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番外編〜はじまりの裏側で〜
エピソード9
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丁度目が覚めた時、呼び鈴が聞こえた。
いつもより天井が高い。それもその筈ベッドは女に明渡し、俺は床で寝ていた。
昨日は俺の誕生日で、昔ちょっとだけつき合いのあった女が何故かプレゼントを渡しに来た。父親が俺の誕生日を祝う筈もなく、しかも昨日は外泊したので女はそのまま泊まって行った。
別に好きだとかそういうわけじゃないが、そういう流れになったとしても俺は拒まなかった。
下はハーフパンツを穿いていたものの上半身裸。流石にその格好で出るのはどうかと思い、その辺に放ってあったTシャツを着た。
どうせセールスか何かだろう。そんなふうに思って扉を開けた。
しかし。
「誰?」と億劫な気持ちが顕になった声に答えたのは、
「いっくん……」
七星のか細い声だった。
「ナナ……」
(ナナ? なんでウチに)
驚きと同時に女と過ごしてこんな時間まで寝ていたことに気まずさを感じた。とにかく七星を早く帰したかった。
それなのに三和土に置いてある女の靴を見られた。母親が帰ってきたのだと勘違いされたが、「そうだ」と誤魔化すことも何故か出来なかった。
バタンッと激しく扉を閉めた。勿論七星が悪いわけじゃない。
俺の中の七星はつい最近まで小六の頃で止まっていた。一昨日で十六歳になった七星を見ても性的なことを知らずに純粋培養されてきたようにしか思えない。
(というか、『彼女』がいるとかいたとか想像もしたくない)
乱れた自分に気づいて欲しくない。早く帰って欲しくてかなり冷たい言葉を吐いた。
再会してから俺のことは避けてたはず。
なのに何故か七星は俺に誕生日プレゼントを渡して来た。しかも、今まで渡せなかった分もだと言う。
(なに、そんな可愛いことしてくれちゃってるんだ)
そう思っても顔には出せない。俺の冷たい態度に泣きそうな顔のに、プレゼントを渡す手も震えているのに。声だけは明るくて余計切ない。でも優しくしてあげられないんだ。
(俺には近づかないほうがいいんだ……)
そして、彼は言った。
「いっくん! 僕、こんな傷全然気にしてないんだ! たから、いっくんも気にしないで!」
そうだ。
一学期の終業式の日に俺は言ったんだ、『他の奴になんか見せるな』と。
俺が原因で出来た傷を俺が気にしている。自分は気にしていないから俺も気にするな。
七星はそう言いたいのだろうか。
(違う、あれはただの嫉妬だ。カナなんかに秘密を打ち明けて)
明の腹を殴っただけじゃ収まらなかっただけだ。それから俺のことを『城河』って呼んだことにもむっとした。自分は遠ざけてるくせに。
俺は俺自身にまた腹を立てた。
(ナナ、もう俺に近づくな)
「お前、本当は気にしてるだろ、その傷のことを」
俺は出来る限り冷たく言う。七星が二度と俺に近づきたがらないように。
「もう、俺にプレゼントなんか用意するな」
俺はそう言い捨ててドア閉めた。
ドアに寄りかかり七星がまだすぐ傍にいるのを感じていた。
(ごめん……ナナ……)
俺はプレゼントの詰まった紙袋をぎゅっと抱き締めた。
いつもより天井が高い。それもその筈ベッドは女に明渡し、俺は床で寝ていた。
昨日は俺の誕生日で、昔ちょっとだけつき合いのあった女が何故かプレゼントを渡しに来た。父親が俺の誕生日を祝う筈もなく、しかも昨日は外泊したので女はそのまま泊まって行った。
別に好きだとかそういうわけじゃないが、そういう流れになったとしても俺は拒まなかった。
下はハーフパンツを穿いていたものの上半身裸。流石にその格好で出るのはどうかと思い、その辺に放ってあったTシャツを着た。
どうせセールスか何かだろう。そんなふうに思って扉を開けた。
しかし。
「誰?」と億劫な気持ちが顕になった声に答えたのは、
「いっくん……」
七星のか細い声だった。
「ナナ……」
(ナナ? なんでウチに)
驚きと同時に女と過ごしてこんな時間まで寝ていたことに気まずさを感じた。とにかく七星を早く帰したかった。
それなのに三和土に置いてある女の靴を見られた。母親が帰ってきたのだと勘違いされたが、「そうだ」と誤魔化すことも何故か出来なかった。
バタンッと激しく扉を閉めた。勿論七星が悪いわけじゃない。
俺の中の七星はつい最近まで小六の頃で止まっていた。一昨日で十六歳になった七星を見ても性的なことを知らずに純粋培養されてきたようにしか思えない。
(というか、『彼女』がいるとかいたとか想像もしたくない)
乱れた自分に気づいて欲しくない。早く帰って欲しくてかなり冷たい言葉を吐いた。
再会してから俺のことは避けてたはず。
なのに何故か七星は俺に誕生日プレゼントを渡して来た。しかも、今まで渡せなかった分もだと言う。
(なに、そんな可愛いことしてくれちゃってるんだ)
そう思っても顔には出せない。俺の冷たい態度に泣きそうな顔のに、プレゼントを渡す手も震えているのに。声だけは明るくて余計切ない。でも優しくしてあげられないんだ。
(俺には近づかないほうがいいんだ……)
そして、彼は言った。
「いっくん! 僕、こんな傷全然気にしてないんだ! たから、いっくんも気にしないで!」
そうだ。
一学期の終業式の日に俺は言ったんだ、『他の奴になんか見せるな』と。
俺が原因で出来た傷を俺が気にしている。自分は気にしていないから俺も気にするな。
七星はそう言いたいのだろうか。
(違う、あれはただの嫉妬だ。カナなんかに秘密を打ち明けて)
明の腹を殴っただけじゃ収まらなかっただけだ。それから俺のことを『城河』って呼んだことにもむっとした。自分は遠ざけてるくせに。
俺は俺自身にまた腹を立てた。
(ナナ、もう俺に近づくな)
「お前、本当は気にしてるだろ、その傷のことを」
俺は出来る限り冷たく言う。七星が二度と俺に近づきたがらないように。
「もう、俺にプレゼントなんか用意するな」
俺はそう言い捨ててドア閉めた。
ドアに寄りかかり七星がまだすぐ傍にいるのを感じていた。
(ごめん……ナナ……)
俺はプレゼントの詰まった紙袋をぎゅっと抱き締めた。
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