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SCENE.1【抗憑依体質者、御手洗凛】
Capture.12『娘の怒り』
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今にも飛び込んで来そうな老人に警戒しつつも、方法がない私に刹那な時が流れる。
――全身に霊力を循環させろ。そうすれば、痛みを軽減できる。
小太郎さんの言葉に従い、霊力を意識する。そして、全身にそれを巡らせるイメージをした。しばらくすると、全身が膜のような何かに覆われたように、温かく感じる。
――できたな。次は、足の裏に意識を集中して、飛び出せ。
「おのれ……小娘……次は殺す」
老人が姿を消す。
――目に集中しろ!
目!
私は慌てて目に意識を集中した。すると、消えたと思っていた老人が凄い速さで私に向かってきているのが視認する事ができた。同時に足の裏を意識する。そして、地面を蹴った。横に飛んで、その突進を避けた。
――奴を倒せ。
「はい!」
私は鷲爪を構え、足の裏に霊力を流し、前へ思い切り飛び出した。そして、目にも止まらぬ速さで通り抜けた。老人の横を――
「……がはっ!」
声を漏らす老人。黒い血をまき散らすその体。どす黒い血飛沫の中、それは崩れ落ちた。しかし――
――まだ消せないか……しぶとい野郎だ。
「くそ……くそっ! くそっ! くそっ! くそがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
膝をついて叫ぶ老人。そして、顔を上げ、私を捉えたその瞳は血走り、今にも外へ飛び出しそうなほど、膨れ上がっていた。
「あと一歩だった……あと一歩……」
そう呟いた老人は、再び立ち上がると同時に私へ襲い掛かって来る。しかし、先ほどの斬撃が効いているようで、動きは先ほどまでとは比べ物にならないほど、遅かった。
「せっかく殺してやったのに! 幸三を! もう少しだったのに! 沙織も!」
「え……お父さん? お父さんは自殺……あ」
私は思い出した。奈々さんは、自殺だった。お父さんの自殺に、死神が関わっていたとしてもおかしくない。
「御手洗家……貴様らを殺せば、俺は入閣できたのにぃぃぃぃぃっ!」
お父さんは殺された。その真実が私の中を駆け抜けた。だから、もう一度飛んだ。そして、鷲爪が老人を切り裂いた。
「ク、ソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
老人の体は左右真っ二つとなり、真っ黒な血飛沫を上げ、黒い靄になって消え行った。
*
生まれながらに不細工だとののしられ、いじめられた。勉強もしているのに、成績は悪く、気を付けているのに太り、視力も下がって眼鏡となり、糖尿病にもなった。中小零細企業に就職するも、出世とは縁遠く、恋愛も婚期もなく、晩年平社員として定年を迎えた。
やっと訪れた苦しみのない生活。ささやかな退職金と微々たる年金で暮らす日々。しかし、そこには、孤独と退屈という脅威が待っていた。
そんな自分を唯一理解してくれていた、同級生が死んだ。もう、誰も自分を必要としてくれていない。何で俺は必要とされなかったんだろう。
不細工だからか。成績が悪いからか。出世できなかったからか。全て違う。そういう環境を作った、社会が悪い。それを受け入れている人が悪い。
憎い。
憎い憎い憎い憎い!
俺は死んだ。しかし、生きていた。死なない体になった。死んでいるからだ。復讐の始まりだ。俺は殺して回った。それは結果、呪力を高め、あの方の目に留まった。そして、あの方のために、俺は御手洗幸三を殺した。そして、次は沙織を殺そうとしていた。しかし、クソ娘に、まさかの返り討ちにされてしまった。
「もう、疲れただろう? やめようよ、たかちゃん」
その声に耳を疑った。振り返ると、そこには死んだはずの同級生、将司の姿があった。
「まさ、くん……」
「楽になろうよ、たかちゃん」
「……ああ、そうだね、まさくんとまた、囲碁がしたい。できるかな?」
「できるさ」
「そうか、それは楽しみだ……」
*
老人の消えた屋上。先ほどまで真っ黒に染まっていた床は元に戻っていた。
――よくやったな、凛。
小太郎さんの声が、気持ちよく脳内に響くのだった。
――全身に霊力を循環させろ。そうすれば、痛みを軽減できる。
小太郎さんの言葉に従い、霊力を意識する。そして、全身にそれを巡らせるイメージをした。しばらくすると、全身が膜のような何かに覆われたように、温かく感じる。
――できたな。次は、足の裏に意識を集中して、飛び出せ。
「おのれ……小娘……次は殺す」
老人が姿を消す。
――目に集中しろ!
目!
私は慌てて目に意識を集中した。すると、消えたと思っていた老人が凄い速さで私に向かってきているのが視認する事ができた。同時に足の裏を意識する。そして、地面を蹴った。横に飛んで、その突進を避けた。
――奴を倒せ。
「はい!」
私は鷲爪を構え、足の裏に霊力を流し、前へ思い切り飛び出した。そして、目にも止まらぬ速さで通り抜けた。老人の横を――
「……がはっ!」
声を漏らす老人。黒い血をまき散らすその体。どす黒い血飛沫の中、それは崩れ落ちた。しかし――
――まだ消せないか……しぶとい野郎だ。
「くそ……くそっ! くそっ! くそっ! くそがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
膝をついて叫ぶ老人。そして、顔を上げ、私を捉えたその瞳は血走り、今にも外へ飛び出しそうなほど、膨れ上がっていた。
「あと一歩だった……あと一歩……」
そう呟いた老人は、再び立ち上がると同時に私へ襲い掛かって来る。しかし、先ほどの斬撃が効いているようで、動きは先ほどまでとは比べ物にならないほど、遅かった。
「せっかく殺してやったのに! 幸三を! もう少しだったのに! 沙織も!」
「え……お父さん? お父さんは自殺……あ」
私は思い出した。奈々さんは、自殺だった。お父さんの自殺に、死神が関わっていたとしてもおかしくない。
「御手洗家……貴様らを殺せば、俺は入閣できたのにぃぃぃぃぃっ!」
お父さんは殺された。その真実が私の中を駆け抜けた。だから、もう一度飛んだ。そして、鷲爪が老人を切り裂いた。
「ク、ソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
老人の体は左右真っ二つとなり、真っ黒な血飛沫を上げ、黒い靄になって消え行った。
*
生まれながらに不細工だとののしられ、いじめられた。勉強もしているのに、成績は悪く、気を付けているのに太り、視力も下がって眼鏡となり、糖尿病にもなった。中小零細企業に就職するも、出世とは縁遠く、恋愛も婚期もなく、晩年平社員として定年を迎えた。
やっと訪れた苦しみのない生活。ささやかな退職金と微々たる年金で暮らす日々。しかし、そこには、孤独と退屈という脅威が待っていた。
そんな自分を唯一理解してくれていた、同級生が死んだ。もう、誰も自分を必要としてくれていない。何で俺は必要とされなかったんだろう。
不細工だからか。成績が悪いからか。出世できなかったからか。全て違う。そういう環境を作った、社会が悪い。それを受け入れている人が悪い。
憎い。
憎い憎い憎い憎い!
俺は死んだ。しかし、生きていた。死なない体になった。死んでいるからだ。復讐の始まりだ。俺は殺して回った。それは結果、呪力を高め、あの方の目に留まった。そして、あの方のために、俺は御手洗幸三を殺した。そして、次は沙織を殺そうとしていた。しかし、クソ娘に、まさかの返り討ちにされてしまった。
「もう、疲れただろう? やめようよ、たかちゃん」
その声に耳を疑った。振り返ると、そこには死んだはずの同級生、将司の姿があった。
「まさ、くん……」
「楽になろうよ、たかちゃん」
「……ああ、そうだね、まさくんとまた、囲碁がしたい。できるかな?」
「できるさ」
「そうか、それは楽しみだ……」
*
老人の消えた屋上。先ほどまで真っ黒に染まっていた床は元に戻っていた。
――よくやったな、凛。
小太郎さんの声が、気持ちよく脳内に響くのだった。
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