85 / 185
第十七章
2
しおりを挟む三日目の日程をすべて終えた。
ホテルで夕食を取った僕らは、部屋に戻ってきた。
とうとう二人きりになってしまい、初めは心臓がばくばくするくらい緊張してしまっていた。
(変なの。
二人きりになるのなんて、始めてじゃないのに)
お互い、夕食前に始めていた荷造りを再開する。大きな荷物は明日朝に自宅に送る手続きをする。
それをしながら、交代でシャワーを浴びる。
時々他愛ない話をしているうちに、だんだんと緊張が解れて、自然体になっていく。
「いっくん、眠くなってきた」
緊張が解れると、一日の疲れがどっと押し寄せて、眠気が襲ってきた。なんとか、荷造りを終えると僕はベッドに上がった。
二つ並んだベッドの窓に近いほうを僕は選んでいた。
「おー。俺ももう終わるから先寝てていいよ」
「うん。おやすみ~」
「おやすみ、ナナ」
(わ~なんか今すごく優しい声で言われたみたいな)
そんなこと考えつつベッドの中に潜り込んだ。
トントン。トントン。
夢の中で誰かがノックをしている。
トントン。トントン。
「なんだ、こんな時間に」
小さな声で呟いて、ちっと舌打ちのが聞こえた。
(あれ? 夢じゃ……)
そう思った瞬間。
ブルブルと枕元にあったスマホが震えた。
「え? 何」
やっと夢じゃないことに気づいて、スマホを掴んだ。
見ると、相手は大地。
「大くんからだ」
「じゃあ、あれは」
樹はまだ寝ていなかったのか自分のベッドの脇に立っていた。顔はドアのほうを向いている。
僕は慌てて通話を押した。
「ななせぇ~お願い~開けて~」
ドアの向こうからも微かに同じ声が聞こえてくる。
立っていた樹が嫌そうな顔をしながらも開けてあげると、大地が飛び込んできてた。樹の横を通り抜け、一目散に僕の元にやってくる。ベッドにダイブして、半身上掛けの中の僕に縋りついてきた。
「七星~っっもう、アイツ嫌いだ~っっ」
涙声で叫ぶ。
「え? アイツ? 誰?」
「おい、静かにしろよ。見回りしてるぞ」
消灯時間は十時。
一時間程が過ぎている。勿論寝ていない生徒は山程いるだろうし、中にはこうやって部屋を抜けだす生徒も……。
当然先生方は見回っている。見つかればそれなりのお叱りは受ける筈だ。
「城河には言ってない~」
「なにっおまえっ」
「しー」
喧嘩腰になりそうな雰囲気を感じ、僕は人差し指を口の前に立てた。
樹はちっとまた舌打ちをしたが、黙って自分のベッドに腰掛けた。
「大くん~どうした~? 何かあった? メイさんは心配してるんじゃない?」
修学旅行前に聞いた話だと、大地と明もずっと同じ班で、最後の夜は僕らと同じで二人が同室の筈だった。
65
あなたにおすすめの小説
嫌いなあいつが気になって
水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!?
なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。
目に入るだけでムカつくあいつ。
そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。
同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。
正反対な二人の初めての恋愛。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
キミがいる
hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。
何が原因でイジメられていたかなんて分からない。
けれどずっと続いているイジメ。
だけどボクには親友の彼がいた。
明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。
彼のことを心から信じていたけれど…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる