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しおりを挟む冬馬の視線は、ふと何かを見つけたように、オレたちの後方に移動した。そして、脇をすり抜け、商品の置いてある場所で立ち止まった。そこから、一本の色鮮やかな紅色の組紐を手に取ると、今度はオレの後ろに立った。
( な……なに? )
いったい何をするのか、皆が見守っている。
オレは頭の近くに彼の手の気配を感じた。冬馬はするりと両耳の脇から髪を掬い取り、手にしていた紐で結ぶ。そして、横からオレの顔を覗き込んだ。
「よく、似おうとる。お前、かぁいらしいな。髪も瞳も、すごく綺麗だ」
じっとオレの顔を見ている。
「うん」
ひとり納得したように頷く。
「お前、大人になったら ── 俺と結婚しろ」
その場の全員がのけぞるようなセリフを吐いた。しかも、かなり上から目線だ。
「!!!!!」
オレの眼から一度引っ込んだ涙が、ドッと吹きだしてきた。
「わあ~~んっっ」
ここに来てまだ一度も喋っていないオレの、渾身の叫びだった。
母はオレの背中を抱え込み、「ごめんね、また来るわ」と言って、足早に店から立ち去った。たぶん、母はもう一度ここに来ることになるだろう。何しろこの日引き取る予定だった、入学式の為にあつらえた着物を貰い損ねたのだから。
オレの方はと言えば。
( からかわれた──っっ )
家に帰ってからもずっと自分の部屋に引き籠りぐずぐず泣いていた。
しかし、それがけしてからかったのではないことが、ひと月後に判明したのだった。
**
四月。入学式の日。
カンナ音楽院の新入生も、聖愛学園初等部と一緒に入学式が行われる。
オレと冬馬が再び出会ったのは、この入学式後のことだった。正門付近では、式を終えた児童と保護者で溢れかえっていた。そんな中でオレと冬馬の両親は偶然出会い、話に花を咲かせ始める。
オレは冬馬と顔を合わすのが気まずく、わざと別方向を見ていた。しかし、冬馬がじっと見ていることは、ビシビシッ感じていた。
そして、彼はおもむろに口を開く。
「お前 ── 男だったのか」
「えっ」
びっくりして振り返る。
「ボクのこと、女のコだと思ってたの?」
「ああ」
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