13 / 40
13
しおりを挟む
「ただ、彼は外から来た人間で、村の者はやはり余所者を敬遠するところがある。だからイオは村の外れに家を作った」
「母さんは……なんで……」
なんで……いない……。
「リリカは元々身体が弱くて……その」
トールの肩から手を離した。言いにくそうに、視線も反らす。
「お前を産んでからは、寝たり起きたりを繰り返すような感じだった。だから、お前の面倒はほぼイオが見ていたよ」
「ボクが産まれたせいで母さんは……」
だから、イオは母さんの話をしないのだろうか。
ボクが母さんを……。
トールの心を読んだかのように。
「リリカが死んだのは、お前のせいじゃなく。そうだな……イオが大怪我をして生死をさ迷ったから……かな。さっきリィナが喰い殺されたって言ってたが……まぁ、実際には助かったわけだが、恐らく森の獣に襲われたんだろう、そんな傷痕だった」
獣に襲われたイオ……。
血が。
また、脳裏に浮かぶ。見たことがないはずの映像。
血に染まった……何か。
獣の影……。
あれは……?
「イオは峠を越したが、看病していたリリカの方が倒れてしまい、そのまま……。リィナとリリカは仲の良い姉妹だったし、イオと一緒になるのは反対だった。だから、リィナがイオを良く思わないのも解らないではないが。なんであんなこと言ってるのか……」
トールの蒼白な顔を痛ましげに見る。肩を抱いて、家のなかに入るよう促す。
「すまないな、トール。一緒にいてやれなくて。…………そのうち、イオも帰ってくるだろう。家で待ってるといい」
トールの頭を元気づけるように一回撫で、カイトは背を向けた。
そして、扉を閉める間際に。
「──イオは怪我をした後、少し印象が変わった。村の者を避けるようになり、“悪魔の谷”に入り込んで狩りをするようになった……そのせいか、村のみんなも……」
パタンと静かに扉は閉められた。
イオは……変わった……。
怪我をした後……。
「あ……血……」
独りになって、ふと気づく。
服のあちこちに擦れたような、紅い染み。伯父か伯母の服に付いていた血が移ったのだろう。
途端、頭がずきずきと痛み始め、ぐにゃりと見るもの全てが歪んだ。
獣に裂かれた、血塗れの女の子。
獣に裂かれた、イオ。
交錯する二つの映像。
イオの姿が──より鮮明に。まるで、見たことがあるかのように脳裏に浮かび上がる。
服と言わず、肉と言わず、あちこち引き裂かれ、全身血に染まった男。
金色の髪は地に広がり、両の青い瞳は恐怖に見開かれてる。
それから。
銀色の獣。
いた……父さんの傍に……父さんをその爪と牙で……っ!
眼の前が真っ暗になり、身体が傾いでいくのをトールは感じた。
「母さんは……なんで……」
なんで……いない……。
「リリカは元々身体が弱くて……その」
トールの肩から手を離した。言いにくそうに、視線も反らす。
「お前を産んでからは、寝たり起きたりを繰り返すような感じだった。だから、お前の面倒はほぼイオが見ていたよ」
「ボクが産まれたせいで母さんは……」
だから、イオは母さんの話をしないのだろうか。
ボクが母さんを……。
トールの心を読んだかのように。
「リリカが死んだのは、お前のせいじゃなく。そうだな……イオが大怪我をして生死をさ迷ったから……かな。さっきリィナが喰い殺されたって言ってたが……まぁ、実際には助かったわけだが、恐らく森の獣に襲われたんだろう、そんな傷痕だった」
獣に襲われたイオ……。
血が。
また、脳裏に浮かぶ。見たことがないはずの映像。
血に染まった……何か。
獣の影……。
あれは……?
「イオは峠を越したが、看病していたリリカの方が倒れてしまい、そのまま……。リィナとリリカは仲の良い姉妹だったし、イオと一緒になるのは反対だった。だから、リィナがイオを良く思わないのも解らないではないが。なんであんなこと言ってるのか……」
トールの蒼白な顔を痛ましげに見る。肩を抱いて、家のなかに入るよう促す。
「すまないな、トール。一緒にいてやれなくて。…………そのうち、イオも帰ってくるだろう。家で待ってるといい」
トールの頭を元気づけるように一回撫で、カイトは背を向けた。
そして、扉を閉める間際に。
「──イオは怪我をした後、少し印象が変わった。村の者を避けるようになり、“悪魔の谷”に入り込んで狩りをするようになった……そのせいか、村のみんなも……」
パタンと静かに扉は閉められた。
イオは……変わった……。
怪我をした後……。
「あ……血……」
独りになって、ふと気づく。
服のあちこちに擦れたような、紅い染み。伯父か伯母の服に付いていた血が移ったのだろう。
途端、頭がずきずきと痛み始め、ぐにゃりと見るもの全てが歪んだ。
獣に裂かれた、血塗れの女の子。
獣に裂かれた、イオ。
交錯する二つの映像。
イオの姿が──より鮮明に。まるで、見たことがあるかのように脳裏に浮かび上がる。
服と言わず、肉と言わず、あちこち引き裂かれ、全身血に染まった男。
金色の髪は地に広がり、両の青い瞳は恐怖に見開かれてる。
それから。
銀色の獣。
いた……父さんの傍に……父さんをその爪と牙で……っ!
眼の前が真っ暗になり、身体が傾いでいくのをトールは感じた。
3
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる