はじまりの朝

さくら乃

文字の大きさ
133 / 185
第二十四章

 2

しおりを挟む

 だけど。
 僕は今の樹が好きなんだと思う。
 いろいろあって、悩んで。
 それは少し──かなり、大変なこともあったし、下手をしたらもう二度と会うこともなかったかも知れないんだけど。
 だからこそ。
 何事もなく成長していった樹のことは確かに、想像はするけど。でもそれは結局は想像だけで生身の樹ではないのだ。
 僕にとっての樹は、今の樹でしかない。



 樹が卒業出来ないことは、実はもう退院した頃にはわかっていたのだ。
 それでも彼は腐ることなく登校し授業に取り組んだ。そして、前と同様に昼休みを僕らと過ごした。離れていた時間を取り戻すように。

 戻って来た彼は、前と同じようで何処か違っていた。素っ気ない口調に思えて前より柔らかい。前よりも積極的に僕らと関わろうとしている。大地も明も気がついていているだろう。気づいているが、敢えて口にはせずに、たぶん心の中で喜んでいるのではないだろうか。


 受験まではやはり余り遊びに出かけることはできなかったが、クリスマスはこれまでの二年間同様『BITTER SWEET』で明の誕生日込でお祝いをした。バイトを辞めた樹も今回は初めから参加。
 そして、以来初めてマスターと顔を合わせた樹は、まず深々と頭を下げたのだ。
「気にするな」とマスターは言い、「怪我良くなったらまた頼むよ」の言葉に樹は目を潤ませながら何度も頷いた。


 一番最初に良い知らせを持って来たのは大地だった。
 スポーツ推薦で、陸上の強い憧れの大学に合格。クリスマス前の発表だったので、明のバースデー&クリスマスのお祝いに、大地の合格祝いも加わった。
 明は一般入試を受けた。
 大地と同じ大学のスポーツ医療学科。受験したのそれ一校だと言う自信が明らしい。前に冗談ぽく言っていたことは、冗談でも何でもなかった。
大地は『ついてくるなよ~』と漏らしていたけど、明が真剣に考えた進路なのだと思う。
 
 そして、僕。

 僕は結局一般入試を選んだ。慣らす為に模試を幾つも受け、数か所の大学を受験した。
 樹がくれたお守りを胸に受けた大学は全大学に合格を貰い、それは僕の自信となった。

 皆の行き先が決まった二月からは、過ぎて行く日々を惜しむように四人で楽しんだ。
 


 少しも前進しようとしなかった中学時代。
 高校生活は、いろいろあって。
 大変だったり、辛いことや切ないことも多かった。
 でも、僕も随分と成長したと思う。
 成長しなければ、と思うことができたのだ。


 そして、僕らは今日、高校を卒業する。
 樹が一緒でなかったことは、酷く残念だけど。
 でも、彼は、もう大丈夫なのだ。
 自分の進むべき方向はきちんと見定めている。

    
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

処理中です...