9 / 185
第二章
3
しおりを挟むそれから僕らは毎日のように一緒に遊ぶようになった。
この辺りでは夕方誰でも知っている童謡の曲が流れる。僕らはそれ“鐘が鳴る”と言っている。子どもたちはそれを目安に家へ帰る。九月いっぱいは五時半に、それから三月末までが四時半に鳴る。
僕が保育園から帰るのが五時過ぎで、夏期の今でさえ鐘が鳴るまでには三十分にも満たない。それでも樹は僕が帰って来るのを待ち構えていた。僕は家にも入る間もなく、目の前の空き地に連れて行かれる。
土日は一日中一緒、なんてことも多く、少し歩いたところの公園へも行く。
初めは気が進まなかった僕もひと月経てば慣れてしまう。樹と遊ぶことが、一緒にいることが自然になったきた。
その頃になると、樹は僕のことを『ななせ』から『ナナ』と呼ぶようになる。
保育園の友だちも呼ばない呼び方に、更にぐっと親しさが増したような気がして、擽ったいようなどきどきするようななんとも言えない気持ちになった。
僕は、と言えば、『いつきって呼べよー』という彼の要望にはなかなか応えられず、なんとか『いっくん』で留めるのを納得して貰えた。
外ばかりではなく、互いの部屋でも遊ぶようになった。休みの前日には僕の家に泊まりに来ることも。独りっ子の樹は、僕の年の離れた姉とも仲良くなった。
樹の家に泊まるにはまだ勇気がいるし、それに樹の父親がそういうことを余り好まないらしい。
僕らの仲は急速に深まり、もう何年も前から一緒にいるような気さえした。僕にそういう友だちが出来るとは、自分でも思ってもみなかった。
そうやって半年を過ごし、僕らは同じ小学校に入学した。
予想通り保育園での友だちは誰一人いなかった。僕の知り合いは、樹だけ。運が良かったのか、学校側での配慮なのか、一、二年は樹と同じクラスになった。
僕と違って友だちの多い樹といることで、自分から話に行かない僕にも話しかけてくれるクラスメイトもいて、この二年間は割りと快適だったと思える。
それに、どんなに友だちが多くても樹が僕を最優先に扱ってくれることに、密かに優越感もあった。
出逢った頃が信じられないくらいに、樹は僕にとってなくてはならない存在になったんだ。
でも。
樹が何故自分とは全く性格の違う、一緒にいても面白くもなさそうな僕を、一番の友だちにしてくれていたのか。
それは今思い返しても、謎でしかない。
三年から六年までは樹とはクラスが別れてしまった。
そうなると人見知りな僕は、なかなか自分から話しかけられる友だちも出来ず、かといって苛めに合うこともなく、ある意味平穏な学校生活を送っていた。
樹のような友だちができなくても、特に寂しいとは思わなかった。
放課後や、休日には相変わらず樹と一緒に過ごしていたから。
33
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる