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第五章
3
しおりを挟む日曜日。
今日は朝からそわそわしていた。別に楽しみにしているとかそういうわけではない。
まず涼にイヴリンの茶会に呼ばれたことを言えなかった。涼派・イヴリン派の対立のように二人が対立しているのかはわからないけど、少なくとも涼のほうはイヴリンを避けているように思えた。それについて訊くことも出来ずにいる。もし茶会の話をしたらどんな反応されるのか。それが少し怖かった。
逐一報告する義務もないが、黙っているのを自分の中で勝手に気不味く思えてしまう。
この茶会に他に誰が来るのかということも気になる。当然イヴリン派の人だろうし、普段離したこともないような人たちなのだろう。その中にはもしかしたら、いつまでも華の机に花瓶を置き、くすくす笑ったクラスメイトもいるかも知れない。
茶会は午後二時からだ。
それまでの時間を落ち着いて過ごせる気がしなかった。
朝食の後一人で外に出る。広大な庭を回っていれば時間が過ぎるかも知れない。十二月初めのこの時間は寒くまだ外に出てる生徒はいなさそうだ。
前庭に出て門まで歩く。噴水の傍はまだ通る気分にはなれず、遠く離れた場所から眺めた。門から外を見るとそこは鬱蒼とした森で外界から遮断されているとだと感じて悲しくなって来る。
ここに来てからひと月ちょっと。外の世界にいたのがもう遥か昔のことのように思えた。
薔薇の咲いている塀伝いに歩き校舎の横を奥庭に向かって歩いていると、ふわっと白い人影が見えた。人影はふらふらとした足取りで礼拝堂の中に消えて行った。生徒の中にはクリスチャンの子もいるというから礼拝堂で祈りを捧げていても可笑しくはないだろう。
しかし何故か気になって、礼拝堂の中にそっと入って行く。通路を挟んで右側の一番前の列に座りその人は熱心に祈っていた。華は一番後ろの席に腰を掛けた。
(生徒じゃない? シスターよね?)
生徒は寮の個室以外は日曜日でも制服を着なければならなかった。彼女は白いワンピースを着ていて、頭巾は被っていなかった。
やがて啜り泣く声が聞こえ長机の上に顔を伏せた。
「大丈夫ですか?」
思わず声を掛けるとはっとしたように顔を上げ振り返る。
「シスターユリア……」
そう言えば最近見掛けていなかったような気がした。最後に見たのは絵玲奈の机から花瓶を持って行った日。あの時見た顔よりもだいぶやつれているような気がした。
「あなたは」
華は立ち上がってシスターユリアに近づいて行く。
「あのわたし絵玲奈さんと同じクラスの……絵玲奈さんの為に祈っているのですか」
「え……」
彼女は間近で見るといつも頭巾で隠れている髪はライトブラウン、瞳は榛色の日本人離れした顔立ちだった。
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