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第五章
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シスターユリアは口を引き結び視線を扉の方へ向けた。
「凜音さん」
扉の前に立っていたのは凜音だった。
「華さんがここに入って行くのを見掛けたので」
シスターユリアはさっと立ち上がった。
「ではわたくしはこれで」
華とすれ違いざま小声で言う。心なしか顔が青褪めているように見えた。
「ご機嫌よう、シスターユリア」
「ご機嫌よう」
シスターユリアは凜音の横を通り過ぎ、開け放たれた扉の外へと出て行った。
凜音が華に近づいて行く。
「シスターユリアと何のお話を?」
いつもの笑顔のように見えて、目が笑っていないように思えた。何故こんな不自然な顔をしているのか不思議でならない。
「わたしもここに誰かが入って行くのが見えて、気になって入ってみたの。そうしたらシスターユリアが祈りを捧げていて、わたしは絵玲奈さんの為に祈ってるのですかと訊ねたわ」
「シスターユリアはなんて」
答えなど最初からわかっているような顔をしている。
「そうだと仰ってたわ。礼拝堂で無事を祈る程親しいかったのね」
聞いたことを全て話すことはないだろう。華が聞いたことは大切な秘密のように思えたから。
「大事な人、だからよ」
しかし凜音は全て知っているような感じだ。
「大事な人?」
確かに彼女は『お互いなくてはならない存在』だと言っていた。今の凜音の言葉には少し下世話な色が含まれているように思えた。
「ここって、シェフと庭師以外に男性いないじゃない。だから自然とね、そういうこともあるの。女の子同士でっていうのが」
言葉は濁されていたが、流石に華にも意味がわかった。
「そ、そうなの?」
「そうよ。涼さまだって……前に……」
どきんっと心臓が波打つ。
(涼さんにも……)
想像がつかなかった。どちらかと言えばストイックな感じで、誰かに恋愛感情を持つようには見えない。
何故か少し胸が痛んだ。
午後二時。
寮の奥に白いそれ程大きくはない洋館がある。学院長の自宅だ。茶会はそこの一室・サロンで行われる。イヴリンと華以外に八人の生徒と世話役としてシスターが一人。
生徒は皆上級生のようで同じ学年ですら顔もまだ覚えていない華にはまるで見たことのない顔ばかりだった。緊張で心臓がばくばくする。
「今日は新しいお客様がいらっしゃいました。高等部の一年に転入してきた百瀬華さんです。皆さんこれからよろしくお願いしますね」
華は座ったまま会釈し、他の生徒も笑顔で返した。しかし、華には皆が心の底から華を歓迎しているようには見えなかった。
(このお茶会っていったいなんの集まりなのかしら。これからよろしくってまたあったりするのかしら)
今回も全く乗り気ではなかった。華は当然今日一回切りのことだと思っていた。イヴリンが気まぐれに声を掛けたのだと。
「凜音さん」
扉の前に立っていたのは凜音だった。
「華さんがここに入って行くのを見掛けたので」
シスターユリアはさっと立ち上がった。
「ではわたくしはこれで」
華とすれ違いざま小声で言う。心なしか顔が青褪めているように見えた。
「ご機嫌よう、シスターユリア」
「ご機嫌よう」
シスターユリアは凜音の横を通り過ぎ、開け放たれた扉の外へと出て行った。
凜音が華に近づいて行く。
「シスターユリアと何のお話を?」
いつもの笑顔のように見えて、目が笑っていないように思えた。何故こんな不自然な顔をしているのか不思議でならない。
「わたしもここに誰かが入って行くのが見えて、気になって入ってみたの。そうしたらシスターユリアが祈りを捧げていて、わたしは絵玲奈さんの為に祈ってるのですかと訊ねたわ」
「シスターユリアはなんて」
答えなど最初からわかっているような顔をしている。
「そうだと仰ってたわ。礼拝堂で無事を祈る程親しいかったのね」
聞いたことを全て話すことはないだろう。華が聞いたことは大切な秘密のように思えたから。
「大事な人、だからよ」
しかし凜音は全て知っているような感じだ。
「大事な人?」
確かに彼女は『お互いなくてはならない存在』だと言っていた。今の凜音の言葉には少し下世話な色が含まれているように思えた。
「ここって、シェフと庭師以外に男性いないじゃない。だから自然とね、そういうこともあるの。女の子同士でっていうのが」
言葉は濁されていたが、流石に華にも意味がわかった。
「そ、そうなの?」
「そうよ。涼さまだって……前に……」
どきんっと心臓が波打つ。
(涼さんにも……)
想像がつかなかった。どちらかと言えばストイックな感じで、誰かに恋愛感情を持つようには見えない。
何故か少し胸が痛んだ。
午後二時。
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(このお茶会っていったいなんの集まりなのかしら。これからよろしくってまたあったりするのかしら)
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