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第二十三章
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しおりを挟む「俺のせいで怪我したことも、勝手に突き放したことも……皆許された気がして……またナナと一緒にいられるかな……なんて」
「僕も……いっくんがまた隣に立ってくれて……あと、その……弱味とかもちょっと見せてくれて……」
あの梅雨時の出来事を思い出す。ああやって弱いところを見せてくれるのは、子ども時代もなかったことだ。
でも、もしかしたら樹にとっては弱味を見せたことを後悔してるかも知れないという思いが、少し口を重くした。
「僕が怪我をした後のいっくんのこと、ちょっとわかって……また前みたいに一番の友だちに戻れるような感じがして…………」
(そう……せめて、それぞれの進路に別れる、高校にいる間だけでも……)
「でも、いっくんはまた……よくわからないうちに離れて行ってしまって……それはもしかしたら、僕らを守る為だったのかも知れない……と思ったけど……すごく悲しかった……」
彼はまた少し苦しそうな顔をした。
「もう一度ナナと……そう思っていた時に、荒れてた頃の自分のしてきたことが──跳ね返ってきた……また、ナナを傷つける、俺はお前から離れるべきなんだって……」
やっぱり……と思った。
階段のところで問い質した時に言ったことは、嘘だったんだと。
BITTER SWEETでの出来事の後、全く樹とは会えなくなり、それでもいつか僕らの元に戻った来て欲しいと願った。
「僕はね……いっくん、それでも今度は離れないって決めたんだ。あの頃の僕が、もう少し勇気を出してぶつかって話を聞いていれば、もしかしたらあんなふうにならなかったんじゃないかって。だから、いっくんが僕を避けて冷たくしても今度は諦めないって決めた! いっくんがラインを繋いだままにしてくれて、僕のメッセージも読んでくれてるんだってわかって…………そのことが僕の勇気にも繋がったんだ」
「ああ……」と溜息のような相づちが聞こえた。
「あれだけが、ナナとの繋がりだと思って……ほんとは、全部断ち切らなきゃいけないと思ったのに……出来なかった。お前からのメッセージ嬉しかった……何度返信しようと思ったか……」
(返信……しようと思ってくれてた……!)
ぽぽっと心の中が温かくなって、話している間に止まっていた涙がまたほろり。
「今回のことも……俺のせいだけど。俺の知らないところでナナが危険な目に合うって怖さを知って……だったら、やっぱり近くにいて守るべきかなって……今はそう思う」
「そうだよ……いっくん。前にも言ってくれた……俺が守るって言ってくれた……嬉しかった……でも、守ってくれなくても……ただ一緒にいたい」
もう涙の大洪水だ。
みっともないくらいに泣きじゃくる。
(でも言った! 言いたいことは全部)
すっと片腕が伸びてきて、僕の肩を包む。
そんなふうに動いたら痛いだろうに。
そして、僕の目許に何が触れた。
指先ではなく、もっと柔らかなもの。
樹の唇だと。
彼が唇で涙を吸いとっているのだと。
じわじわと気づいていく。
(え……いっくん……何……これ……)
キスという言葉が浮かんだ。
(え……違うよね……涙止めてくれるだけだよね……)
男友だち同士でこんな涙の止め方をするかどうかは、この際置いておく。
心臓がどきどきと高鳴った。
こつんと樹が僕の肩に額を乗せる。
「うん……ほんとはなぁ……」
独り言のように。
「ナナから離れた理由それだけじゃないんだよな……」
なんのことだろうと思っていると。
「『俺自身から守るため』」
潛もった声が聞こえた。
「あ、それ冴木さんから聞いた。『彼女がいるふり』の理由。え、あれって僕のこと? どういう意味?」
そう訊いてみたけど。
「う……ん。それはまたそのうちな……」
──そんなふうに言われたけど、それはまだ聞けてはいない。
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