【R18】聖女の思春期奇行列伝 ~創造主は痛みを快楽に変える変態を創り出す~

ももちく

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第10章:アルピオーネ山脈

第8話:やきもち

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 1時間ほど時間を潰すことになるのは良いが、どう時間を潰していいものかわからないベリアルたちであった。いくらヒカリゴケが洞窟内を夜空の星々のように瞬いていたとしても、そこに足を踏み入れれば、迷子になるのは確実だろうと思わざるをえなかったのだ。

 だからこそ、ベリアルはこの広がっていく空間の入り口を前にして、足を止め、尻をどっかりと地面に据えて、この光景を眺めるだけに留めていたのである。だが、この停止の時間の針を押し進めたのは、アリス=アンジェラが両腕で抱えていた幼竜である。

 幼竜はアリス=アンジェラの両腕から飛び出し、地面に着地する。そして、こちらについてきてほしいと言っているかのように鳴きながら、洞窟の斜面をヨチヨチと歩き始める。ベリアルとアリス=アンジェラとコッシロー=ネヅは互いの顔を見合い、一瞬だけ、どうしようか? という表情をその顔に浮かべる。

「しょうがねえ。目印を残しつつ、あの幼竜の後を追いかけるか」

「でも、目印として置いていけるものと言えば、アリスがフトコロに忍ばせているポテトスティックだけなのデスガ……」

「そんな悲しそうな顔してんじゃねえよっ。我輩の血を目印にしておくさ」

 アリス=アンジェラがフトコロに忍び込ませているのは、小腹が空いた時に齧るアブーラで揚げたポテトスティックであった。人参スティック、キュウリスティックとは違い、こちらはそれらよりもかなり長い時間、保存が利く。どっちも塩を軽くまぶしておくことが、味や触感を楽しむためには欠かせない。しかしながら、ポテトスティックのほうは時間経過による、へにゃり方がそれらと比べて、かなり遅いために、いつでもどこでもカリカリ感を楽しめる、アリス=アンジェラにとって、お気に入りのお菓子であった。

 それらを数本、幼竜に与えていたが、アリス=アンジェラのフトコロにはまだまだそのポテトスティックが残されていた。そのアリス=アンジェラのお菓子を消費せねばならないと思ってしまったがゆえに、アリス=アンジェラは悲しそうな顔になってしまったが、ベリアルは苦笑しながら、アリス=アンジェラの頭を優しく撫でるのであった。

 ベリアルはアリス=アンジェラの機嫌を取った後、左手の人差し指で、右手のひらに軽く一本、線を描く。そうすると、そこに紅い染みが浮き出て、ポタリポタリと紅い水滴が地面に落ちることになる。

「よしっ。これで良いだろ。幼竜の後を追うぞ。こっちに早く来てくれと、ピギャーピギャーうるさくてたまらねえ」

 ベリアルがさも面倒臭そうにそう言う。コッシロー=ネヅはやれやれ……と首級くびを左右に振る。アリス=アンジェラはさも可笑しそうにクスクスと微笑を零す。コッシロー=ネヅはアリスちゃんがコケで足を滑らせて洞窟の奥の奥まで転がってしまっては大変だと、アリス=アンジェラに言い、その助言に従ったアリス=アンジェラは、コッシロー=ネヅの背中に乗るのであった。

「ん? 我輩は乗っちゃダメなのか?」

「ヤリチンを乗せると、我輩が堕天してしまうでッチュウ」

「お前……。いつもアンドレイを背中に乗せて、旅してんじゃねえかっ。あいつも大概、ヤリチンだろっ!?」

「アンドレイ様はヤリチンでも熾天使セラフィムなのでッチュウ。ベリアルは七大悪魔でッチュウよ? 天界のヤリチンと魔界のヤリチンを一緒にされては困るのでッチュウ」

 どこがどう違うんだ? という表情になってしまうベリアルであったが、そんなベリアルを置いて、コッシロー=ネヅがどんどん先へと進んでしまうため、ベリアルは頭をボリボリと右手で掻く他無かった。これ以上、文句を言っても、あの気持ち良さそうなモフモフの背中に乗せてはもらえそうもなかったのである。

「どうでッチュウ? 我輩の背中は? まるで包み込まれている気分になるでッチュウ?」

「コッシローさん。まだ、引きずっているのデス? ボクの愛玩動物はコッシローさんだけなので、安心してほしいのデス」

 コッシロー=ネヅとアリス=アンジェラのやりとりを横で聞きつつ、ベリアルはふふ~~~ん? と意味ありげな呼吸をするのであった。コッシロー=ネヅはそんなベリアルを無理やり無視しているが、それでもベリアルはほほ~~~んとまたしても意味ありげな呼吸を繰り返す。だんだん、無視するのもわずらわしいと思ったコッシロー=ネヅは、一度、キッ! と強めにベリアルを睨みつける。

 アリス=アンジェラはドウドウ……とコッシロー=ネヅを宥めるのであった。

「ベリアル。さっきまでボクがあの子を抱き上げて、あやしていたんですけど、コッシローさんがやきもちを焼きっぱなしだったのデス」

「アリスちゃん。そんなこと説明しなくても、ベリアルは気づいているのでッチュウ。あ~あ~。ベリアルが悪魔的笑みを零し始めたのでッチュウ……」

「赤ちゃんに構いっぱなしになっちまっている女房にやきもちを焼く気持ちはよぉぉぉくわかるぜ? 我輩もたびたび、嫁たちにため息をつかれたもんだからなっ!」

「アリスちゃんの旦那になったつもりではないのでッチュウけど? それはちょっと的外れではないでッチュウか!?」

 ベリアルはコッシロー=ネヅのツッコミにおっと、そう言えばそうだなと思わざるをえなくなってしまう。しかしながら、コッシロー=ネヅとアリス=アンジェラの仲を思えば、愛玩動物同士の争いというよりかは、やはり、赤ちゃんに構いっぱなしになってしまったことで、やきもちを焼いていると言った表現が正しい気がしてならないベリアルであった。

 現に今、コッシロー=ネヅは天界のケルビムとして、恥ずかしくないほどに勇壮な姿をしている。そして、その背中にアリス=アンジェラを乗せているのだ。その姿からは、どちらがアリス=アンジェラの愛玩動物にふさわしいのか? という座を争っているようには思えなかったのである。

 しかしながら、これ以上、無粋な返答を繰り返すのアレだと思ったベリアルは、話を切り替えることにする。

「こいつ、我輩たちをどこに案内してくれるつもりなんだろうな?」

「きっと、優しくされたことへの恩返しをしてくれると思うのデス。食べ切れないお肉の山があるところへと連れていってくれる気がしマス!」

「んで、オチは我輩たちが食べられるっていう、王道展開が待っているのでッチュウね?」

 ベリアルとアリス=アンジェラは、そんな王道すぎる王道なんか、起きるわけないだろうと笑い合う。コッシロー=ネヅも彼らと同じ気持ちであり、まさかそんなことが起きるわけがないと考えていた。

「あの……。コッシローさんって、フラグ回収的な役割を担っていまシタっけ?」

「チュッチュッチュ……。どちらかと言えば、数々のフラグをアリスちゃんラブラブすぎて、次々とへし折っていく主人公タイプだと思っていた頃もあったのでッチュウ」

「お、おい……。聞いてねえぞ。我輩たちは、山頂でバハムートに出会うはずだったよな……? なんで、こんなところにバハムートがいやがんだっ!!」
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