48 / 185
第十章
4
しおりを挟む気まずい空気のまま、それでも並んで歩いている。
もう話しかける言葉も思いつかないし、そんな勇気もない。口を開けば、また変な話題が飛び出しそうだし、これ以上気まずくなるのは辛い。
「あ、樹じゃーん」
後方から声がした。
微妙な空気を打ち破ってくれたのはいいが、けして歓迎できるものではなかった。
最近は一緒にいるのを見ない、樹の『仲間』の中でも少し怖めの三年生だ。
あっという間に数人に取り囲まれる。
最初に声をかけてきた金髪の三年が、親しげに樹の肩に腕を回す。
三年のこの時期にこの姿容は、受験はしないのだろうかと、思ってしまう。
「最近、全然俺らのとこに来ないよなぁ。授業も真面目に出てるみたいだしーどうしちゃったー?」
樹は彼の腕を素っ気なく払う。
「どうしてそんなこと知ってんのかわかんねぇけど。お前らにはかんけぇねぇだろ」
上級生に対してではない言葉遣いが、同等の力関係を感じさせる。
「なんだとっ」
そう息巻いたのは、他の生徒。二年も一年も混じっている。
「まぁまぁ」
と金髪男子が軽く周りを往なす。
「俺ら、これからオンナ連れて遊び行くけど、お前もたまには来いよ」
樹は無表情のまま首を横に振る。
「お前が誘いに乗らねぇって毎度俺が文句言われてんだけど」
そんな言いがかりにも何も答えない。
にこやかな顔で話しかけていた男も、ちょっと険しい表情になってきた。
「なんだー。今更真面目ちゃんかー。誘われれば他人のオンナまで喰ってた奴が」
その言葉には、ぎょっとした。
昼日中の学校で話すような話題でもない。
樹の知りたくない過去がわかってしまいそうで、きゅっと胸も痛む。
明からも聞いていたが、言う人が違うと更に印象が変わる。もっと悪いほうへ……。
「そういやー、カナも来なくなったな。今日は一緒じゃねぇのか。お前らは今もつるんでるんだろ……ん?」
きょろと周りを見渡す目と、樹を見守っている僕の目が合ってしまう。
慌てて顔を下に向けるが、彼の視線が僕に注がれているのを肌で感じる。
(なに……なんで、そんなに見るの。
興味持たれてしまった……?)
「なんか、ずいぶんかーいーコ連れてるじゃん。お前とはだいぶタイプが違う」
「──関係ない。別に一緒にいたわけじゃ」
冷静な顔で答えているようで、何処か動揺が見える。
誤魔化せないと思ったのか言葉は途中で途切れて唇を噛んだ。
「あ、俺、こいつ知ってる~。城河の隣のクラスの奴だ。カナさんもこいつ構ってる」
そう言ったのは、一年の生徒。明のことは歳上の為、呼び捨てに出来ないらしい。
「俺も知ってる──あれだ! 『いっくん、僕こんな傷なんか、全然気にしてない!』とかなんとか」
────僕はどうやら有名人らしい。
37
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる