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「あれ、ハルくん」
聞き覚えのある声がして、詩雨さんの後ろからひょいっと顔を覗かせる。
カイト・ウェーバー。
嫌な予感通りだったことに心底がっくりとする。
「同居人ってキミだったんだね」
カイトのことはスルーして。
「詩雨さん」
(なんでこいつがいるんだーっっ)
本当は大声で叫びたかった。
「ああ。映画の撮影、東京でするだろ? それでうちにーって話になって」
(なんでそうなる。ホテルでも取ればいいだろっ。ハリウッド・スター様はっ)
しかしそんなことは言える筈もなく。
「だめ……だったか?」
眉を下げ、少し不安そうな顔。
(かばいい……いやいや、そうではなく)
「いえ。詩雨さんの決めたことなら」
一生懸命口角を上げてみせるが、ちゃんと微笑んでいるように見えるだろうか。
詩雨さんの顔が和らぎ、恐らく成功したのだろうということがわかる。
しかし俺の気持ちは収まらない。
カイトのことは完全にスルーしたまま、
「……風呂入るね」
と言って一旦着替えを取るべく、俺たちの部屋に入った。
いろいろもやもやしながら風呂に入っていたら、だいぶ長湯になってしまった。
部屋には誰もいなかった。電気が点いているのは、俺が点けっぱなしだったから。彼はまだゲストルームにいるのだろう。
俺は仕事の疲れもあり、更にあいつの登場で疲れが増し、何もする気が起きなかった。そのままベッドの中に潜り込んだ。
この一週間詩雨さんのいないひんやりとしたベッドで眠っていた。今日は温かい彼を抱きしめながら眠れると思ったのに。
(まさか、あのままあっちに……)
そんなあり得ない不安で眠れる筈もなかった。
暫くしてドアが開く。そして、鍵をかける音、電気を消す音が聞こえた。
暗闇の中に詩雨さんの気配がする。彼は躊躇なくベッドに近づき、そっと上掛けを上げて潜り込んでくる。
「……遙人……寝てるの……?」
小さく問いかけられる。
本当は今すぐガバッと起き上がって、ぎゅうっとしたい。しかし、いろいろと複雑な気持ちが邪魔をして、寝た振りをした。
「……ごめんな……一週間振りに会ったのに」
俺がふて寝していると思ったのだろう。いつもなら詩雨さんのほうを向いている俺が背を向けているからだ。そのスタイルは詩雨さんが後から寝る場合も同様だ。
彼はぴったりと背に寄り添って来る。俺の腹に詩雨さんの細くてしなやかな腕が巻きつく。
軽く抱きしめられた。
聞き覚えのある声がして、詩雨さんの後ろからひょいっと顔を覗かせる。
カイト・ウェーバー。
嫌な予感通りだったことに心底がっくりとする。
「同居人ってキミだったんだね」
カイトのことはスルーして。
「詩雨さん」
(なんでこいつがいるんだーっっ)
本当は大声で叫びたかった。
「ああ。映画の撮影、東京でするだろ? それでうちにーって話になって」
(なんでそうなる。ホテルでも取ればいいだろっ。ハリウッド・スター様はっ)
しかしそんなことは言える筈もなく。
「だめ……だったか?」
眉を下げ、少し不安そうな顔。
(かばいい……いやいや、そうではなく)
「いえ。詩雨さんの決めたことなら」
一生懸命口角を上げてみせるが、ちゃんと微笑んでいるように見えるだろうか。
詩雨さんの顔が和らぎ、恐らく成功したのだろうということがわかる。
しかし俺の気持ちは収まらない。
カイトのことは完全にスルーしたまま、
「……風呂入るね」
と言って一旦着替えを取るべく、俺たちの部屋に入った。
いろいろもやもやしながら風呂に入っていたら、だいぶ長湯になってしまった。
部屋には誰もいなかった。電気が点いているのは、俺が点けっぱなしだったから。彼はまだゲストルームにいるのだろう。
俺は仕事の疲れもあり、更にあいつの登場で疲れが増し、何もする気が起きなかった。そのままベッドの中に潜り込んだ。
この一週間詩雨さんのいないひんやりとしたベッドで眠っていた。今日は温かい彼を抱きしめながら眠れると思ったのに。
(まさか、あのままあっちに……)
そんなあり得ない不安で眠れる筈もなかった。
暫くしてドアが開く。そして、鍵をかける音、電気を消す音が聞こえた。
暗闇の中に詩雨さんの気配がする。彼は躊躇なくベッドに近づき、そっと上掛けを上げて潜り込んでくる。
「……遙人……寝てるの……?」
小さく問いかけられる。
本当は今すぐガバッと起き上がって、ぎゅうっとしたい。しかし、いろいろと複雑な気持ちが邪魔をして、寝た振りをした。
「……ごめんな……一週間振りに会ったのに」
俺がふて寝していると思ったのだろう。いつもなら詩雨さんのほうを向いている俺が背を向けているからだ。そのスタイルは詩雨さんが後から寝る場合も同様だ。
彼はぴったりと背に寄り添って来る。俺の腹に詩雨さんの細くてしなやかな腕が巻きつく。
軽く抱きしめられた。
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