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しおりを挟むエントランスでインターフォンを押し、開けて貰う。エレベーターで七階へ。
( 久々にふたりきりだ )
あの日 ── 初めて秋穂を紹介された日。その後数回友だちヅラでふたりの間に割り込んだ。ふたりの間を邪魔したいというのが本音だが、結果的に自分が傷ついただけのような気がする。
だから、今日はかなり浮かれている。誕生日を忘れずにいてくれたことだけでも嬉しいのに、初めて冬馬のマンションで祝って貰える。
エレベーターを降りて、冬馬の部屋まで足も軽やかで鼻歌まで交じる。インターフォンを鳴らすと、すぐに冬馬が顔を出した。
「迷わなかったか?」
「全然大丈夫だった。ほんと、聖愛のすぐ近くなんだね」
オレは制服のまま直行だったが、冬馬はもうTシャツとジーンズという格好だった。オレを入れる為に大きな身体を少しずらす。
── オレは、本当に、浮かれすぎていた。
( ああ、やっぱり、そうなるんだね )
「秋穂。来てたんだ」
ずらした身体の向こうから、秋穂の小さな姿が現れた。控え目に微笑んでいる。
オレは少し刺々しい言い方だったかなと思い、誤魔化すように満面の笑みを浮かべた。
「来てくれたんだね、サンキュー」
「詩雨くん、誕生日おめでとう」
オレにまだ慣れていない彼は、おずおずとそう言った。
広いリビングに案内される。ローテーブルの上には豪勢な料理が並んでいる。冬馬がオレの為に作ってくれた。ケーキは家政婦さんに頼んで買ってきて貰ったらしい。
嬉しい筈なのに、絶対美味しい筈なのに、少しも味がしなかった。
テーブルを挟んで冬馬と秋穂が座っている。行動や会話で、秋穂がここに来たのが初めてではないことが解ってしまう。
そんなふたりを見ながらテンションを上げなければならない時間は、三時間程続いた。
七時過ぎに切り上げ、学内の寮に住んでいる秋穂をオレたちは送り届けた。
「じゃあ、オレも」
部屋を出る時に鞄を持ってきていた。今カンナに行けば、家族の誰かが残っていて、車で一緒に帰れる筈だ。とにかく疲れていたので、電車は使いたくなかった。
じゃあ、と手を上げようとして、その手首を冬馬に掴まれる。
「お前は泊まって行けよ」
「へっ?」
間抜けな声が出てしまう。オレはきっと変な顔をしているだろう。冬馬からそう言われるとは思ってもみなかった。
( 秋穂じゃなくて、オレに…… )
「なんて顔してるんだよ。明日休みだからいいだろ」
明日は土曜日。聖愛は休みだ。カンナは土曜日の登校は自分で決めていい。
「最近ふたりで話してないし。久しぶりにお前と一緒にいたい」
それはおまえたちがいつも一緒だから ── そんな複雑な気持ちは口には出さなかった。多分冬馬には自覚がない。
複雑だが、やっぱり嬉しかった。
「あ、でも、オレ何も準備してない」
にやけそうになるのを誤魔化す。
「そんなの、俺の貸すから問題ない。家には連絡しておけよ」
「うん」
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