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第13章:ロリョウの町・攻防戦
第9話:文化の違い
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エーリカたちに命を下されたアヤメ=イズミーナとロビン=ウィルは南ケイ州の奥深くにまで潜入しいていた。今回の戦で投降兵は2千。その家族となると6千はくだらない。そんな数のニンゲンを保護しろという無茶振りをされたアヤメとロビンであったが、出来る限りの手は尽くそうとする。
「ロビンの旦那っ! ネーネちゃんの家族を見つけたですニャン! あいつら、ひどいですニャン!」
「落ち着け、アヤメ。しかし、ホバート王国では考えられんな、この光景は……」
ロビンは絶句しそうになっていた。投降兵たちの家族の夜逃げを手伝いながら、南ケイ州の奥地までやってきたのた。そして、投降兵のひとりであるネーネ=ブランの家族がいるという集落に到着した。しかし、ネーネの家族は今まさに村人たちによって、釜茹での刑にされそうになっていたのだ。
大きな釜の縁に細い木製の板が乗せられていた。ただでさえ、足を滑らせて落ちてしまいかねない場所に立たされているネーネの両親たちであった。だが、落ちてしまえとばかりにその両親を竹やりの先で突く村人たちであった。こんな光景を見ることなど、ホバート王国では無いと言っても良かった。
ホバート王国でも、敵に寝返るようなことがあれば、その家族は村人たちから村八分を喰らうことは確かにある。だが、ここまで憎悪の心を持ってして、命で償えとまではいかない。これぞ、ホバート王国とアデレート王国の文化の違いなのかと、ロビンは拳を握り込み、怒りで身体を震わせていた。
「どうしますニャン? 村人全員を敵に回すことになりますが、アヤメちゃんはそれでも構いませんニャン。あんな非道なことは許せないですニャン!」
「落ち着け、アヤメ。2人を救う代わりに、30人を殺す気か? それはエーリカの望むことでは無い」
殺る気満々のアヤメを落ち着かせようとするロビンであった。だが、アヤメの頭には血が上り、さらには先祖返りを発動させつつあった。ロビンは激情に流されつつあったアヤメに感化されないように尽力する。
「ちょっと、何をしているニャン!?」
アヤメが驚いたのも無理が無い。ロビンが背中に背負っていた弓と矢筒をアヤメに渡し、さらには両手をあげて、茂みから出ていくのであった。村人たちは見知らぬ男がいきなり登場したことで、手に持った竹槍の切っ先を一斉にその男に向けたのである。
「そこの男女2人を明け渡してもらうための交渉にきた!」
ロビンは臆することなく、村人たちにそう言ってみせる。村人たちは何を言っているだ? という怪訝な表情になる。だが、続くロビンの言葉で、釜茹でにしようとしている男女と、この男の関係を察することになる。
「ただで譲り渡す気は無いな。こいつらは俺たちに借金しているだけでなく、村に泥を塗ったんだ。そこは理解してもらえるな?」
下衆の極みとも言える肥満体の大男が怒りにたけ狂う村人たちの前に出てくる。ロビンはこいつは口だけでなく、魂からもドブのような匂いが漂ってくると思った。だが、ロビンはキリッとした顔立ちで、大男の胸に向かって、金子の入った袋を投げる。
大男はその袋を両手で拾い上げ、ひいふうみいとその中身を数え上げていく。そして、これでもかという下衆な笑みを浮かべ、ネーネの両親を釜茹でにしろと村人たちに命ずるのであった。
「ふんっ。自分がネーネ殿から聞いていた借金は金子4枚分だったがな? そこに迷惑料もつけたはず」
「勘違いしてくれるな。確かに十分な量の金子はもらった。だが、村人たちの気持ちはどうなる。俺様ひとりが納得したところでどうにもならん」
「なるほど。アヤメ。交渉は決裂だ。お前が正しい。エーリカにはこの村は存在する価値など無かったと俺から報告しておく」
「もうっ! ロビンの旦那は優しすぎですニャン! でも、そんなロビンの旦那だから、アヤメちゃんはロビンの旦那に惚れこんだんですニャン!」
アヤメはそう言いながら、さも嬉しいという表情で、茂みから飛び出す。さっき、ロビンに預けられた弓と矢筒をロビンに向かって投げる。そして、空いた手を懐に突っこみ、そこからクナイを取り出し、次々と村人たちの胸や喉に投げ飛ばす。村人たちは一撃で急所をクナイによって、傷つけられることになる。
アヤメは立ち止まることなく、跳ね回る。クナイを投げてはその場から木の上、さらには家屋の屋根の上に飛び乗っていく。村人たちは最初、自分たちを傷つけるアヤメを追いかけまわそうとしていた。だが、狩人はアヤメの方である。自分と彼女との立場を理解した村人たちは、一斉に逃げ出すのであった。
「お、お前ら!? 俺様を置いて、どこに逃げる気だ!?」
大男は所詮、2人だとタカをくくっていた。跳ね回る女を捕まえろと村人たちを扇動した。だが、村人たちは勝てない相手だとわかった瞬間、怒鳴り散らすだけの大男を置いて、背中に向かって射られる矢から逃れるように、村の外にまで逃げ出すのであった。
「ふんっ。下衆の最後にはふさわしい」
「なんだと、てめぇっ! 余所者がデカイ態度を取ってんじゃねブヘェッ!」
大男は顔を真っ赤にしながら、ロビンの胸元を掴もうとした。だが、ロビンは伸ばされてきた手をスルッと風に流される布のように躱してみせる。体勢を崩しかけた大男の足に左足を引っかけて、大男を転ばせるのであった。
大男が転んだところを馬乗りになるアヤメであった。大男は地面を這いまわる虫のように手足をばたつかせる。背中で馬乗りになっているアヤメは一応、確認のためにロビンの方に顔を向ける。ロビンはアヤメにコクリと頷くと、アヤメはにんまりとした暗月のような笑顔になる。
「た、助けてくれぇぇぇ!? 俺様はこの国のルールに従ったまでだぁぁぁ!?」
「確かにこの国のルールに則るならば、お前たちのやっていることは正しいのだろう。だが、そんなルールは直に、我が主が改める」
「ひ、ひぃぃぃ!?」
大男は泣き叫びながら、命ばかりは救ってくれとロビンに懇願してくる。だが、ロビンはすでに大男に背中を向け、ネーネの両親の方へと歩いていた。アヤメはうるさいですニャンと言って、クナイを大男の首に突き刺す。そして、かけれるだけ体重をかけていき、クナイをグイグイと首の奥の奥へと押し進めていく。
大男は標本される虫のように手足をばたつかせ、さらには口から紅い泡を吹きだすのであった。しかしながら、その抵抗も数秒後には終わることになる。アヤメは良い仕事をしましたニャンという表情で、大男から身体を離す。
「どこのどなたかは、なんとなく察しておりますが……」
「話が早くて助かる。この地図にあるこの場所を目指してくれ。自分たちは他にも南ケイ州から亡命させなければならないひとたちがいる。隣の州まで案内出来ずにすまない」
「ようやくこれで半分といったところですニャン。さて、お次はいよいよ、南ケイ州の都ですニャン。しっかし、エーリカ様はロビンの旦那よりも優しいですニャン。敵兵の命だけじゃなく、その家族の命まで助けろとは……。まあ、アヤメちゃんは依頼された仕事をこなすだけですけどニャン!」
「ロビンの旦那っ! ネーネちゃんの家族を見つけたですニャン! あいつら、ひどいですニャン!」
「落ち着け、アヤメ。しかし、ホバート王国では考えられんな、この光景は……」
ロビンは絶句しそうになっていた。投降兵たちの家族の夜逃げを手伝いながら、南ケイ州の奥地までやってきたのた。そして、投降兵のひとりであるネーネ=ブランの家族がいるという集落に到着した。しかし、ネーネの家族は今まさに村人たちによって、釜茹での刑にされそうになっていたのだ。
大きな釜の縁に細い木製の板が乗せられていた。ただでさえ、足を滑らせて落ちてしまいかねない場所に立たされているネーネの両親たちであった。だが、落ちてしまえとばかりにその両親を竹やりの先で突く村人たちであった。こんな光景を見ることなど、ホバート王国では無いと言っても良かった。
ホバート王国でも、敵に寝返るようなことがあれば、その家族は村人たちから村八分を喰らうことは確かにある。だが、ここまで憎悪の心を持ってして、命で償えとまではいかない。これぞ、ホバート王国とアデレート王国の文化の違いなのかと、ロビンは拳を握り込み、怒りで身体を震わせていた。
「どうしますニャン? 村人全員を敵に回すことになりますが、アヤメちゃんはそれでも構いませんニャン。あんな非道なことは許せないですニャン!」
「落ち着け、アヤメ。2人を救う代わりに、30人を殺す気か? それはエーリカの望むことでは無い」
殺る気満々のアヤメを落ち着かせようとするロビンであった。だが、アヤメの頭には血が上り、さらには先祖返りを発動させつつあった。ロビンは激情に流されつつあったアヤメに感化されないように尽力する。
「ちょっと、何をしているニャン!?」
アヤメが驚いたのも無理が無い。ロビンが背中に背負っていた弓と矢筒をアヤメに渡し、さらには両手をあげて、茂みから出ていくのであった。村人たちは見知らぬ男がいきなり登場したことで、手に持った竹槍の切っ先を一斉にその男に向けたのである。
「そこの男女2人を明け渡してもらうための交渉にきた!」
ロビンは臆することなく、村人たちにそう言ってみせる。村人たちは何を言っているだ? という怪訝な表情になる。だが、続くロビンの言葉で、釜茹でにしようとしている男女と、この男の関係を察することになる。
「ただで譲り渡す気は無いな。こいつらは俺たちに借金しているだけでなく、村に泥を塗ったんだ。そこは理解してもらえるな?」
下衆の極みとも言える肥満体の大男が怒りにたけ狂う村人たちの前に出てくる。ロビンはこいつは口だけでなく、魂からもドブのような匂いが漂ってくると思った。だが、ロビンはキリッとした顔立ちで、大男の胸に向かって、金子の入った袋を投げる。
大男はその袋を両手で拾い上げ、ひいふうみいとその中身を数え上げていく。そして、これでもかという下衆な笑みを浮かべ、ネーネの両親を釜茹でにしろと村人たちに命ずるのであった。
「ふんっ。自分がネーネ殿から聞いていた借金は金子4枚分だったがな? そこに迷惑料もつけたはず」
「勘違いしてくれるな。確かに十分な量の金子はもらった。だが、村人たちの気持ちはどうなる。俺様ひとりが納得したところでどうにもならん」
「なるほど。アヤメ。交渉は決裂だ。お前が正しい。エーリカにはこの村は存在する価値など無かったと俺から報告しておく」
「もうっ! ロビンの旦那は優しすぎですニャン! でも、そんなロビンの旦那だから、アヤメちゃんはロビンの旦那に惚れこんだんですニャン!」
アヤメはそう言いながら、さも嬉しいという表情で、茂みから飛び出す。さっき、ロビンに預けられた弓と矢筒をロビンに向かって投げる。そして、空いた手を懐に突っこみ、そこからクナイを取り出し、次々と村人たちの胸や喉に投げ飛ばす。村人たちは一撃で急所をクナイによって、傷つけられることになる。
アヤメは立ち止まることなく、跳ね回る。クナイを投げてはその場から木の上、さらには家屋の屋根の上に飛び乗っていく。村人たちは最初、自分たちを傷つけるアヤメを追いかけまわそうとしていた。だが、狩人はアヤメの方である。自分と彼女との立場を理解した村人たちは、一斉に逃げ出すのであった。
「お、お前ら!? 俺様を置いて、どこに逃げる気だ!?」
大男は所詮、2人だとタカをくくっていた。跳ね回る女を捕まえろと村人たちを扇動した。だが、村人たちは勝てない相手だとわかった瞬間、怒鳴り散らすだけの大男を置いて、背中に向かって射られる矢から逃れるように、村の外にまで逃げ出すのであった。
「ふんっ。下衆の最後にはふさわしい」
「なんだと、てめぇっ! 余所者がデカイ態度を取ってんじゃねブヘェッ!」
大男は顔を真っ赤にしながら、ロビンの胸元を掴もうとした。だが、ロビンは伸ばされてきた手をスルッと風に流される布のように躱してみせる。体勢を崩しかけた大男の足に左足を引っかけて、大男を転ばせるのであった。
大男が転んだところを馬乗りになるアヤメであった。大男は地面を這いまわる虫のように手足をばたつかせる。背中で馬乗りになっているアヤメは一応、確認のためにロビンの方に顔を向ける。ロビンはアヤメにコクリと頷くと、アヤメはにんまりとした暗月のような笑顔になる。
「た、助けてくれぇぇぇ!? 俺様はこの国のルールに従ったまでだぁぁぁ!?」
「確かにこの国のルールに則るならば、お前たちのやっていることは正しいのだろう。だが、そんなルールは直に、我が主が改める」
「ひ、ひぃぃぃ!?」
大男は泣き叫びながら、命ばかりは救ってくれとロビンに懇願してくる。だが、ロビンはすでに大男に背中を向け、ネーネの両親の方へと歩いていた。アヤメはうるさいですニャンと言って、クナイを大男の首に突き刺す。そして、かけれるだけ体重をかけていき、クナイをグイグイと首の奥の奥へと押し進めていく。
大男は標本される虫のように手足をばたつかせ、さらには口から紅い泡を吹きだすのであった。しかしながら、その抵抗も数秒後には終わることになる。アヤメは良い仕事をしましたニャンという表情で、大男から身体を離す。
「どこのどなたかは、なんとなく察しておりますが……」
「話が早くて助かる。この地図にあるこの場所を目指してくれ。自分たちは他にも南ケイ州から亡命させなければならないひとたちがいる。隣の州まで案内出来ずにすまない」
「ようやくこれで半分といったところですニャン。さて、お次はいよいよ、南ケイ州の都ですニャン。しっかし、エーリカ様はロビンの旦那よりも優しいですニャン。敵兵の命だけじゃなく、その家族の命まで助けろとは……。まあ、アヤメちゃんは依頼された仕事をこなすだけですけどニャン!」
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