3 / 40
3.手の甲に誓う
しおりを挟む
月のない夜だ。薄雲に覆われた夜空には一粒の星さえ見えず、雲を吹き散らすだけの風もない。木々の騒めきも虫たちの鳴き声もない、静かな夜だ。
魔王城の一室で魔王は床に就いていた。1人で寝るにはいくぶん広いベッドの上で、柔らかな毛布に身を包み、穏やかな寝息を立てている。
人の心を持たぬと恐れられる魔王とて、生物であることに違いはない。生きるために水を飲むし、夜が来れば眠くなる。魔王も魔族も人間も、生きるための機能に大きな違いはないのだ。
空気の動く気配を感じ、魔王は目を覚ました。本性が獣であるだけに、魔王の五感は他者よりも鋭敏だ。暗闇でも遠くの物を見ることができるし、ささいな物音も聞きわけることができる。人の匂いなど簡単に嗅ぎわけるし、肌感覚で風の方向を読むこともできる。魔王を魔王たらしめる理由のひとつがこれだ。獣の五感を持つ魔王を相手に、隠密を働くことは容易ではない。
魔王は息を殺し、毛布の中からじっと周囲の様子をうかがった。さわさわと空気の動く気配を感じる。誰かが寝室の中を歩いている。望まれぬ侵入者かとも思われたが、その人物の正体はすぐに明らかになった。
「リリィ?」
魔王が呼びかければ、暗闇の中を動くその人ははたと歩みを止めた。
真夜中に寝室へと入りこむ不届き者の正体は、魔王の眷属であるリリィという名の少女だ。山羊骨の仮面をかぶった小柄な少女。
リリィは寝室の中ほどで歩みを止めて、何も言わずその場に立ち尽くしている。
「リリィ、こんな夜更けにどうした。何か問題が起こったか」
魔王の問いにリリィは答えなかった。それも仕方のないことだ、リリィは口が利けない。
それでもいつもは身振り手振りを交え、最低限の意思疎通は可能なのだけれど、今夜のリリィはそれすらもしない。山羊骨の仮面をうつむけて、人形のように黙りこくっている。
すん、と魔王は鼻先を動かした。
「お前、地下牢へ行ったか。ひどい臭いがするぞ」
リリィの小さな身体が跳ねた。図星だ、ということだ。
魔王はベッドから身を起こし、溜息を吐いた。今、魔王城の地下牢に幽閉している人物は1人だけ。今日の夕刻に捕らえた人間の騎士だ。眷属にしてやろう、という魔王の提案を拒む愚かな男。そのまま意思を変えないようであれば、日の出とともに首を切り落としてやる予定であった。
魔王はリリィに問う。
「地下牢で何をした。まさかとは思うが、あの人間の騎士を逃がしわけではあるまいな?」
リリィは身じろぎもせず黙りこくっていた。図星だということだろう。魔王はまた溜息を吐いた。
正直、騎士を逃がしたことは痛手ではなかった。眷属にしてやろうかと提案したのは単なる気まぐれであるし、手負いの騎士が森で野垂れ死のうが、運よく隣国へと帰り着こうが、魔王にとってはどうでも良かった。明朝の仕事がなくなった、ただそれだけの話だ。
しかし魔王とリリィの主従関係を考えれば、主の意向に背いたリリィに罰を与えないわけにはいかなかった。地下牢に騎士を幽閉していることは、すでに城の配下全員に知れ渡っているのだから。
「お前の処罰は明日考える。今夜はもう部屋に帰って――どうした?」
いつの間にか、リリィは魔王の元へと歩み寄っていた。ベッドの脇に仁王立ちして、魔王のことを食い入るように見つめている。暗闇の中、2人はしばし見つめ合った。
ふいにリリィが、魔王に向けて握りこぶしを差し出した。魔王は一瞬迷い、しかしすぐにリリィの方へと手を伸ばした。そこに何かが握られているのならば、受け取らなければならないと思ったからだ。
リリィは魔王に何も渡さなかった。開かれたこぶしには空っぽで、驚くべき強さと速さで魔王の襟首をつかんだ。
魔王が驚き目を見開いたときには、目もくらむような閃光が爆ぜた。
「うあっ!」
一瞬にして魔王は視界を失った。次いで肩口に衝撃を感じ、魔王はベッドの上へと倒れ込んだ。
「馬鹿め、まんまと騙されたな」
弾んだ声が頭上に降り注いだ。それは地下牢に入れたはずの騎士――イシュメルの声であった。イシュメルは魔王の腹に馬乗りとなり、苦しげにうめく魔王を冷たい眼差しで見下ろしていた。
「力がありすぎるというのも不憫なものだな。警戒心がまるでなっていない。なぜ今日のうちに私を殺さなかった」
イシュメルの声は徐々に大きくなった。
「なぜ地下牢の鍵を懐に抱き込んで眠らなかった。なぜ真夜中に寝室を訪れる愚か者をすぐに追い返さなかった。その油断が貴様を殺すんだ!」
イシュメルが吠える間に、魔王の視界は徐々に鮮明さを取り戻した。
興奮するイシュメルを目の前にしても、魔王は冷静であった。ゆっくりと視線を動かして、床に落ちた山羊骨の仮面を見つめた。それは確かにリリィの物、魔王が与えた物なのだから見間違えるはずがない。そしてイシュメルが羽織るローブもリリィの物だ。
地下牢に入れていたはずの男が、リリィの姿となって寝室に現れた。それはとても不可思議なことだ。リリィとイシュメルは体格が子どもと大人ほども違う。いくらリリィの仮面とローブを身に着けたところで、イシュメルがリリィになりすませるはずはないのだ。
魔王は数度せきこみ、それから疑問を口にした。
「一体どうやってリリィになりすました。俺の記憶では、人間は魔法を使えないはずだ」
イシュメルは怒気と喜悦の入り混じる声で答えた。
「魔法は使えなくとも、道具を用いて魔法に近い力を使うことはできる。聖女が創り出す『神器』と呼ばれる道具だ。この指輪がそう――『ロキの指輪』と名を付けられた、使用者の姿かたちを自在に変えることができる神器だ」
イシュメルは魔王の目の前に左手を掲げて見せた。その中指と人差し指には、暗闇でも淡い輝きを放つ2つの指輪がはまっていた。
神器か、と魔王はつぶやいた。魔族と戦うために人間は色々なことを考える。未知の鉱物を探し求めてみたり、不可思議な呪術を執り行ってみたり、魔族の姿かたちを真似てみたり。意味のない行いばかりと見下していたが、この神器という道具は中々有用だ。
現実にイシュメルは神器を用いてリリィになりすまし、魔王の寝室へと忍び込んだのだから。
「リリィが、お前を地下牢から出したのか」
「そうだ。足元の配下にさえ裏切られるとは、魔王とは真に哀れな存在よ」
「そのリリィはどうした。まさか殺したわけではあるまいな?」
「憎き魔族とて罪なき者をそう簡単に殺すものか。私が殺したいのは貴様だけだ!」
魔王は嫌味たらしく顎をあげて笑った。
「それは大層な野望だ。だが計画がお粗末すぎやしないか? 寝室に入り込んだだけで、どうして俺を殺せると思う。今ここで黒龍の姿となり、お前を噛み殺してやろうか」
イシュメルの顔からすぅと表情が消えた。
「やれるものなら、やってみるが良い」
イシュメルの挑発に、魔王の顔からもまた表情が消えた。
途端、寝室の内部に突風が巻き起こった。ベッドを中心として竜巻のように大気がかき回される。緋色のカーテンが舞いあがり、書物がめくれ、壁にかけられた絵画がカタカタと音を立てて揺れる。
けれどもそれだけであった。いつまで待っても魔王が黒龍へと姿を変えることはなく、イシュメルの命が潰えることもない。突風は徐々に治まっていった。
「なぜ龍の姿になれない」
魔王の声は震えていた。
哄笑、嘲笑。魔王の腹の上で、イシュメルはほおを引きつらせて笑った。
「考えがお粗末なのは貴様の方だ! 私が何の策もなく、ただ寝室に入り込んだとでも思うのか。先ほどの閃光だ、覚えているか。あれもまた神器の放つ光だ。魔族の魔力を封じる聖ミルギスタ王国秘蔵の神器。その首の模様がある限り、貴様は魔法を使えない!」
魔王の脳裏に先刻の出来事がよみがえった。
リリィに化けたイシュメルは、握りこぶしを囮にして魔王の首元に触れた。その瞬間、目もくらむような閃光が辺りを包んだのだ。あれはただの目くらましではなかった。神器の発動を示す光だ。
イシュメルが左手にはめていた指輪は2つ。1つは使用者の姿かたちを自在に変える『ロキの指輪』。そしてもう1つは――
イシュメルの右手が、ベッドに落ちた魔王の右手をすくい上げた。まるで姫君の御手を取るかのような、優雅で手なれた動作だ。
しかし屈強な騎士の唇がつむぐ言葉は、忠誠の言葉には程遠い。
「私は聖ミルギスタ王国の騎士。魔王を殺すためこの地へやってきた。かつて魔族に殺された人のため、魔族の襲撃におびえる人のため、聖ミルギスタ王国の未来のため、私には悪しき魔王を消し去る義務がある」
イシュメルは魔王の手の甲に口づけを落とした。
「騎士の名にかけて誓う。今宵、私は魔王を殺す」
魔王城の一室で魔王は床に就いていた。1人で寝るにはいくぶん広いベッドの上で、柔らかな毛布に身を包み、穏やかな寝息を立てている。
人の心を持たぬと恐れられる魔王とて、生物であることに違いはない。生きるために水を飲むし、夜が来れば眠くなる。魔王も魔族も人間も、生きるための機能に大きな違いはないのだ。
空気の動く気配を感じ、魔王は目を覚ました。本性が獣であるだけに、魔王の五感は他者よりも鋭敏だ。暗闇でも遠くの物を見ることができるし、ささいな物音も聞きわけることができる。人の匂いなど簡単に嗅ぎわけるし、肌感覚で風の方向を読むこともできる。魔王を魔王たらしめる理由のひとつがこれだ。獣の五感を持つ魔王を相手に、隠密を働くことは容易ではない。
魔王は息を殺し、毛布の中からじっと周囲の様子をうかがった。さわさわと空気の動く気配を感じる。誰かが寝室の中を歩いている。望まれぬ侵入者かとも思われたが、その人物の正体はすぐに明らかになった。
「リリィ?」
魔王が呼びかければ、暗闇の中を動くその人ははたと歩みを止めた。
真夜中に寝室へと入りこむ不届き者の正体は、魔王の眷属であるリリィという名の少女だ。山羊骨の仮面をかぶった小柄な少女。
リリィは寝室の中ほどで歩みを止めて、何も言わずその場に立ち尽くしている。
「リリィ、こんな夜更けにどうした。何か問題が起こったか」
魔王の問いにリリィは答えなかった。それも仕方のないことだ、リリィは口が利けない。
それでもいつもは身振り手振りを交え、最低限の意思疎通は可能なのだけれど、今夜のリリィはそれすらもしない。山羊骨の仮面をうつむけて、人形のように黙りこくっている。
すん、と魔王は鼻先を動かした。
「お前、地下牢へ行ったか。ひどい臭いがするぞ」
リリィの小さな身体が跳ねた。図星だ、ということだ。
魔王はベッドから身を起こし、溜息を吐いた。今、魔王城の地下牢に幽閉している人物は1人だけ。今日の夕刻に捕らえた人間の騎士だ。眷属にしてやろう、という魔王の提案を拒む愚かな男。そのまま意思を変えないようであれば、日の出とともに首を切り落としてやる予定であった。
魔王はリリィに問う。
「地下牢で何をした。まさかとは思うが、あの人間の騎士を逃がしわけではあるまいな?」
リリィは身じろぎもせず黙りこくっていた。図星だということだろう。魔王はまた溜息を吐いた。
正直、騎士を逃がしたことは痛手ではなかった。眷属にしてやろうかと提案したのは単なる気まぐれであるし、手負いの騎士が森で野垂れ死のうが、運よく隣国へと帰り着こうが、魔王にとってはどうでも良かった。明朝の仕事がなくなった、ただそれだけの話だ。
しかし魔王とリリィの主従関係を考えれば、主の意向に背いたリリィに罰を与えないわけにはいかなかった。地下牢に騎士を幽閉していることは、すでに城の配下全員に知れ渡っているのだから。
「お前の処罰は明日考える。今夜はもう部屋に帰って――どうした?」
いつの間にか、リリィは魔王の元へと歩み寄っていた。ベッドの脇に仁王立ちして、魔王のことを食い入るように見つめている。暗闇の中、2人はしばし見つめ合った。
ふいにリリィが、魔王に向けて握りこぶしを差し出した。魔王は一瞬迷い、しかしすぐにリリィの方へと手を伸ばした。そこに何かが握られているのならば、受け取らなければならないと思ったからだ。
リリィは魔王に何も渡さなかった。開かれたこぶしには空っぽで、驚くべき強さと速さで魔王の襟首をつかんだ。
魔王が驚き目を見開いたときには、目もくらむような閃光が爆ぜた。
「うあっ!」
一瞬にして魔王は視界を失った。次いで肩口に衝撃を感じ、魔王はベッドの上へと倒れ込んだ。
「馬鹿め、まんまと騙されたな」
弾んだ声が頭上に降り注いだ。それは地下牢に入れたはずの騎士――イシュメルの声であった。イシュメルは魔王の腹に馬乗りとなり、苦しげにうめく魔王を冷たい眼差しで見下ろしていた。
「力がありすぎるというのも不憫なものだな。警戒心がまるでなっていない。なぜ今日のうちに私を殺さなかった」
イシュメルの声は徐々に大きくなった。
「なぜ地下牢の鍵を懐に抱き込んで眠らなかった。なぜ真夜中に寝室を訪れる愚か者をすぐに追い返さなかった。その油断が貴様を殺すんだ!」
イシュメルが吠える間に、魔王の視界は徐々に鮮明さを取り戻した。
興奮するイシュメルを目の前にしても、魔王は冷静であった。ゆっくりと視線を動かして、床に落ちた山羊骨の仮面を見つめた。それは確かにリリィの物、魔王が与えた物なのだから見間違えるはずがない。そしてイシュメルが羽織るローブもリリィの物だ。
地下牢に入れていたはずの男が、リリィの姿となって寝室に現れた。それはとても不可思議なことだ。リリィとイシュメルは体格が子どもと大人ほども違う。いくらリリィの仮面とローブを身に着けたところで、イシュメルがリリィになりすませるはずはないのだ。
魔王は数度せきこみ、それから疑問を口にした。
「一体どうやってリリィになりすました。俺の記憶では、人間は魔法を使えないはずだ」
イシュメルは怒気と喜悦の入り混じる声で答えた。
「魔法は使えなくとも、道具を用いて魔法に近い力を使うことはできる。聖女が創り出す『神器』と呼ばれる道具だ。この指輪がそう――『ロキの指輪』と名を付けられた、使用者の姿かたちを自在に変えることができる神器だ」
イシュメルは魔王の目の前に左手を掲げて見せた。その中指と人差し指には、暗闇でも淡い輝きを放つ2つの指輪がはまっていた。
神器か、と魔王はつぶやいた。魔族と戦うために人間は色々なことを考える。未知の鉱物を探し求めてみたり、不可思議な呪術を執り行ってみたり、魔族の姿かたちを真似てみたり。意味のない行いばかりと見下していたが、この神器という道具は中々有用だ。
現実にイシュメルは神器を用いてリリィになりすまし、魔王の寝室へと忍び込んだのだから。
「リリィが、お前を地下牢から出したのか」
「そうだ。足元の配下にさえ裏切られるとは、魔王とは真に哀れな存在よ」
「そのリリィはどうした。まさか殺したわけではあるまいな?」
「憎き魔族とて罪なき者をそう簡単に殺すものか。私が殺したいのは貴様だけだ!」
魔王は嫌味たらしく顎をあげて笑った。
「それは大層な野望だ。だが計画がお粗末すぎやしないか? 寝室に入り込んだだけで、どうして俺を殺せると思う。今ここで黒龍の姿となり、お前を噛み殺してやろうか」
イシュメルの顔からすぅと表情が消えた。
「やれるものなら、やってみるが良い」
イシュメルの挑発に、魔王の顔からもまた表情が消えた。
途端、寝室の内部に突風が巻き起こった。ベッドを中心として竜巻のように大気がかき回される。緋色のカーテンが舞いあがり、書物がめくれ、壁にかけられた絵画がカタカタと音を立てて揺れる。
けれどもそれだけであった。いつまで待っても魔王が黒龍へと姿を変えることはなく、イシュメルの命が潰えることもない。突風は徐々に治まっていった。
「なぜ龍の姿になれない」
魔王の声は震えていた。
哄笑、嘲笑。魔王の腹の上で、イシュメルはほおを引きつらせて笑った。
「考えがお粗末なのは貴様の方だ! 私が何の策もなく、ただ寝室に入り込んだとでも思うのか。先ほどの閃光だ、覚えているか。あれもまた神器の放つ光だ。魔族の魔力を封じる聖ミルギスタ王国秘蔵の神器。その首の模様がある限り、貴様は魔法を使えない!」
魔王の脳裏に先刻の出来事がよみがえった。
リリィに化けたイシュメルは、握りこぶしを囮にして魔王の首元に触れた。その瞬間、目もくらむような閃光が辺りを包んだのだ。あれはただの目くらましではなかった。神器の発動を示す光だ。
イシュメルが左手にはめていた指輪は2つ。1つは使用者の姿かたちを自在に変える『ロキの指輪』。そしてもう1つは――
イシュメルの右手が、ベッドに落ちた魔王の右手をすくい上げた。まるで姫君の御手を取るかのような、優雅で手なれた動作だ。
しかし屈強な騎士の唇がつむぐ言葉は、忠誠の言葉には程遠い。
「私は聖ミルギスタ王国の騎士。魔王を殺すためこの地へやってきた。かつて魔族に殺された人のため、魔族の襲撃におびえる人のため、聖ミルギスタ王国の未来のため、私には悪しき魔王を消し去る義務がある」
イシュメルは魔王の手の甲に口づけを落とした。
「騎士の名にかけて誓う。今宵、私は魔王を殺す」
21
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる