親友のあそこに触手が生えた話

三崎

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 それから30分後。
 諸々の準備を済ませた俺と大地は、向かい合ってベッドに座った。一緒に酒を飲むうちに、酔っ払って大地のベッドにダイブした回数は数知れないが、明確な目的を持ってベッドにのるのは初めてのこと。緊張感が半端ない。
 
「……俺、脱いだ方がいいかな?」
「脱がしてほしいなら着ててもいいけど」
「や、そういうのはない」

 大地が悪戯げに言ったので、俺は慌ててTシャツを脱いだ。
 
 もしこれが恋人同士のセックスなら、「優しく脱がして♡」と頼んでみるのもありだろう。でも俺たちは両思いでもなんでもないんだし、この後のセックスはどちらといえば治療行為だ。
 
 大地はちんこを元に戻すためにセックスがしたいのであって、頼み事をしやすい俺がたまたま相手に選ばれただけ。そこに愛や恋という特別な感情は存在しない。

 だから俺も、大地とのセックスに舞い上がってはいけない。余計なことは言わず粛々とセックスを済ませ、大地のちんこが元に戻ったら「俺に感謝しろよ」と軽く肩をたたく。
 それでも、治療行為とはいえ大地と一度でもセックスができたのなら、俺にとってこれ以上の思い出はないだろう。

 脱いだTシャツはたたんでベッドの隅に置いた。続いてズボンのベルトを外していると、大地の視線が注がれていることに気がついた。

「……見んなよ、エッチ」
「エッチなことするんだから別に見たっていーじゃん」

 ぐぅの音も出なかった。

 俺が着ていた衣服を全て脱ぐと、すぐに大地が触れてきた。まるで子猫をあやすようにして、首筋をこしょこしょとくすぐられる。
 こそばゆくて逃げようとすると、逃がすまいと腕を引かれて、大地の腕の中にすっぽりと収まってしまった。
 
 薄い皮膚の向こうでは大地の心臓が生命を刻んでいる。どくどくと脈打つ鼓動に耳を澄ませていると、「ああ大地もそれなりに興奮してんのかな」なんて冷静なことを考えてしまう。

 束の間の抱擁が終わると、大地はまた俺の身体に触れた。今度はもっと無遠慮に、大胆に。
 初めのうちはただくすぐったいだけで、俺は笑いながら大地の手を逃れていたが、時間が経つにつれて笑声は甘い吐息に変わった。耳に、首に、鎖骨に。大地の手のひらが触れるたびに腹の内側に甘い疼きが溜まっていく。

「ん、あっ……」
「湊、気持ちいい?」
 
 首筋の敏感なところをするすると撫でられ、思わず漏れた声を追うように今度は耳朶を噛まれた。滑らかな舌に耳輪をなぞられれば、うなじの産毛がさわさわと逆立つ。

「や……耳、そこやだ……」
「やだ? びくびく震えて気持ちよさそうだけどなー」
「ちが……んっ」

 味を占めたように今度は胸先をつままれた。主張の少ない小さな突起を、指の腹でくにくにと押し潰されれば、湧き上がる快感にはからずして背筋がしなる。
 求めるような声が出てしまうことが恥ずかしくて、手のひらで口を覆えば、大地にやんわりとその手を外された。

「声、出せばいーじゃん」
「きもいからヤダ……」
「きもくないって。可愛いって」
「嘘つけ」
「嘘じゃないんだなーこれが」

 楽しそうに笑うと、大地は俺の胸元に顔を埋めた。片方の乳首を指先でふにふにと弄びながら、もう一方の乳首をためらいなく口に含む。

「ひぅっ……」

 ぬるりとした舌先に先端を舐められて腰が跳ねた。いやいやと首を振りながら大地の顔を押しのけようとしても、まるで腹を空かせた赤子のように吸い付いて離れない。
 
 乳を求めるように執拗に舐られ、吸われ、ようやく解放されたときには両方の乳首が赤く腫れ上がってしまっていた。唾液にまみれ、てらてらと卑猥に輝いている。

「ははっ……えっろ」
 
 大地は俺の身体を満足げに見下ろすと、今度は太ももの内側に触れてきた。際どい部分を焦らすように撫で、おもむろに中心の窄まりに触れる。
 誰かにそこに触れられるのは初めての経験だったので、異物感に自然と腰が引けた。

「大地、待っ……ああ!」

 しかし大地は制止の言葉など聞かず、強引に内側に触れてきた。浅いところをぬるぬると擦られると応えるように腰が跳ねる。異物感はしだいささやかな快美感へと塗り替えられていく。

「湊……挿れたいんだけど、いい?」

 大地は押し開いた脚の真ん中に局部をこすりつけてきた。
 
 柔らかくなった入り口にぬるりとした感触があたり、俺ははっと我に返った。頭をもたげ、大地の局部を凝視する。
 
 そこにあるのは想像よりもずっとグロテスクな光景だった。細い触手が何十本と寄り集まり、イソギンチャクのようだった大地の局部。今はそのうちの一本が肥大し、赤黒くぬらぬらと輝いている。
 巨大なミミズが頭をもたげているようだ。

「ひぇ……」
 
 巨大ミミズに体内をまさぐられることを想像し、興奮が一気に冷めた。思わずぱたりと脚を閉じると、大地が不思議そうな表情を浮かべた。

「湊、どうした?」
「や……想像以上にグロくて……」
「ちんこが?」
「そう……あの、ちょっと仕切り直さない? 身体の準備はわりとOKなんだけど、心の準備が不十分というか……」
「えー」

 大地は不満そうに唇を尖らせ、食い下がってきた。

「じゃあとりあえず擦らせて?」
「こ、擦る?」
「そう。入れないで擦るだけ。それならどう?」

 俺は大地の局部を凝視しながら考えこんだ。
 元は大地のちんことはいえ、巨大ミミズに酷似したものを擦りつけられることはかなり抵抗がある。
 しかし一度『協力する』と言った手前、今さら拒絶することも忍びない。このセックスには大地のちんこの命運がかかっているのだから尚更だ。
 
 仕方なく、条件付きで腹をくくることにした。

「こ、擦るだけだからな! まずは擦るだけ、絶対に入れるんじゃないぞ!」
「うっかり入っちゃったら?」
「うっかり入ってたまるか! そんな極太いモン!」

 俺が大声で叫ぶと、大地は渋々うなずいた。

「ま、いーわ。とりあえず擦るだけな」
「うんそう。その後のことは擦ってから考えよう」
「セックスを風呂掃除みたいに言うんじゃねぇ」

 漫才のようなツッコミをしたあと、大地は俺の両脚をぐいと押し開いた。そのままの体勢でしばし考え、さらりとした調子でとんでもないことを言う。

「この体勢じゃ擦りにくいわ。湊、四つん這いになって」
「え、やだ」
「擦りにくいんだっつの」
後背位バックの格好ってことだろ⁉ 無理! 恥ずかしくて死ぬ!」
「人間、恥ずかしくても死なねぇよ」

 その後も俺がうだうだと腹をくくれずにいると。大地はついに強硬手段に出た。俺の身体をころりとひっくり返し、強引に尻を持ち上げる。腰回りをガッチリと掴まれてしまえば逃げることはままならない。
 
「……ひぃん、恥ずかしい」

 あまりの恥ずかしさに泣きたくなった。感じている顔を見られることも恥ずかしかったが、まさか今度は尻穴をまじまじと見られる羽目になるなんて。
 しかも得体の知れない触手で尻を擦られるというおまけつき。

 ぬちゃ、と音を立てて触手が尻に触れた。生温かくて、それ自体が生き物のように脈打っている。

「ひぃ……ぬるっとしてる……」

 にちゃにちゃと粘ついた音を立てて、触手が穴の周囲を擦る。十分に解された穴はもうそこに触れられる快楽を知っているから、気持ち悪さと気持ち良さが入り混じる奇妙な心地だった。

「はー……挿れてー」

 軽く息を弾ませながら大地が言った。
 俺は何も答えなかった。シーツに爪を立て、固く目をつぶって大地の愛撫に身を委ねた。

 そのうちに、酒を飲んだときのように頭がぼうっとし始めた。脳味噌の一部が麻痺してしまったみたいに難しいことが考えられなくなる。心臓がどくどくと鐘のように脈打ち、目を開ければ視界が歪んで上も下もわからなくない。

「……あえ?」

 目の前がくらくらして手足の感覚は鈍くなり、しかし大地に触れられている部分だけが異様に鋭敏だった。
 尻たぶを掴まれてくぼみを擦られれば、もっと強い刺激がほしいと穴がひくつく。自分で見ることは叶わないか、大地の目にはさぞや淫らに映ることだろう。

「だいち……一回、とまって……」

 俺が舌足らずで懇願すると、大地はふいに動くことをやめた。

「ん、どうした?」
「なんか、からだ、おかしい……」
「おかしいって? どこか痛いのか?」
「ちが……痛いんじゃなくて、すげぇきもちい……」

 うっとりと息を吐くと、大地は不思議そうに俺の横顔を見下ろした。それから思いついたように手を打った。

「ああ。そういえば少し前から、触手ちんこから変なピンク色の液体が出ててさ」
「……はぇ?」
「ぬるぬるして気持ちいいからそのままにしてたんだど、ひょっとしてそのせい?」
「……」

 俺は四つん這いの体勢のまま、上半身をひねって大地の局部を見た。うにうにと動く小さな触手たちの真ん中に、赤黒く勃起した極太の触手。
 
 そして大地が言ったとおり、極太触手からはピンク色の粘液がにじみだしていた。その怪しげな粘液が俺の尻に塗り込められていたようだ。

「絶対そのせいだぁ……!」
「やっぱり? まぁ触手に催淫効果は付き物だよな」
「か、確信犯……」

 ジタバタとその場から逃げ出そうとしたが、腰を掴まれて引き戻されてしまった。

「だ、だいち……待って……」
「待ちません」
「やだ、さわんな。あ……うあぁ」

 ぐぷ、と肉を押しわけ二本の指が入り込んできた。その感覚はさっきも経験しているはずなのに、鮮烈な快感が背筋を這う。ぬちぬちと中を掻き回されて、脳味噌が快楽に溶かされていく。

「ふぁ、あ……ん、ん……」

 もう気持ちいい以外のことは考えられなかった。大地の指が深いところに触れるが、それでもまだ足りない。もっと奥の、指では届かない部分がずくずくと疼いてどうしようもなかった。

 ぬるりと指が引き抜かれた。切なさに吐息が零れ、後を追うように尻を突き出してしまう。
 そこへ、指よりももっと太くて質量のある物体が押しつけられた。

「湊、悪い。もう我慢できない」
「へ――?」
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