白銀(ぎん)のたてがみ

さくら乃

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★ ★


 涼しげな造作の顔の熱い眼差しが──眼の前にあった。
 ちゅうと音を立てて口づけたかと思うと、唇を抉じ開けて舌が入り込んでくる。すぐに激しく己の舌に絡み、捕らえられる。


 変な味する……。

 
 それが自分の放ったものだと思うと顔から火が出るような心持ちになった。
 二度目は、それでも、初めから気持ち良さが感じられた。それだけで、また背筋を甘い痺れが這い上ってくる。

 離れていく舌の間に、煌めく糸が見えた。

「──お前のなかに、入りたい」

 やおら口を開く。

「え?」


 なに? また訳のわからない。


 トールは軽く混乱するが、自分の内のもうひとりが、何かを期待するように内震えている。
 そう感じた。

 無論その混乱は想定内だ。
 イオは、誰も触れたことのない──恐らくは本人自身も──場所に触れた。
 長い指一本で、そこの外側に円をえがく。

「ここだ──ここで受け入れてくれ」
「ひゃっ」
 またしても、変な声が飛び出してくる。

「え、でも、そこは」


 排泄するだけの場所じゃあ。


 口に出して言い難く、心のなかで思うのみ。
 それも察して。

「女ではないから仕方がない。ここで受け入れてくれ」
 
 二度にたび乞うと、彼は自分の昂りを片手で支えた。

 
 なんて……長大な。


 自分とは、形も大きさも違うそれに、トールは慄いた。

「む……むり! むりむりむり~! こんな小さな穴にそんなものが入るはずないから~~っっ!!」

 とうとう心の内を撒き散らす。
 ぶんぶんぶんと激しく頭を振りながら。

「痛いから! ぜったい痛いから! 裂けちゃうから~~っっ」

 起き上がろうとして、胸の辺りを片手で押さえつけられた。

「大丈夫だ」
 耳許で密やかな声で言う。
「神が与えるのは、快楽だけだ。痛いことはない」
「そんなの……っ!」
 反論しようとして黙り込んだ。
 ほんの瞬き程の間に、眼の前の男は、がらりと雰囲気を変えた。

 銀色の瞳が煌めき、長い髪にも意思があるようにふわぁと浮かび上がる。
 そして、彼を覆うようにして白銀の光が揺らめいている。
 圧倒され動くこともできないに、下衣ごとズボンを引き抜かれ、大きく膝を割られた。

 その瞬間。

 宛がわれたが、一気に彼の肉体からだを貫いた。

「ああぁぁぁぁぁ─────っっ」

 長く甲高い声が高い岩肌に反響して、谷じゅうに木霊のように響き渡った。

 痛さはまるでなかった。
 背筋を電流が駆け昇り、身体じゅうが総毛立つ。
 肉体からだの内側の、奥の奥が酷く、熱い。


★ ★


 青年は長い長い間、揺さぶり続けられていた。
 背が花をり、より濃密な甘い香りが漂う。
 彼はその香りにも酔わされていた。

    
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