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第二章
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しおりを挟むこの学院には部活動がなくその代わりに土曜日が課外活動日に充てられていた。茶道、華道、管弦楽などの文化系、テニス、弓道、水泳、社交ダンスなどの運動系。参加は自由で毎回同じ場所でなくても良い。皆嗜み程度に楽しんでるという感じだ。そんなところにも時代がかった女子校の風情が漂っている。
本当なら早く学院に慣れる為にも華も参加すべきなのだろうが、とてもそんな気持ちにはなれなかった。食事以外は一日部屋に閉じこもっていた。
転入して二度目の日曜日。
日曜日は完全に休日で、広い庭を散策したり寮の図書室で読書をしたり、談話室や各部屋を行き来するなど皆思い思いに楽しんでいる。
華もやっと外に出てみようかという気になった。まだここへ来てから庭にも出ておらず、寮と校舎以外に何があるのか把握していなかった。
前庭は綺麗に整えられ、芝生の中に噴水その周りにはベンチも置いてある。数人の生徒がそこで話をしていた。
華は自分が入って来た門に近づいた。
(ここから……出られないかしら……)
勿論それは不可能だ。鍵は掛かっていて試しに押したり引いたりしてみたが、びくともしない。それに例え出れたとしても、その先は鬱蒼とした森だ。
小さく溜息を吐く。
高い塀に沿って歩いて行く。塀伝いにはずっと薔薇が植えられていた。枝が自分の背よりも高い。秋咲きの薔薇が見事に咲いていた。
不意に頭上で羽ばたきが聞こえ、振り仰ぐと黒い鳥がアイアンの飾りに器用に止まっていた。
そして。
(なに? 何か突っついてる?)
棘のように尖った先に白っぽい何かが引っ掛かっていて、それを突っついているように見えた。
「猫か何かかしらね」
「えっ」
突然背後から声がして、華の身体はびくびくっと震えた。
「何故かよくあそこに引っ掛かってるのよね、猫とか鳥とか兎とか?」
振り返ると同じように上を見ている少女がいた。
「そ、そうなの?」
また何か言われるのだろうかとびくびくしながら答える。
彼女は満面の笑みを浮かべて華を見た。肩までの癖毛でオフホワイトの細身のリボンでハーフアップにしている。頬にそばかすのある人好きのする顔だ。
「そんな顔しないで、百瀬さん」
自分がいったいどんな顔をしているんだろう。きっと怯えたような顔に違いない。
「あたし、同じクラスの立川凛音――あたしも経験あるよ……」
「え……」
「……ここにいるのが長ければ長いほど外から来る子を排除したがるのよね」
笑顔が消えて翳りを帯びる。
「あたしも中一の頃転入して来て、百瀬さんと同じ目にあった……逃げ出したくて門のところまで来た。百瀬さんの気持ちわかりすぎる程わかるわ……でも、ごめんね。声掛けることも出来なくて、やっぱり自分に飛んで来るのが怖くて。そう思っている子は何人もいる」
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