10 / 25
10
しおりを挟む
(ああ、もう。何可愛いことしてくれちゃってんの)
俺はさっきまでの苛立ちを忘れ、その腕の中で反転して抱きしめ返した。
ぎゅっと力を込めて。
「ハ、ハルっ。起きてたのか」
二人の時は『遙人』呼びだが、吃驚したり気持ちが昂ったりすると『ハル』に逆戻りする。
驚いている詩雨さんの顔を覗き込み、額をこつんと合わせた。
「……眠れなかった。カイトに嫉妬して」
「嫉妬? まさか。親戚だよ」
「――でもあいつ。詩雨さんと結婚の約束したって」
自分でも情けないことを言っているとは思う。
目の前の綺麗な顔が可笑しそうに笑う。
「あんなの子どもの時のことじゃないか。海だって本気じゃないよ」
(それが……本気なんだよなぁ、あいつ)
俺にはそれがわかる。でも詩雨さんには言いたくない。詩雨さんの心の何かが変わってしまうのが嫌だから。
「それにこんなオジサン。海だって、若い女のコのほうがいいだろ」
「詩雨さんはオジサンなんかじゃない。……綺麗だ……とても」
「遙人……」
後ろ頭に手を回して髪を撫でる。何の取っかかりもなく、するっと梳けた。もう既に風呂には入っていたのだろう。さすがに寝る前にはリボンもつけない。
いつでも俺の与えたもので詩雨さん自身を縛っておきたいが仕方がない。
それに。何もない綺麗な髪を撫でるのも好きだ。
髪を撫でながら徐に顔を傾け、その艶っぽい唇を自分のそれで塞いだ。充分にその柔らかさを堪能してから、舌先で割れ目を突つく。そこはうっすらと開いて、俺を迎え入れた。舌先で詩雨さんの舌を絡めとると、あっという間に激しくなる。
お互いを抱きしめる腕に力が籠る。上掛けの中では足も絡め合って、二人の身体は軽い反応を示していた。
俺は唇を離し、詩雨さんの弱い部分を攻めた。首筋を舌で舐めあげる。
「ん……」
小さな声が漏れると俺はもう我慢できなくなる。
そのまま耳まで舌を這わせ、耳朶を食み、舌を耳の中に入れる。
「あ……ん」
更に吐息が甘くなる。
「ね……詩雨さん……いい? このまま」
言葉と共に熱い息を吹き込んだ。
「遙人……」
艶を帯びた声で名を呼ばれ――。
「だめだっ」
と拒否られた。
「海がいるだろ」
「大丈夫。静かにやる」
「静かになんかできると思うか?!」
「なんとか?」
そう言ってみたものの、俺はともかく詩雨さんは怪しい。押さえ切れなくなって零れる声が頭の中で響いてきた。
「カイトだってもう寝るだろ」
そんな問答をしているうちに俺も冷静になってきて、甘い雰囲気も薄れる。
「そんなのわかんないだろっ! 傍に誰かいるのなんて、ぜったいムリ!」
「りょーかい」
ふっと小さく息を吐く。それから、ちゅっと音を立てて唇にキスをした。
俺はさっきまでの苛立ちを忘れ、その腕の中で反転して抱きしめ返した。
ぎゅっと力を込めて。
「ハ、ハルっ。起きてたのか」
二人の時は『遙人』呼びだが、吃驚したり気持ちが昂ったりすると『ハル』に逆戻りする。
驚いている詩雨さんの顔を覗き込み、額をこつんと合わせた。
「……眠れなかった。カイトに嫉妬して」
「嫉妬? まさか。親戚だよ」
「――でもあいつ。詩雨さんと結婚の約束したって」
自分でも情けないことを言っているとは思う。
目の前の綺麗な顔が可笑しそうに笑う。
「あんなの子どもの時のことじゃないか。海だって本気じゃないよ」
(それが……本気なんだよなぁ、あいつ)
俺にはそれがわかる。でも詩雨さんには言いたくない。詩雨さんの心の何かが変わってしまうのが嫌だから。
「それにこんなオジサン。海だって、若い女のコのほうがいいだろ」
「詩雨さんはオジサンなんかじゃない。……綺麗だ……とても」
「遙人……」
後ろ頭に手を回して髪を撫でる。何の取っかかりもなく、するっと梳けた。もう既に風呂には入っていたのだろう。さすがに寝る前にはリボンもつけない。
いつでも俺の与えたもので詩雨さん自身を縛っておきたいが仕方がない。
それに。何もない綺麗な髪を撫でるのも好きだ。
髪を撫でながら徐に顔を傾け、その艶っぽい唇を自分のそれで塞いだ。充分にその柔らかさを堪能してから、舌先で割れ目を突つく。そこはうっすらと開いて、俺を迎え入れた。舌先で詩雨さんの舌を絡めとると、あっという間に激しくなる。
お互いを抱きしめる腕に力が籠る。上掛けの中では足も絡め合って、二人の身体は軽い反応を示していた。
俺は唇を離し、詩雨さんの弱い部分を攻めた。首筋を舌で舐めあげる。
「ん……」
小さな声が漏れると俺はもう我慢できなくなる。
そのまま耳まで舌を這わせ、耳朶を食み、舌を耳の中に入れる。
「あ……ん」
更に吐息が甘くなる。
「ね……詩雨さん……いい? このまま」
言葉と共に熱い息を吹き込んだ。
「遙人……」
艶を帯びた声で名を呼ばれ――。
「だめだっ」
と拒否られた。
「海がいるだろ」
「大丈夫。静かにやる」
「静かになんかできると思うか?!」
「なんとか?」
そう言ってみたものの、俺はともかく詩雨さんは怪しい。押さえ切れなくなって零れる声が頭の中で響いてきた。
「カイトだってもう寝るだろ」
そんな問答をしているうちに俺も冷静になってきて、甘い雰囲気も薄れる。
「そんなのわかんないだろっ! 傍に誰かいるのなんて、ぜったいムリ!」
「りょーかい」
ふっと小さく息を吐く。それから、ちゅっと音を立てて唇にキスをした。
20
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募するお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる