は、魔吸塔へと幽閉されたと聞いた。潮時なのかもしれない。
さて、これからどうしたものか。
新たな魔王が決まるまで、身を潜める必要がある。
セレスティン様が幽閉され、某のしてきたことを考えれば、楽観視は危険だろう。
森を出て、平原を越え、砂漠を越える。地下へと続く通路を歩き、迷路へと迷い込む。
某の記憶は、ここで止まる。迷路を越えることが出来たのかすらわからない。
記憶が止まる前に、最後に見たのはなんだったか。
黒と赤。最後の記憶。何故だろうか。非常に眠くなってきた・・・
まぁ、焦る旅でもない。そして、某は眠りについた。
夢現にかすめたのは何だっただろうか。
眠くて思考が・・・纏まら・・・ない・・・
全て・・・は次・・・に目覚め・・・た・・・とき・・・に考え・・・るとし・・・よ・・・う・・・・・・
セレスティン様は、某に名をくださらなかった。
恐らく、名に執着されないのだろう。そう思うことにした。
某に与えられた任務は、人の国を籠絡すること。
ただ、魔王として欲しているというよりは、道楽なのかもしれない。
何せ、
「僕の作った麻薬を使いたいんだよね。効果とか気になるだろ?」
と、仰っていたくらいなのだから。
ただ、魔王として悪質な秘薬を製造する行為は、禁じられていると記憶しているのだが、大丈夫なのだろうか。
まあ、某としては知ったことではないのだが、某まで巻き込まれるのは避けたいところである。
某は任務のために、人の国へとやって来た。人に紛れるために、某は『メイリーナ・マクスウェル』と名のることにした。
マクスウェルは、某のルーツとも言えるのだから、丁度良かろう。
人の国とは面白いものだ。某を食客として招くなど愚かであろうに。
身分も身元も不明であるのに、麻薬と魔力の知識に目がくらんだのであろな。
気付けば某は魔女と呼ばれ、不老を知るものと言われるようになった。
セレスティン様の作られる麻薬が、膨大であったために、それらを使う機会も多かった。それも、魔女と呼ばれる所以だったのだろう。
幾つかの麻薬は、秘薬となったが、悪質なものも多く、面倒事も増えた。
麻薬に酔った者が、ある国の有力貴族を殺害したと聞いた。某の元にまで、たどり着くことは途方もなく難しいはずだが、たどり着かれると面倒なことこの上ない。
故に、某は偽造することにした。人の世には、香る液体を体に吹く習慣があった。某は、香水と呼ばれるそれを利用することにした。
先ずは工房。香水を造る施設とそれを卸す母体となる組織だと聞いた。
工房自体は比較的簡単にできた。難しかったのは、麻薬を香水に偽造することだった。某の手にかかっても、2年の年月が必要だった。
成果は上場。とある国の王族を虜にしたようだった。
王族を傀儡にする事に成功した。麻薬の効果が遺憾なく発揮できているようで、なによりだ。
ただ、丁度良い隠れ蓑であったが、1年ほどで利用できなくなった。
煩い羽虫が嗅ぎ回って、鬱陶しかったからだ。
決定的な何かを掴まれた感じではなかったが、潮時だろうと判断し、拠点を換えることにした。
山を越え、谷を越え、海を渡り、在る森までやって来た。
丁度そこは、魔界との隣接点にもなっているようで、丁度良かった。
名を『リリーナ・マクスウェル』と改め、森の魔女となった。
某を尋ねてくるのは、人には言えぬ欲望を持つ者ばかり。
惚れ薬が欲しいと来た者には、魅了の麻薬を渡した。
政敵を陥れたいと来た者には、傀儡の麻薬を渡した。
性欲剤が欲しいと来た者には、興奮の麻薬を渡した。
魅了の麻薬は、他者を虜にする麻薬。虜にされた者は、半永久的に囚われる。麻薬が秘薬となるまで囚われ、虜となる。
傀儡の麻薬は、相手を傀儡にする麻薬。傀儡にされた者は、繰られ貶められる。麻薬の効果がぬけるまで繰られ、人形となる。
興奮の麻薬は、利用者の性的興奮を高める麻薬。摂取したものは、永久的に麻薬でなければ性的興奮を得られない。麻薬が秘薬となるまで不能となり、また麻薬を求める。
今日もまた、某の元に麻薬を求める者が現れる。
それが、己の破滅を招くものだと気付かぬ愚か者。
そろそろ、セレスティン様の麻薬が切れる。
遠い噂でセレスティン様は、魔吸塔へと幽閉されたと聞いた。潮時なのかもしれない。
さて、これからどうしたものか。
新たな魔王が決まるまで、身を潜める必要がある。
セレスティン様が幽閉され、某のしてきたことを考えれば、楽観視は危険だろう。
森を出て、平原を越え、砂漠を越える。地下へと続く通路を歩き、迷路へと迷い込む。
某の記憶は、ここで止まる。迷路を越えることが出来たのかすらわからない。
記憶が止まる前に、最後に見たのはなんだったか。
黒と赤。最後の記憶。何故だろうか。非常に眠くなってきた・・・
まぁ、焦る旅でもない。そして、某は眠りについた。
夢現にかすめたのは何だっただろうか。
眠くて思考が・・・纏まら・・・ない・・・
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