天使のような君に恋をした

雨のち晴れ

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第一章 君を好きになる

俺と幸助

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 遊覧船に乗るためにキャンプ場からバスで船場まで移動する。バス内は楽しそうな笑い声で溢れ返っていた。窓から空を見上げていた。雲一つない晴天の今日は陽気な気分になれる。

「グミいる?」
「幸助っていつもグミ食べてるよな」
「って言ってる君も絶賛どハマり中じゃないですかー?」

俺の持ってきたお菓子の中には幸助おすすめのグミが入っていた。俺はグミではない別のお菓子を取り出して「あげる」と言ってお裾分けした。「お、サンキュー」と幸助はお菓子を口に入れた。

「それにしてもよ、チキンだった橘がよく春奈さんを誘えたな」
「俺もやる時はやる男なんだよ」

「笑わせるなよ」と嬉しそうに笑う幸助がいた。どうして幸助はいつも俺のことを助けてくれるのだろう。少し照れ臭くて聞きづらいことだが聞いてみることにした。

「なぁ幸助、なんでいつも俺を助けてくれるんだ?」

眠そうに大きなあくびをする幸助。「うーん」と頭をかきながら言った。

「幸助だからだよ」
「へ?」

俺は幸助の言った意味が理解できなかった。恐らく俺だけではない。きっと誰もが理解できない理由だと思う。ずっと見つめても何も言わないので「どう言う意味だ?」と尋ねた。幸助はシートに自分の腕を枕替わりにしてシートにもたれかかり言った。

「幸助って言う漢字は幸せを助けるって書くんだ。つまりそう言うことだ。かっこいいだろ」
「なるほど。でもなんで俺なんだ?」

幸助はシートから体を起こし、俺の目を見ていた。その目は今までに見たことがないほど真剣な眼差しを送っていた。

「それは、橘が死にそうな気がしたからだ」
「そんな自殺なんてしないぜ?」
「辛かっただろう。一生懸命努力して掴んだ推薦入学でこの高校にきて甲子園を目指すはずだったのに大好きな野球を辞めなければならなかったのは」
「ま、まあそれはね。もう大丈夫だぞ」
「あの時の橘は顔が死んでいた。心の底から苦しいって感情が出ていたような気がした。その時俺は橘のことを助けたいって思ったんだよ」

いつもふざけている男がそこまで考えていたとは。俺は嬉しくて少し泣きそうになっていた。俺はいつも幸助に迷惑かけてばかりだ。

「でもその役目は俺じゃなかった」
「そんなことないぞ!幸助は………」
「俺はあの時見えたんだ。橘の前に天使が現れたところを」

天使なんて見えるわけがないだろう。そう心の中で思っていた。しかし今は今だけは幸助の話を否定したくはなかった。だから俺は「天使って誰だよ?」と幸助に尋ねた。

「春奈さんだよ」

俺は「春奈」と言う言葉に異常なほどに反応してしまった。

「春奈さんと出会ってから橘はだんだん笑うようになってよ、今では恋までしてよ。だから思うんだ」

幸助は一呼吸置いてから言ったとても優しい顔で。

「橘、お前には春奈が必要だ」

俺は春奈との日々を振り返っていた。あの日突然現れた君は俺を変えた。二人で帰ったあの日。それに昨日の出来事もそうだ。俺の周りには春奈と幸助がいてくれた。良き友達に巡り会えたな。

「俺には幸助がいてくれたら充分だよ。それに春奈は俺じゃない好きな人がいるし………」
「運命だとか赤い糸とかよくわかんねぇけどよ、そんなもん壊していくんだ」
「言ってることめちゃくちゃだよ」
「でもそうして勝ち取った恋を人は運命的な出会いとか言うんじゃねぇか?」

俺は幸助の話を聞いて考えさせられた。運命とは何か、赤い糸とは何か。それは誰が考え、作ったのか。きっとそれは自分自身だ。綺麗な出来事ばかりではない。それを二人で乗り越えてきたからこそ人はその恋を運命と呼ぶのかもしれない。

「好きなんだろ?春奈さんのこと」
「うん、まあそれはそう。でも俺なんかが………」
「やっぱり橘には俺が必要だな!俺を頼れ、必ずお前の恋を叶えてやるよ」

頼れる男とは幸助のことを言うのだろう。俺も何かあれば助けたいって思う。

「幸助は好きな人いないのか?」
「俺は女子全員が好きだな」
「なんでだよ」
「彼女出来たら他の女の子と話せねぇじゃん!」

俺はため息が出てしまった。やっぱり幸助は幸助だ。でも、意外な一面を見ることができた。きっとこの行事を通して自分の知らない何かを見つけるのだろう。それはきっとプラスのことばかりではないと思う。

「おっ!橘、海見えてきたぞ!」

俺の膝に乗りかかりながら海を見る幸助。俺は幸助の横顔見ながら心のなかで「幸助ありがとう!頼りにしてるぞ!」と語りかけた。

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