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第12章:アデレート王国

第7話:オカズ

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 タケルは女モノのショーツをポケットにつっこみ、屋敷の中へと入る。屋敷に入るなり、タケルは屋敷の床で4本足の獣のような姿勢になる。さらにはタケルは床に散らばっている水滴を犬のように鼻をクンクンとさせて、エーリカの匂いを嗅ぎ取る。

 エーリカのブーツはエーリカ自身が創り出したおしっこの水たまりの中にあった。それゆえに、今、屋敷の床に散乱している足跡のような水滴から、エーリカの匂いがするのは当然と言えば当然の話である。タケルはその匂いを頼り、エーリカがどこに行ってしまったのかを追跡しはじめる。

「エーリカから発せられてるジャスミンの香りは、エーリカの寝室に続いているな。てか、なんで俺はこんなことに先祖返りジュウジンモードの力を使ってんだ??」

 タケルは嗅覚を鋭くさせるために、先祖返りジュウジンモードの力の一部を解放していた。これにより、タケルの嗅覚は通常の30倍にまで高まっている。しかしながら、いざ、エーリカを探してみれば、エーリカは自室に隠れてしまっているだけだと知ることになる。

 タケルは獣の姿から、ヒトの立ち姿へと姿勢を正す。そして、なるべくエーリカを驚かさないような音量で、ドアを右手でノックする。タケルがドアをノックし、入っていいか? とエーリカに問いかける。エーリカからは消え入りそうな声で、どうぞと言われた。

「あー。何と言えばいいのか。色々とあってだな。ただひとつ言えることは、俺はハメられそうになり、エーリカが巻き込まれただけだ。エーリカが悪いわけじゃない。俺が犯人を見つけて、とっちめてやる」

 エーリカはベッドの上で、薄手の毛布を頭から被って、さらには芋虫のように丸くなっていた。そんなエーリカに対して、タケルは言葉を選びつつ、エーリカに弁明するのであった。

「気づかない俺が一番悪い。いくら暗がりだからと言って、言い訳できるわけがないものをエーリカに手渡した。全部、俺が悪いってことで、エーリカの中で納得してくれ」

 タケルはそう言うと、エーリカが芋虫のように丸くなっている前から立ち去ろうとする。だが、タケルがエーリカの寝室から外に出ようとした、まさにその時、エーリカが消え入りそうな声で、タケルにとんでもない事実を明かすのであった。

「おぉぉぉいいいい。勘弁してくれ。俺を罠にハメようとしたのはエーリカ本人かよ……」

「本当にごめんなさい……。最近、タケルお兄ちゃんを説教してないなぁって思って。でも、よく考えてほしいの。ここしばらく、タケルお兄ちゃんがあたしに説教されるようなおこないをしてくれないのが悪いのっ!」

「そりゃ、三日も空けずにエーリカに説教されてる俺だけどさぁ。それが無い状態でたまたま五日間続いただけだろ。何か? 一種の禁断症状にでも陥ったのか?」

「それって言い得て妙ね。タケルお兄ちゃんは知らず知らずに、あたしに説教されることで、あたしのストレスを発散させてくれてたのねっ!」

「感心するとこが違う気がするが? しかも、エーリカだけが得する超ポジティブな思考すぎるわっ!」

 タケルの容赦の無いツッコミにエーリカが照れ笑いしていた。タケルはヤレヤレ……と嘆息しながら、芋虫状態から復帰しつつあるエーリカと視線の高さを同じにする。そして、タケルにしては珍しく真剣な眼差しで、エーリカと視線を合わせる。

「エーリカがそれで日頃の仕事のストレスを解消出来てるってのなら、俺を好きなように説教してくれ。でも、さっきの大事故はエーリカ自身が悪いから、そういう風なことにならないように注意するんだぞ」

「うん。あたしの方も気をつけるね。タケルお兄ちゃん、ありがと」

「んじゃ、エーリカのおしっこで汚れたエーリカのショーツは没収なっ。俺が有意義に使ってやるから」

「ちょっと!? 何に使う気なのよっ!? 誰かに見せたら、いくらタケルお兄ちゃんでも承知しないわよっ!?」

「そんなことしねーよ。ただちょっと、不慣れな土地にやってきたから、俺も色々ストレスが溜まってんだよ。妹のショーツで悪いが、オカズに使おうかなってだけだ」

「タケルお兄ちゃん、変態すぎるよぉぉぉ……」

「うっせぇ! エーリカはこれで俺をしばらく説教する種に困らない。そして、俺は俺で楽しめる。ウィンウィンの関係って、こういうことを言うんだろ!?」

 タケルは自分でも支離滅裂なことを言っているなという自覚はあった。いくら、エーリカに説教されるためとは言え、年頃の女子に言うべき台詞では無かった。しかし、このままではエーリカが一方的に悪になる。それを無理やりにでも解消するためには、これくらいの変態性を主張する他無かったのである。

「タケルお兄ちゃん……。あたしなんかがオカズでいいの?」

「あたしなんかっていう言い方はやめとけ。どうせ、次にはセツラお姉ちゃんにしとけばいいのにって言うんだろ?」

「うぅ……。あたしの台詞を取らないでよ。あたしの逃げ場所が無くなっちゃうじゃない」

「うるせぇ。今夜は特に自分の妹を肴に楽しみたい気分なんだよっ。恨むならド変態のお兄ちゃんを恨んどけっ!」

「タケルお兄ちゃんのバカァ……。でも、約束してね? オカズに使うのは構わないけど、誰にもそのショーツを見せないでね?」

 エーリカの顔は真っ赤に染まっていた。タケルはうつむきかげんのエーリカに当たり前だろと言い、エーリカの頭を優しく撫でる。エーリカは何だか嬉しい気持ちになる。そもそも悪いのはタケルお兄ちゃんを罠にハメようとしたエーリカであった。しかし、タケルお兄ちゃんは、そのことでエーリカを責めることは一切無かった。

 それゆえに、エーリカはタケルお兄ちゃんにせめてもの詫びとして、タケルにオカズがそれだけじゃ足りないでしょ? と言い出すのであった。タケルは何のこっちゃ? と思うが、そのことを口に出す前にエーリカが動きを見せたのであった。

 エーリカは身体に巻き付かせていた薄い毛布を上半身から剥がす。さらにはシャツのボタンをひとつひとつ外していく。タケルがエーリカを止めに入る前に、エーリカはブラを上へとずらす。

「タケルお兄ちゃんにご褒美。小さいけど、少しはオカズの足しになるかなって」

 エーリカの桜色の乳首が部屋の薄明かりに照らされていた。タケルは完全に固まっていた。せっかくそこに可愛らしい乳首がこんにちわしてくれているのに、タケルは指一本、動かせずにいた。そして、タケルが動きを見せる前に、エーリカはブラの位置を元に戻す。

「はい。ご褒美はここまでっ! 早く自分の部屋に戻って、楽しんでねっ! 明日は朝からタケルお兄ちゃんをこってり説教するんだからっ!」

「お、おう……。それじゃ、また明日……な」

 タケルは茫然自失となりながら、エーリカの寝室から廊下に出ることになる。そして、自分の寝室につくなり、タケルは崩れ落ちるように寝室の床にへたり込む。

「俺は何やってんだ……。妹にやらせて良いことと悪いことがあるだろ……。エーリカの可愛すぎる乳首が俺の目にこれでもかというくらいに焼き付いちまってる。こりゃ、今夜は眠れぬ夜になっちまうぞ……」
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