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第六章
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父親の命で秋穂を引き取った石蕗社長は、歓迎はしなかったが、打算もあった。石蕗リゾートの為に役に立つ日が来るんじゃないかと。
秋穂を折々に呼び戻して、パーティーに出席させていたのもその為だ。
内輪と言いながら、有力な取引先や合併を考えている大企業の上層部など、出席者は毎度錚々たるもので、一対複数の見合いみたいなものだった。
「義母のヒステリーを抑えるのに、とにかく話だけでも纏めることにしたんだ。それまでは、外にも出して貰えず、連絡すらできなかった ── もう、これで出たくもないパーティーに出なくていいし、壱也さんも留学させられて、もう会わずに済む」
秋穂は冬馬を見つめ、柔らかく微笑む。
「 ── なんでも良かったんだぁ……早くここに来れるなら。冬馬の誕生日に間に合うなら」
「アキ……」
冬馬はひどく切ない気持ちになって、秋穂の肩を抱き寄せた。
秋穂が折々に呼び戻される理由 ── 既に冬馬は、秋穂の十三歳の誕生日に聞いていた。あの時からいつかはこんな日が来るかも知れない、と思っていた。
( でも、まさか、こんな早く…… )
「アキは、それで幸せになる?その娘を好きになれそう?」
「どうだろう……」
秋穂はその問いには少し困ったように首を傾げる。それから、考えながら、ゆっくりと話す。
「でも、僕らはよく似た境遇なんだ」
秋穂の婚約者は、ホテル業界では石蕗以上のシェアを持つアカツキホテルの社長の娘だという。しかし、後妻の連れ子で、義理の姉たちには邪険にされる上、のちに弟が産まれてからは実の母からも見向きもされなくなった。
「お互い、家の厄介者。気持ちは解り合えると思う」
いつ裏切り合うかわからない両家が、失っても痛くないものを人質に出したというわけか。
( 戦国時代じゃあるまい )
冬馬は喉許に苦味が浮かぶのを感じた。
でも自分たちの生きる世界では、それもありえない話ではない。その手の話は冬馬にも何度となく舞い込んでくる。彼自身はきっぱり拒否していたが、秋穂は勿論、そして恐らくその彼女も拒否できる立場にはない。
「でも彼女は優しくて、とてもいい娘だよ」
「そうか……なら、良かった」
大学を卒業するまでまだ六年ある。それだけあればお互い育む想いもあるかも知れない。
( 俺じゃアキを幸せにできない )
冬馬は抱き寄せていた肩をそっと放した。
( あの男がいなくなった今、俺はもう秋穂を守る必要がないのか……?肌を合わせて、温めてあげることもない…… )
そんな冬馬の行動をどう受けとめてか、秋穂はまた微笑む。
── 哀しいくらい、綺麗な微笑みだった。
秋穂を折々に呼び戻して、パーティーに出席させていたのもその為だ。
内輪と言いながら、有力な取引先や合併を考えている大企業の上層部など、出席者は毎度錚々たるもので、一対複数の見合いみたいなものだった。
「義母のヒステリーを抑えるのに、とにかく話だけでも纏めることにしたんだ。それまでは、外にも出して貰えず、連絡すらできなかった ── もう、これで出たくもないパーティーに出なくていいし、壱也さんも留学させられて、もう会わずに済む」
秋穂は冬馬を見つめ、柔らかく微笑む。
「 ── なんでも良かったんだぁ……早くここに来れるなら。冬馬の誕生日に間に合うなら」
「アキ……」
冬馬はひどく切ない気持ちになって、秋穂の肩を抱き寄せた。
秋穂が折々に呼び戻される理由 ── 既に冬馬は、秋穂の十三歳の誕生日に聞いていた。あの時からいつかはこんな日が来るかも知れない、と思っていた。
( でも、まさか、こんな早く…… )
「アキは、それで幸せになる?その娘を好きになれそう?」
「どうだろう……」
秋穂はその問いには少し困ったように首を傾げる。それから、考えながら、ゆっくりと話す。
「でも、僕らはよく似た境遇なんだ」
秋穂の婚約者は、ホテル業界では石蕗以上のシェアを持つアカツキホテルの社長の娘だという。しかし、後妻の連れ子で、義理の姉たちには邪険にされる上、のちに弟が産まれてからは実の母からも見向きもされなくなった。
「お互い、家の厄介者。気持ちは解り合えると思う」
いつ裏切り合うかわからない両家が、失っても痛くないものを人質に出したというわけか。
( 戦国時代じゃあるまい )
冬馬は喉許に苦味が浮かぶのを感じた。
でも自分たちの生きる世界では、それもありえない話ではない。その手の話は冬馬にも何度となく舞い込んでくる。彼自身はきっぱり拒否していたが、秋穂は勿論、そして恐らくその彼女も拒否できる立場にはない。
「でも彼女は優しくて、とてもいい娘だよ」
「そうか……なら、良かった」
大学を卒業するまでまだ六年ある。それだけあればお互い育む想いもあるかも知れない。
( 俺じゃアキを幸せにできない )
冬馬は抱き寄せていた肩をそっと放した。
( あの男がいなくなった今、俺はもう秋穂を守る必要がないのか……?肌を合わせて、温めてあげることもない…… )
そんな冬馬の行動をどう受けとめてか、秋穂はまた微笑む。
── 哀しいくらい、綺麗な微笑みだった。
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