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第二十四章
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しおりを挟む「あ……雪……」
朝起きて雨戸を開ける。
そこにはうっすら雪が積もっていた。
この辺りではほとんど雪は積もらない。
予報は確かに出ていたけど、絶対に降らないと思っていた。
(雪、いつの間に降ったんだろう)
昨夜寝る前までは降ってはいなかった。
眠っている間にしんしんと雪は降り積もってやがて止んだ。
僕は制服に着替えて、階段を下りた。
「おはよう」
と母の声。朝食の支度をしていた。
「おはよう──雪、降ったんだね」
「そうなのよ、まさか積もるなんてね」
僕はそのまま外に出た。
「わ……綺麗」
思わず口から零れてしまう。
花が咲いた河津桜にうっすら雪が積もり、それに朝焼けが映えていた。
河津桜の花のピンクも、白い雪も赤に彩られている。
(こんなの初めてみた……)
河津桜が咲いて、ほとんど降らない雪が積もり、そしてこの赤い朝日を受けるのが実はこの時間のほんの数分の間だけ。
そう、まさに奇跡の瞬間だった。
「そうだ! 写真写真。急がないと撮れなくなる」
慌てて入ろうとした瞬間。
「ナナ」
僕の名前を呼ぶ声が僕を引き留めた。
(この声は)
どくんと胸が高鳴った。
振り返る。
道路を挟んだ向こう側の門の前から、小走りに渡って来る。
「いっくん」
お互い歩み寄り、フェンス越しに向かい合う。
「ナナ、卒業おめでとう」
──樹は、私服だった。
そう、樹は僕らと一緒に卒業出来なかったのだ。
★ ★
樹は二週間程経って退院した。
退院するまでの間僕は毎日彼を見舞った。
「受験生だろう、そんなに毎日来なくていいから」
行く度に樹にはそう言われた。
そして、そう言われる度に僕も言い返す。
「家帰ってからちゃんと勉強してるよ」
「ナナがそう言うなら、そうなんだろうけど」
樹の言葉や声音が前より少し柔らかく感じられるような気がした。
「いっくんは、大学決めたの?」
「俺は……」
ちょっと眉根を寄せる。
「卒業できるのかな……」
独り言のように呟いた。
退院後数日学校を休んだが、肩を吊ったまま登校を始めた。
もう少し休んでたら? という僕らの意見に、
「卒業まであと少しだろ。お前らとなるべく過ごしたいんだ」
──樹は少し変わった。
二人の間もあの時からだいぶ屈託がなくなった。
すっかり昔と同じに。と言うわけではないけど。
何故なら、これまでの過程の結果は、やはりあのまま一緒にいた場合とは違ってるのだろうから。
僕が怪我もせず、樹とも離れず、何事もなかったとしたら、樹は今とは少し違う成長の仕方をしたのだと思う。
(そうだな……例えば、大くんのように明るく人気もの……みたいな。大くんは可愛い系だけど、いっくんならイケメンで明るくて、クラス委員なんかやっているかも)
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