女嫌いな僕が君にできること

世良睡蓮

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第1話 夏休み前

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ジワジワと照り付ける太陽の暑さ、蝉の鳴き声が授業中の生徒たちの集中力を奪う季節。
だがあと一週間の辛抱…耐え抜けば『夏休み』だ。これを楽しみにしていなかった学生なんてこの世に存在しないだろう。
「そろそろコミケに向けて色々計画立てないとなぁ」

そうぽつんと呟いて一之瀬いちのせに授業を聴かず、ノートも取らずに8月中旬に東京で行われる世界最大の同人誌即売会について考えていた。

「夜行バスとホテルの手配は全て済んでる、持っていくものを書き起こしてまとめて後で遥輝達に伝えて…」

当日は俺1人ではなく浅霧あさぎり『佐々野 遥輝ささの はるき、』、『北川 夏芽きたがわ なつめ』の計4人で戦場コミケに臨む。
遥輝と夏芽は中学の頃からの友人だ。夏芽とは一番付き合いが長い。

早くこの一週間が過ぎてくれないものか…

_________________________________


「コミケのことばっか考えてたら一瞬で時間が過ぎたぞ。これは最強かもしれねぇ」
「おう、その代償は成績だけどな」
「それはそう」

そんな冗談を岩野いわのと言い合いながら廊下を歩き昇降口に向かっていると、カップルが喧嘩をしている声が聞こえた。お互い白熱しており、周りに人がいるのなんて関係なしだ。

うるさいなぁ、そんなところで喧嘩するなよ…

少し苛立っている一之瀬に岩野が耳打ちした。

「一之瀬、あれ浅霧と永谷じゃねーか?」
「え?」

昇降口を出て声の聞こえる方向を見ると、岩野の言う通りギャラリーの中心に浅霧と#_永谷 美月_ながたに みづき_#がいた。

「だからなんでそうなるのさ…私が全部悪いわけ!?」
「別にそうは言ってないだろ、お前がそういうところが嫌なんだよ!!」
「っ…」
耐えられなくなったのだろう、永谷は走り去ってしまった。

しばらくの間静寂が周りを包み、クソッ…とアスファルトと蹴りつける浅霧によってその静寂は破られた。

「とりあえず落ち着け、何があったんだよ?」

岩野が浅霧をなだめながらなるべく優しい口調で原因を聞くと、「最近一緒にいると小言を言われたり喧嘩が増えたりで少しうんざりしており、ついに我慢の限界を迎えた」…という話だった。

正直クソ程どうでもよかったが、場の空気で浅霧に同情しておく。

「とりあえず帰ろうぜ、電車逃したら2時間待つ羽目になるぞ」
「やべっ電車あと10分で来るじゃんか!浅霧は部活か?」
「いや、今日はオフだから急いで駅向かおうぜ」

ギリギリになったのはお前のおかげだけどな、と3人で笑いながら走って駅へ向かった。

「やっぱ女ってめんどくせぇな…」心からそう思った。

_________________________________


「一之瀬君、ちょっといい?」
「え?」

今日は楽しみにしていた終業式だ。ようやく夏休みに入る喜びで岩野繋がりで仲良くなった『#_廣岡 玲也_ひろおか れいや_#』と戯れていると後ろから声を掛けられた。
声の主は…永谷だった

「大丈夫だけど…どうした?」
「放課後、ちょっと相談乗ってもらってもいいかな?」

相談…確実に浅霧とのことだろう。
正直面倒だし折角午前中に学校が終わるのだ、何処かへ遊びに行こうと考えていたが…

「放課後ね、おっけ」

断るという選択肢は頭になかった。

「ありがと、じゃあまた後でね。」

そう言って永谷は教室を出て行った。

「一之瀬お前どうしたんだよ、相談乗るなんて珍しい」
「自分でもよく分からねぇ…けど俺は真面目だから相談の1つや2つ乗れるんだぞ」
「頭のネジ9割外れてるような奴がなに言ってやがる」
「お?類は友を呼ぶだよブーメランって知ってっかぁ?w」

流れるように再び戯れながら終業式のため体育館へ向かった。男友達最高。



「えー生徒指導からこれと言って連絡はありませんが、夏休み中は学校の決められたルールの中でしっかり本校の生徒であるという自覚を持って―――」

暑苦しく全生徒が詰め込まれた体育館に生徒指導主任の『#_浜崎_はまざき_#』先生の声が響く。なんでマイク無しで体育館全体に声が響くんだよ、身体にスピーカー付いてんのか。

「以上、じゃあ3年の1組から立って―」

その言葉と共に全生徒の緊張が緩み、「体育館暑すぎ」など愚痴を漏らしたり「下校してから何処かに遊びに行こう」といった会話をしながらクラスごとに次々と退場する。

_________________________________

ホームルームを終えゾロゾロとみんなが昇降口に向かう中、一之瀬は一人教室で過ごしていた。

「どうしよ…相談乗るって言ってもどうすればいいのか全然わかんねぇよ」

初めて永谷と話したときは本当にアニメの話しかしなかった。永谷へのイメージ像とは裏腹に案外話しやすい人ではあったが、なんでわざわざ俺に相談を持ち掛けてきたのかも謎だ…
一之瀬が頭を抱えているとガララと教室の扉が開けられ、そこには永谷が立っていた。

「ごめんね、いきなり」
「あぁいや、この後予定なかったし大丈夫」

永谷はそう言いながら椅子を移動させ、一之瀬の対面に座った。

「えーと…早速で悪いけど、相談したいことって?」
「あ、うん…浅霧のことなんだけど」

予想通り、というかそれしかないだろうな

「ちょっと生々しい話でも大丈夫?」
「え?まぁ全然いいけど…」

永谷は少し言葉に詰まったが、意を決したように言った。








「私、ちょっと前から生理が来てないの。」








うん、うんうんうん。







「…え?」







俺の背筋は一瞬にして凍り付いた。

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