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27.監禁2日目
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その部屋に太陽の光は射さない。
人工的な光に照らされる部屋の中で、ギオラは一人ベッドに座り込んでいた。真剣な目つきで見つめる先は、足首にしっかりとはめられた鉄の足錠。足錠から伸びる鎖はベッドの脚に巻き付けられていて、寝返りや着座に不自由はないが、ベッドから離れることは困難だ。
「あの粘着ヘドロ野郎。悪趣味な物を付けおって……」
などと悪態を吐きながら、ギオラは足錠を外そうと試みる。押してみたり引っ張ってみたり、隙間に指を入れてみたり捻ってみたり。しかし強固な足錠はどう頑張っても外れることはない。ギオラはガンゴンと力の限り足錠を殴り、力なく息を吐いた。
ギオラがこの部屋へと連れ込まれてから、間もなく丸1日が経とうとしていた。置時計の針は正午を少し回ったところ。監禁2日目の正午頃、と言い換えることもできる。
今、この部屋にセロはいない。2時間半ほど前に「少し仕事をしてくる」と言って部屋を出て行った。ギオラが足錠をはめられたのはそのときだ。
窓はなくとも、部屋には木製の扉がある。その気になれば壁や天井を壊すこともできるだろう。だからセロはギオラが壁を壊すことも、武器を手にすることもできないように、ギオラをベッドの上に拘束したのだ。
結局足錠を外すことは叶わないまま、部屋にはセロが戻ってきた。両手で盆を抱えたセロは、ベッドの上で不貞腐れるギオラを見るとにこりと笑った。
「ギオラ、ただいま。お昼ご飯持ってきたから、一緒に食べようよ」
「いらん」
「いらん、じゃないでしょ。朝も水しか飲んでいないんだから、少しくらい食べないと。あまり食べないようなら、僕が代わりに咀嚼して喉に流し込んでやるけど」
絶対に遠慮願いたい提案であった。
昼食の盆をテーブルにのせたセロは、ポケットから取り出した鍵でギオラの足錠を外した。およそ3時間ぶりの自由に、ギオラはほっとした表情で錠跡の残る足首を撫でた。
「その悪趣味な足錠はどこで手に入れたんだ」
「蚤の市で買ったんだ。小さいけど取れないもんだろ。手首も繋がれたくなきゃ、僕がお仕事中は大人しくしてるんだね」
両手足をベッドに繋がれた己の姿を想像し、ギオラは本日何度目になるか分からない溜息を吐いた。
無駄な抵抗は諦め、ソファに並んで昼食の時間だ。本日のメニューは具沢山のスープとサンドイッチ。人間の食事に慣れないギオラに気を遣い、スープの野菜はかなり柔らかく煮込んである。だからといって食が進むはずもなく、ギオラは小さな一口を目いっぱい時間をかけて咀嚼する。もぐ……もぐ……もぐ。
ギオラの隣では、ご機嫌のセロがサンドイッチにかじりついていた。本当に、今にも鼻歌を歌い出しそうなご機嫌具合だ。今なら多少の情報収集は可能だろうかと、ギオラは皿の淵にスプーンを置いた。
「セロ。今世のお前の名は」
「内緒。言う必要ないだろ。僕は、ギオラにはセロと呼ばれたいんだ。1000年ギオラを想い続けた宰相セロ。この名前があれば十分」
「では仕事は?」
「それも内緒。別にギオラの興味を引くような仕事じゃないよ?」
「人と接触する機会は多い仕事か」
セロの目が愉快気に細められた。
「僕のことを知りたいならさぁ、そんな聞き方じゃ駄目だろ。『愛するセロのことを全て知りたいんだ』くらい言ってくれれば、僕もうっかり口を滑らせてしまうかもしれないけど」
「……誰が言うか、この粘着ヘドロ野郎め」
悪態を吐いたギオラは、食事を再開するためにスプーンを持ち上げた。具沢山のスープはまだ数口分しか減っていない。
ふとギオラの目の前に、苺ジャムのサンドイッチが差し出された。差し出す者はセロだ。
「……何だ」
「今日の僕は機嫌が良い。ギオラが僕の手からこのサンドイッチを食べてくれれば、本当の名前くらいは教えようじゃないか」
ギオラは散々悩んだ挙句、セロの差し出すサンドイッチの端にかじりついた。今日のセロは本当に機嫌が良い。多少プライドを捨ててでも、情報収集をする価値はあると思ったからだ。
しかしセロの下腹部に視線を落とした途端、ギオラの表情は曇った。
「おい、ふざけるな……なぜ勃つ」
「そりゃ勃つだろ。ギオラが僕の手から飯を食むなんてさ。雛鳥みたいで可愛いなぁ」
「手指を食い千切られたくなければ黙れ。食う物は食ったんだからさっさと質問に答えろ」
「はいはい」
股間部の隆起を隠そうともせずに、セロはギオラの耳元に唇を近づけた。
「『――』……」
耳朶にちゅ、と口付けを残し、セロの唇は離れていく。ギオラは顔をひそめた。
「覚えにくい名だ」
「だから覚えなくて良いって言ってるだろ。僕は、ギオラにはセロと呼ばれたいんだ。さぁお喋りはここまでにして食事を済ませてしまう。食事が終わったら風呂に入ろう?」
「風呂? こんな真昼間から?」
「ギオラと一緒に風呂に入ることが夢だったんだ。ギオラの裸を見たら、多分したくなっちゃうと思うけどさ。別に構わないだろ? ギオラだって僕とするの大好きだもんな」
ギオラは返事を返すことなく、煮崩れた野菜を口に入れた。ヘドロのようで気持ち悪い。
人工的な光に照らされる部屋の中で、ギオラは一人ベッドに座り込んでいた。真剣な目つきで見つめる先は、足首にしっかりとはめられた鉄の足錠。足錠から伸びる鎖はベッドの脚に巻き付けられていて、寝返りや着座に不自由はないが、ベッドから離れることは困難だ。
「あの粘着ヘドロ野郎。悪趣味な物を付けおって……」
などと悪態を吐きながら、ギオラは足錠を外そうと試みる。押してみたり引っ張ってみたり、隙間に指を入れてみたり捻ってみたり。しかし強固な足錠はどう頑張っても外れることはない。ギオラはガンゴンと力の限り足錠を殴り、力なく息を吐いた。
ギオラがこの部屋へと連れ込まれてから、間もなく丸1日が経とうとしていた。置時計の針は正午を少し回ったところ。監禁2日目の正午頃、と言い換えることもできる。
今、この部屋にセロはいない。2時間半ほど前に「少し仕事をしてくる」と言って部屋を出て行った。ギオラが足錠をはめられたのはそのときだ。
窓はなくとも、部屋には木製の扉がある。その気になれば壁や天井を壊すこともできるだろう。だからセロはギオラが壁を壊すことも、武器を手にすることもできないように、ギオラをベッドの上に拘束したのだ。
結局足錠を外すことは叶わないまま、部屋にはセロが戻ってきた。両手で盆を抱えたセロは、ベッドの上で不貞腐れるギオラを見るとにこりと笑った。
「ギオラ、ただいま。お昼ご飯持ってきたから、一緒に食べようよ」
「いらん」
「いらん、じゃないでしょ。朝も水しか飲んでいないんだから、少しくらい食べないと。あまり食べないようなら、僕が代わりに咀嚼して喉に流し込んでやるけど」
絶対に遠慮願いたい提案であった。
昼食の盆をテーブルにのせたセロは、ポケットから取り出した鍵でギオラの足錠を外した。およそ3時間ぶりの自由に、ギオラはほっとした表情で錠跡の残る足首を撫でた。
「その悪趣味な足錠はどこで手に入れたんだ」
「蚤の市で買ったんだ。小さいけど取れないもんだろ。手首も繋がれたくなきゃ、僕がお仕事中は大人しくしてるんだね」
両手足をベッドに繋がれた己の姿を想像し、ギオラは本日何度目になるか分からない溜息を吐いた。
無駄な抵抗は諦め、ソファに並んで昼食の時間だ。本日のメニューは具沢山のスープとサンドイッチ。人間の食事に慣れないギオラに気を遣い、スープの野菜はかなり柔らかく煮込んである。だからといって食が進むはずもなく、ギオラは小さな一口を目いっぱい時間をかけて咀嚼する。もぐ……もぐ……もぐ。
ギオラの隣では、ご機嫌のセロがサンドイッチにかじりついていた。本当に、今にも鼻歌を歌い出しそうなご機嫌具合だ。今なら多少の情報収集は可能だろうかと、ギオラは皿の淵にスプーンを置いた。
「セロ。今世のお前の名は」
「内緒。言う必要ないだろ。僕は、ギオラにはセロと呼ばれたいんだ。1000年ギオラを想い続けた宰相セロ。この名前があれば十分」
「では仕事は?」
「それも内緒。別にギオラの興味を引くような仕事じゃないよ?」
「人と接触する機会は多い仕事か」
セロの目が愉快気に細められた。
「僕のことを知りたいならさぁ、そんな聞き方じゃ駄目だろ。『愛するセロのことを全て知りたいんだ』くらい言ってくれれば、僕もうっかり口を滑らせてしまうかもしれないけど」
「……誰が言うか、この粘着ヘドロ野郎め」
悪態を吐いたギオラは、食事を再開するためにスプーンを持ち上げた。具沢山のスープはまだ数口分しか減っていない。
ふとギオラの目の前に、苺ジャムのサンドイッチが差し出された。差し出す者はセロだ。
「……何だ」
「今日の僕は機嫌が良い。ギオラが僕の手からこのサンドイッチを食べてくれれば、本当の名前くらいは教えようじゃないか」
ギオラは散々悩んだ挙句、セロの差し出すサンドイッチの端にかじりついた。今日のセロは本当に機嫌が良い。多少プライドを捨ててでも、情報収集をする価値はあると思ったからだ。
しかしセロの下腹部に視線を落とした途端、ギオラの表情は曇った。
「おい、ふざけるな……なぜ勃つ」
「そりゃ勃つだろ。ギオラが僕の手から飯を食むなんてさ。雛鳥みたいで可愛いなぁ」
「手指を食い千切られたくなければ黙れ。食う物は食ったんだからさっさと質問に答えろ」
「はいはい」
股間部の隆起を隠そうともせずに、セロはギオラの耳元に唇を近づけた。
「『――』……」
耳朶にちゅ、と口付けを残し、セロの唇は離れていく。ギオラは顔をひそめた。
「覚えにくい名だ」
「だから覚えなくて良いって言ってるだろ。僕は、ギオラにはセロと呼ばれたいんだ。さぁお喋りはここまでにして食事を済ませてしまう。食事が終わったら風呂に入ろう?」
「風呂? こんな真昼間から?」
「ギオラと一緒に風呂に入ることが夢だったんだ。ギオラの裸を見たら、多分したくなっちゃうと思うけどさ。別に構わないだろ? ギオラだって僕とするの大好きだもんな」
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