はじまりの朝

さくら乃

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第二十章

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「ななちゃん、大地のこと許してやって」
 気がつく大地の目からはぼろぼろ涙が零れていて、やっと僕は冷静になった。
「あんたが言うなよ」
 ぐしゅぐしゅっと鼻を啜る。
 大地の頭を撫でている明の顔は労るように少し和らいでいる。
「……大くん、ごめん」
 謝ると、大地が首をぶんぶんと横に振った。

「……樹が言いなりって……何か交換条件でも……」
 小さく呟いて一人首を捻る明。
「メイさん」
「えっと……」
 明は僕の顔をじっと見ながらゆっくりと話す。
 頭の中でいろいろと考えているようだ。
「ななちゃんも知ってるかもしれないけど、あの集団にはいろいろ悪い噂があって、それは事実だと思う。学校内外での喫煙とかリンチとか、万引きカツアゲ、クスリなんか。でも信じて欲しい──樹はそういうことは絶対しない」
 僕は黙って頷いた。
「それから……『龍惺さんのオンナ』のことは、どうやら『樹の彼女』にも関係してる……たぶん、『樹の彼女』が……」
 それは僕が樹に訊きたくて訊けなかったこと。
 

 
(でも……。
 僕はいったい何で訊きたかったんだろう。
 どんな答えを貰って、安心したかったんだろう)


 明の考えている通りだったとして、それが切っ掛けで二人がつき合い始めたというのなら。訊いたところで、それがはっきりするだけで、傷は深くなるばかりなのに。

「龍惺さんがこの件に本当に関わっているのかは謎だけど」
「そうなのか?」
 やっと大地の涙は止まったようだ。
「ああ。龍惺さんをリスペクトしてる奴らが勝手にやって、末端に指示がいってる可能性が高いかも。でも、そのほうがやっかいかな──BITTER SWEETの外にいた連中もたぶん、それだよ」
 ぽんっと肩を叩かれた。
「はい」
「樹の言う通り、BITTER SWEETにはしばらく行かないほうがいい。それから……樹のこともしばらく静観して」
「え……でも……」


 確かに今は近づくことも出来ないけど、このまま、、離れたくはない……。


「危険だから」
「俺もそう思うよ」
 大地も明に同意して大きく頷いた。
「何かあったらオレに言って。それなりに守ることはできるから」


『何かあったら俺に言って』
 樹から言われたことと同じ言葉を明が言う。
 樹の言葉が無効になってしまったような気がした。



 せっかくの大地の誕生日祝いだったのに、こんな話になってしまい、しかも当人を泣かせてしまった。
 それぞれ胸の内にはいろいろあると思うけ」ど、仕切り直してもう一度『おめでとう』から始めた。
 
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