28 / 123
─ 27
しおりを挟む多額の授業料と寄付金が必要な聖愛学園は、上流階級の子女しか通えない。その為敷地の割には生徒数は少なく、初等部に入学して六年も経てば、同学年の生徒の顔を見たことがあるかないかくらいの判断はできる。
聖愛に編入してくる者は稀だが、あの少年はオレがいない間に編入してきたのかも知れない。
たったひと月の間に、あんなに親しげに?
しかし、オレがそうだったように、冬馬が認めた人間なら急速に親密になることもありうる。
( でも……これは。なんていうか…… )
『一枚の絵画』── そんな言葉が脳裏に浮かぶ。
そう。煌めく緑のなかにふたりがいるその風景は、まるで完璧な一枚の絵画のようで、けして他が入ることは許されない。
そんな風に思えて、オレは耐えられなくなり後退った。
( オレといる時と、まるで雰囲気が違う…… )
**
それから三日間、再び日本を離れるまで、学校側には帰国したことを知らせず、ふたりの様子を見ていた。
( これじゃあ、ストーカーだな。オレ、我ながらキモい )
オレがストーカー行為をしている時、偶然桜宮夏生に出くわした。昼休み、食堂の窓からふたりを覗いていた時、ちょんちょんと肩を叩かれた。
「あれ、柑柰くん。戻ってたんだ?先生には六月くらいからって聞いてたけど」
「あ、桜宮。うん……ちょっとだけ帰って来たんだ。明日にはもう戻るから……先生と、それから、橘にも内緒な」
オレは自分の口の前に人差し指を立てた。
「うん?」
桜宮夏生とは初等部の半分をクラスメイトとして過ごした。まだ友人と呼べる程ではないが、冬馬以外ではそこそこ話をする方かも知れない。
彼と冬馬は特に親しくはない。顔を知っていて、あとはオレと仲が良いくらいの認識だろう。それなのにこんなお願いをされるのを少し不思議に思っているに違いない。そんな顔をしている。
冬馬には絶対に知られたくない。だから、念の為だ。
オレは、ちょっと……と言って、彼を食堂から少し離れたところに連れて行った。そして、冬馬と一緒にいる少年のことについて訊ねてみた。
名前は、石蕗秋穂。冬馬のクラスに編入してきた。冬馬が教室で倒れた彼を横抱きにして廊下を歩いていたことは、中等部ではかなりの噂になったということだ。
その後から、ふたりが一緒にいることが多く見られ、まるで冬馬が秋穂を守っているかのようだ ── というのは、夏生の見解だ。
「ありがとう。また帰って来たらな」
夏生に礼を言い、オレはまたふたりを追った。
0
あなたにおすすめの小説
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
双葉の恋 -crossroads of fate-
真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。
いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。
しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。
営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。
僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。
誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。
それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった──
※これは、フィクションです。
想像で描かれたものであり、現実とは異なります。
**
旧概要
バイト先の喫茶店にいつも来る
スーツ姿の気になる彼。
僕をこの道に引き込んでおきながら
結婚してしまった元彼。
その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。
僕たちの行く末は、なんと、お題次第!?
(お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を)
*ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成)
もしご興味がありましたら、見てやって下さい。
あるアプリでお題小説チャレンジをしています
毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります
その中で生まれたお話
何だか勿体ないので上げる事にしました
見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません…
毎日更新出来るように頑張ります!
注:タイトルにあるのがお題です
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
有能課長のあり得ない秘密
みなみ ゆうき
BL
地方の支社から本社の有能課長のプロジェクトチームに配属された男は、ある日ミーティングルームで課長のとんでもない姿を目撃してしまう。
しかもそれを見てしまったことが課長にバレて、何故か男のほうが弱味を握られたかのようにいいなりになるはめに……。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる