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第十章
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「なんだ、それ」
と金髪。
「こいつ、こんな顔して額に傷痕あるんすよ。それを可愛いピンでとめてぇー。城河の前で大声で言ってたんす。城河のこと、『いっくん』て呼んでた。なー」
「そうそう」
と一年二人がげらげら笑う。
(やめてっ。そんな説明いらないからっ)
あの時は樹に伝えてたくて必死だった。
周りが騒いでいたのも知ってる。
でも、改めて言われるとかなり辛いものがある。
今の僕の顔は、たぶん赤くなったり青くなったり忙しいだろう。
「やめろ」
樹が低い声で言う。
そのことも面白がって、
「お前『いっくん』て呼ばれてんの。『いっくん』なんて柄じゃねぇーよーなー」
さっき腕を払われたのに、また後ろから腕を回して樹の顔を覗き込みながら言う。
「どうでもいいだろ、そんなこと」
「ふぅん」
何を考えているのか。
しばらく樹の顔を見ていたが、にやっと笑って離れ──僕のほうに近づいて来る。
「キミさー樹と友だちなの? こいつ、めっちゃ悪いヤツよー」
(あ、手が……)
僕の顔の前に手が翳されて、きっと前髪を上げようとしているんだと、わかる。身体がきゅっと縮こまる。
『あの時』のことを思い出す。
前髪を上げられ額の傷を見られる。それも確かに嫌だ。でもそれよりもこういう人たちに上から威圧感的に覗き込まれるのは、その時のことを思い出して怖くて仕方がない。動けなくなってしまう。
「お前には関係ない」
ぎゅっと目を瞑っていると、樹の声が間近に聞こえた。
そろっと目を開ける。
樹の大きな背が目の前に見えた。
彼らから僕のことを隠している。
「もう行けよ」
短い言葉の中に樹の怒りを感じる。
「なんだとっ」
「お前、何様だっ」
周りは飛びかからんばかりの様子だが、金髪男子は逆に興味をなくしたようだ。
「ま、いいや。──行こうぜ。またな、樹」
一番力の強いらしい彼に言われたら他は何も言えない。こっちを睨みながら通り過ぎて行く。
最後に。
金髪の三年が、にやにや笑いながら。
「またね。かわいコちゃん」
明らかに僕に向かって言った。
それに僕はぞっとした。
「ナナ」
彼らが行ってしまうと、樹は僕のほうに身体を向けた。
上から見下ろされる。
樹にはこうされても全然平気だ。
「もし、何かあったら言えよ」
「え?」
心配そうな色がその瞳に浮かんでいる。僕に対しては今も無表情に近いのに、こんな顔をしている樹は珍しい。子どもの頃の樹みたいだ。
「彼奴らが──いや、他の奴でも、だけど。もし何かしてきたら、俺かカナに……」
明の名前を出したところで一旦言葉を切り、きゅっと眉間に皺を寄せる。
「いや。絶対俺に言えよ。お前のことは──俺が守るから」
ぐっと両肩を掴んでくる手には、白くなる程力が入っていた。
「いっくん……」
ぽ……っと。
心の中に温かな火が灯ったような気がした。
と金髪。
「こいつ、こんな顔して額に傷痕あるんすよ。それを可愛いピンでとめてぇー。城河の前で大声で言ってたんす。城河のこと、『いっくん』て呼んでた。なー」
「そうそう」
と一年二人がげらげら笑う。
(やめてっ。そんな説明いらないからっ)
あの時は樹に伝えてたくて必死だった。
周りが騒いでいたのも知ってる。
でも、改めて言われるとかなり辛いものがある。
今の僕の顔は、たぶん赤くなったり青くなったり忙しいだろう。
「やめろ」
樹が低い声で言う。
そのことも面白がって、
「お前『いっくん』て呼ばれてんの。『いっくん』なんて柄じゃねぇーよーなー」
さっき腕を払われたのに、また後ろから腕を回して樹の顔を覗き込みながら言う。
「どうでもいいだろ、そんなこと」
「ふぅん」
何を考えているのか。
しばらく樹の顔を見ていたが、にやっと笑って離れ──僕のほうに近づいて来る。
「キミさー樹と友だちなの? こいつ、めっちゃ悪いヤツよー」
(あ、手が……)
僕の顔の前に手が翳されて、きっと前髪を上げようとしているんだと、わかる。身体がきゅっと縮こまる。
『あの時』のことを思い出す。
前髪を上げられ額の傷を見られる。それも確かに嫌だ。でもそれよりもこういう人たちに上から威圧感的に覗き込まれるのは、その時のことを思い出して怖くて仕方がない。動けなくなってしまう。
「お前には関係ない」
ぎゅっと目を瞑っていると、樹の声が間近に聞こえた。
そろっと目を開ける。
樹の大きな背が目の前に見えた。
彼らから僕のことを隠している。
「もう行けよ」
短い言葉の中に樹の怒りを感じる。
「なんだとっ」
「お前、何様だっ」
周りは飛びかからんばかりの様子だが、金髪男子は逆に興味をなくしたようだ。
「ま、いいや。──行こうぜ。またな、樹」
一番力の強いらしい彼に言われたら他は何も言えない。こっちを睨みながら通り過ぎて行く。
最後に。
金髪の三年が、にやにや笑いながら。
「またね。かわいコちゃん」
明らかに僕に向かって言った。
それに僕はぞっとした。
「ナナ」
彼らが行ってしまうと、樹は僕のほうに身体を向けた。
上から見下ろされる。
樹にはこうされても全然平気だ。
「もし、何かあったら言えよ」
「え?」
心配そうな色がその瞳に浮かんでいる。僕に対しては今も無表情に近いのに、こんな顔をしている樹は珍しい。子どもの頃の樹みたいだ。
「彼奴らが──いや、他の奴でも、だけど。もし何かしてきたら、俺かカナに……」
明の名前を出したところで一旦言葉を切り、きゅっと眉間に皺を寄せる。
「いや。絶対俺に言えよ。お前のことは──俺が守るから」
ぐっと両肩を掴んでくる手には、白くなる程力が入っていた。
「いっくん……」
ぽ……っと。
心の中に温かな火が灯ったような気がした。
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