はじまりの朝

さくら乃

文字の大きさ
84 / 185
第十七章

 1

しおりを挟む



 電車の心地好い振動。
 それから、なんだかすごく温かなものに包まれているような感覚。
 遠くで話し声が聞こえるような……。

「七星寝ちゃってる~」
「可愛い寝顔」
「しー。昨日あんまり寝れなくて、疲れてるんだろ。着くまで寝かせておけ」
「樹、やさしー」
「誰のせいだと思ってるんだ」
「え? 誰って」
「ごめん」

 大地が謝っている声で浮上。


(わ、いっくんに寄りかかって寝ちゃってたんだ)


 羽田空港から電車に乗って途中で乗り換えた時、二人ずつなら座れる席が空いていた。僕と樹、明と大地にわかれて座った。
 僕と樹は横並びに座り……途中から記憶がなくなった。
 どうやら前の席が空いて、大地と明が移動してきたらしい。


(なんか、気まずい。
 目、開けられない)

 
 そうなのだ。
 大地、それから明のせいで、僕は余り良く眠れてなかったんだ。



★ ★



 この辺りの公立高校の修学旅行は大抵沖縄で、僕らの通うT高校もやはりそうだ。
 十一月半ば。
 三泊四日で沖縄へ。
 平和記念日公園へ行き平和学習をし、民泊をしつつ民家家業の体験をした。三日目は班別自由行動で水族館、マリンスポーツなどを楽しむプランだった。

 中学の頃、自由に班を組むのは苦手だった。
 大概あとから足りない場所に仕方なしに入れて貰い、すごく気まずい気持ちになっていた。
 高校に入ってもそんな風になるだろうと思っていたが、一年の頃は大地に引っ張られ簡単にグループが完成していた。大地といることで気まずさもなかった。
 二年はどうだろう。
 意外なことに、学校行事に積極的ではなさそうな樹が、ささっと名指ししていた。その中に常に僕を入れてくれるのが嬉しい。
 新学期になって同じクラスになった時は、最悪避けられるかもとも思っていたのに。

 修学旅行は特に四日間を共にしなくてはならない。
 樹が僕以外に選んだメンバーは、自分に興味なさそうな男子だったのが、彼らしいと言えば彼らしい。
 樹と同じ班になるのは嬉しい。嬉しいが、何年振りかに一緒の部屋に寝泊まりすることに、何故か酷くどきどきしていた。
 初日のホテルは三人部屋、二日目は広い部屋に二グループ混ざって寝ていた。だから、余り意識せずにすんだ。
 しかし、三日目は樹と僕の二人になってしまった。


(男同士なのに、こんなにどきどきしちゃって。
 ほんと、可笑しい。
 ううん、きっと久しぶりだから。
 誰かと泊まるなんて。
 きっと、そう)


 そんなふうに自分に言い聞かせていたのに。
 大地のお陰で、全部ぶち壊された。


 今のこの状況をどう考えたらいいんだろう。
 想像を絶する展開になってしまった。  
 
 
    
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...