4 / 4
まったりとお茶でも
しおりを挟む
ウィリアムの来訪は気紛れだろうか。なんて思いながら翌朝を迎えると、なんと朝から扉がノックされた。
こちらの気を案ずるような優しいノック音は、昨日も聞いたウィリアムのそれだろう。扉を開ければ案の定美しく整った顔が待っていた。
「おはようございます、レイチェルさん」
「おはようございます。こんな朝からどうされたのですか」
「用はないですよぉ。強いて言えばお話したいなーと思いまして」
この人は私をからかって遊んでいるんだろうか?
殿下に婚約破棄をされてからというもの、私は容姿の手入れをしなくなってしまった。ゆえに肌は荒れ気味で、髪の毛も傷んでいるし、おまけに表情は死んでる。
そんな女と喋りたい理由なんてないだろうに。
「……とりあえずあがってください。今お茶を淹れますので」
「あ、それなら僕がやりますよぉ。お茶っ葉も持ってきたんです」
「そうなんですか?」
「はい。美味しそうと思ってつい買っちゃったんですよねぇ」
「ウィリアムさんはお茶を嗜まれるのですか?」
「いえ全く。正直淹れ方とか分からないです」
あっけらかんとそう答えるウィリアムに思わず口をあんぐりと開けてしまう。なら何のために用意してきたのだーーって、
「それは、確か……」
花嫁修業の一環で茶道も齧ったが、その中でウィリアムが用意したお茶っ葉についても学んだ。確かこれは疲労回復とか寝不足解消の効果を持つ種類だったはず。
となれば彼は私の身を案じているのか。
恩に着せたいならもっとこの事実をひけらかすだろう。あえて沈黙でいるのは、それが優しさであるからだろうか。
私は嬉しくなってつい口を開いてしまう。
「一緒に淹れてみますか?」
「え、やります! 一緒にやりましょ~」
ニコニコと私の隣に移動してくるウィリアム。そこそこ距離が近いが自然と嫌な気はしない。不快感を覚えるラインは明確に避けて、一歩引いた位置で止まっているのだ。
たまたまかな?計算してやってるのかな?
まあ今はどっちでもいいか。正直ウィリアムが何を考えていようと、そんな事はどうでもいいのだから。
そうしてウィリアムと共同作業をしてお茶を淹れると、私はいつもとは違う二人での朝食を楽しんだのだった。
◯
それからもウィリアムはなんどもこの部屋を訪れてきた。離れの軟禁生活のはずなのに、気付けば彼のいる日々が日常となってしまっている。
そんなある日だった。
いつものようにやって来たウィリアムは、楽しげな笑みを浮かべたままこういったのだ。
「少し外に出てみませんか?」
こちらの気を案ずるような優しいノック音は、昨日も聞いたウィリアムのそれだろう。扉を開ければ案の定美しく整った顔が待っていた。
「おはようございます、レイチェルさん」
「おはようございます。こんな朝からどうされたのですか」
「用はないですよぉ。強いて言えばお話したいなーと思いまして」
この人は私をからかって遊んでいるんだろうか?
殿下に婚約破棄をされてからというもの、私は容姿の手入れをしなくなってしまった。ゆえに肌は荒れ気味で、髪の毛も傷んでいるし、おまけに表情は死んでる。
そんな女と喋りたい理由なんてないだろうに。
「……とりあえずあがってください。今お茶を淹れますので」
「あ、それなら僕がやりますよぉ。お茶っ葉も持ってきたんです」
「そうなんですか?」
「はい。美味しそうと思ってつい買っちゃったんですよねぇ」
「ウィリアムさんはお茶を嗜まれるのですか?」
「いえ全く。正直淹れ方とか分からないです」
あっけらかんとそう答えるウィリアムに思わず口をあんぐりと開けてしまう。なら何のために用意してきたのだーーって、
「それは、確か……」
花嫁修業の一環で茶道も齧ったが、その中でウィリアムが用意したお茶っ葉についても学んだ。確かこれは疲労回復とか寝不足解消の効果を持つ種類だったはず。
となれば彼は私の身を案じているのか。
恩に着せたいならもっとこの事実をひけらかすだろう。あえて沈黙でいるのは、それが優しさであるからだろうか。
私は嬉しくなってつい口を開いてしまう。
「一緒に淹れてみますか?」
「え、やります! 一緒にやりましょ~」
ニコニコと私の隣に移動してくるウィリアム。そこそこ距離が近いが自然と嫌な気はしない。不快感を覚えるラインは明確に避けて、一歩引いた位置で止まっているのだ。
たまたまかな?計算してやってるのかな?
まあ今はどっちでもいいか。正直ウィリアムが何を考えていようと、そんな事はどうでもいいのだから。
そうしてウィリアムと共同作業をしてお茶を淹れると、私はいつもとは違う二人での朝食を楽しんだのだった。
◯
それからもウィリアムはなんどもこの部屋を訪れてきた。離れの軟禁生活のはずなのに、気付けば彼のいる日々が日常となってしまっている。
そんなある日だった。
いつものようにやって来たウィリアムは、楽しげな笑みを浮かべたままこういったのだ。
「少し外に出てみませんか?」
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。
甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」
「はぁぁぁぁ!!??」
親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。
そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね……
って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!!
お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!!
え?結納金貰っちゃった?
それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。
※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる