白銀(ぎん)のたてがみ

さくら乃

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 何度も何度も男の子種も受け入れている。
 それは溢れかえる程で、彼の太腿を濡らしていた。
 その香りは、何故か不思議と瑠璃の花の香りにも似ていた。

 トールはもう喘ぎ疲れ、声も掠れて出ない程だった。
 気持ちの良い場所を突かれこすられ、自分自身も何度か達していた。
 最初は戸惑っていた肉体からだも、快楽に溺れ、変化する。自分の内から去って行こうとするイオの昂りを、きゅっと締めつけ逃すまいとする。
 その度にイオが「可愛い」と口づけを施す。


 夜明けが近くなった頃。

 これが最後だと。
 今までになく奥を、内臓を突き破りそうな勢いで突かれた。
「あぁぁ…っ、ぃおぉぉ」
 眼の前が瞬き、身体じゅうが戦慄わなないた。
 掠れた声を、それでもあげずにはいられなかった。

「トール」
 愛おしげに名を呼ぶその顔は、汗と涙で霞んで見えた。

 金色の髪。
 青い両の瞳。

 そんなふうに。

 もう痺れて起き上がる気力もない筈なのに。
 手を伸ばし、イオの首に手を回す。
 掻きいだく。

「ああ……愛しい方」

 その声は自分の声だが、でも自分ではない。
 ずっと愛される悦びを共にしていた、もうひとりの自分。


 ああ。
 最初で最後の愛を交わしたのは、やはりこの谷でした。
 あの時は、哀しみのうちに貴方に愛され、心が契れそうなくらい辛かった。
 でも、今は悦びだけに身を任せることができました。

 愛しています、兄さん……。


 の感情をも共にした。

 ──それを最後に意識が遠退いた。


★ ★


 朝の光が目蓋を擽る。
 トールはゆっくりと眼を開いた。

「…………」

 に、初めは気がつかなかった。
 身体を瑠璃の花の上に横たえたまま、青い空を見上げる。

 静かだった。
 誰もいないように。

 誰も…………。

 身体を起こし、辺りを見回すと、そこには誰もいなかった。

「イオ……」

 谷じゅうを探し回ることはしなかった。
 不思議とここにイオがいないことが感じられたから。

「イオ……なんで。人間ひとに戻ったんじゃなかったのか。ボクと一緒にいる為に人間ひとに戻りたかったんじゃなかったのか」

 つんと鼻の奥が痛くなる。
 でも、涙は流さない。

 見れば、衣服はきちんと整えられていた。
 ところどころ、青く染まった上衣を彼は脱ぎ捨てた。
 朝日に晒された肌には、たくさんの紅い花が散っている。
 トールはその愛のあかしを愛おしそうに撫でた。

「そうだね。ボクらはまた出逢う。大丈夫…………捜すよ、イオ」


 数日が経ち、旅支度を整えたトールが、瑠璃の谷に別れを告げにきた。
 昼なお暗い森を抜け、高い崖の上から見下ろす。
 谷じゅうはまだ、瑠璃の花に覆われていた。

 あの日と同じように。


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