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第5章:後退は撤退にあらず
第6話:|焔虎《フレイム・タイガ》
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いったい彼らは何合、斬り結んだのであろうか? 10? 20? いや、50合はくだらないだろう。シャクマ=ノブモリとマッゲ=サーンはそれほどに朱槍と長剣をぶつけ合ったが、一向に勝負は終わりそうになかった。
(こいつはたまげたぜっ。S.N.O.Jにもらったこの身体の能力でも、勝負の行方はわからないってかっ!)
始祖神:S.N.O.Jがシャクマをこの世界に呼んだ時に、彼の魂の器となる身体をS.N.O.J自ら、創り出したのである。S.N.O.Jが何を考えて、シャクマの魂を今の身体に入れたのかは、シャクマ自身にはわからない。だが、これは『今度こそ、主のために死ね』と暗に言われている気がしてならないシャクマであった。
シャクマがこの世界にやってきて、真に守るべき主とも呼べる者に出会った。その者の名は『アキヅキ=シュレイン』であった。シャクマは、どこか抜けていて、自分の前だけでは甘えん坊で、しかしながら、歯を食いしばり、皆を鼓舞し続けるアキヅキに惚れこんでいたのであった。
(姫は無事に逃げ切ってくれたかな……?)
シャクマがそう思った瞬間であった。シャクマの右肩の防具がマッゲ=サーンの渾身の一振りで斬り落とされたのである。
「ふっ……。今、女のことを思っていただろ? 頬がたるんでいたでゴザル」
「うるせえっ! 少しは思い出にふけさせろってんだっ!」
シャクマの抗議を受けて、マッゲはクックックと笑ってしまう。そう言えば、南の砦に向かったミッフィー殿は無事であろうか? 何かしらの罠にひっかかり、怪我をしていないだろうか? と思うのであった。
「おい……。お前こそ、今、女のことを思っているだろ? 頬がたるみきっているぜ?」
「おっと。拙者としたことが、戦いの最中に物思いにとらわれてしまったのでゴザル」
おどけた雰囲気でマッゲがそう言うモノだから、ついシャクマも、はーははっ! と大笑いをしてしまうのであった。ひとしきり笑い合った彼らは、それぞれに朱槍と長剣を構える。そして、これが最後の一撃だとばかりに渾身の力を振り絞って、相手の身に叩き込もうとするのであった。
ガギイイインッ!
耳をつんざくような金属音が2人の間で起きる。マッゲが右手に握っていた紅い長剣が、衝撃に耐えきれずに半ばから折れてしまったのであった。
「勝負ありだな。退くなら追わないぜ?」
「ふっ。まことに鎧武者らしき台詞でゴザル。武人としての戦いはここまで。ここからは拙者の真の力を見せるのでゴザル!」
「何を言ってやがるん……」
シャクマがそこまで口から言葉を漏らした時であった。いつの間にか、マッゲの左手には直径15センチメートルほどの紅い珠玉が存在していたのである。しかも、その珠玉から天を衝く火柱が舞い上がる。
(こいつ、俺と一緒に自滅するつもりなのか!?)
シャクマは火柱に巻き込まれてなるものかと、バックステップで、マッゲから大きく身を離す。マッゲは珠玉が創り出す火柱の中心に居た。どうにか難を逃れたシャクマであったが、その火柱の中でうごめく存在を視認する。
「う、嘘だろ……。こんなのどうやって相手しろってんだ!?」
天を衝く火柱が収まっていくと同時に、その火柱を全て吸い込み、急激に巨大化していく物体があった。それは全身が燃え盛る炎で出来た全長5メートルの虎であった。
その巨大な焔虎は、ガオオオン! と虎の咆哮を放つ。近くにいる者たちの鼓膜を破ってしまいそうなほどの重低音が周囲に襲い掛かる。
シャクマは、ぐわっ! と悲鳴を上げながら、すぐさま自分の両耳を両手で抑える。だが、それでも虎の咆哮を防ぎきることは出来ず、彼の脳内にはキーーーン! という高い耳鳴りに近い音がこだまするのであった。
その音による衝撃を受け、身体をよろめかせるシャクマに対して、焔虎は容赦なかった。彼は燃え盛る右腕を大きく振り上げて、シャクマの頭上へと振り下ろす。
ドゴオオオンッ! という音と共に、焔虎の右手は地面を抉る。シャクマは焔虎の攻撃というには大雑把すぎる暴力をすんでのところで回避する。だが、巻きあがった土砂にシャクマは巻き込まて、ふっとばされることになる。
しかしながら、シャクマはすぐさま身を起こし、またもや腰に結わえた小袋に右手を突っ込み、紅い水晶を取り出し、それを右手の中でへし折る。そして、新たな朱槍を手にする。
シャクマが槍を上段構えにしたまま、助走をつけて、上方へジャンプする。そして、渾身の力を込めて、焔虎の頭に槍の柄をぶち込んだのであった。
「全然、通じてねえ!?」
シャクマが驚くのも当然であった。勢いをつけた槍の上段叩き割りはシャクマが着ている鎧武者の兜すら、叩き割る威力を発揮する。しかしだ、槍の柄を顔面に叩き込まれた焔虎は、まるで竹ぼうきで顔を撫でられたかのようにややうっとおしいと言った表情を見せるだけであった。
顔面にほんの軽くめり込んだ槍を振り払うかのように、焔虎は左腕でどける。それだけで、圧倒的な力が生み出され、シャクマは宙に放り投げられることになる。
その宙に放り投げられたシャクマを、ハエを叩き落とすかのように焔虎は右腕を振り下ろす。シャクマは空中で身をひるがえして、焔虎の一撃を両手で握る槍で防ごうとする。
そこでシャクマは3度目の驚きに襲われる。マッゲとの斬り結びで、逆にマッゲの長剣を叩き折った朱槍が、焔虎の単純な暴力の1撃のみで、砕け散ったからだ。折れるなどという表現が生易しいと思えるほどの槍の砕けっぷりにシャクマは吹き飛ばされながら、苦笑せざるをえないのであった。
「冗談は、よしこさんだぜ……っ」
しかしながら、シャクマの心までは折れていなかった。身をひるがえし、足から地面に着地した後、腰に結わえた小袋に左手を突っ込み、紅い水晶を取り出し、左手の中でへし折る。そして、現出させた炎を象る弓矢を連続で焔虎に速射していくのであった。
(こいつはたまげたぜっ。S.N.O.Jにもらったこの身体の能力でも、勝負の行方はわからないってかっ!)
始祖神:S.N.O.Jがシャクマをこの世界に呼んだ時に、彼の魂の器となる身体をS.N.O.J自ら、創り出したのである。S.N.O.Jが何を考えて、シャクマの魂を今の身体に入れたのかは、シャクマ自身にはわからない。だが、これは『今度こそ、主のために死ね』と暗に言われている気がしてならないシャクマであった。
シャクマがこの世界にやってきて、真に守るべき主とも呼べる者に出会った。その者の名は『アキヅキ=シュレイン』であった。シャクマは、どこか抜けていて、自分の前だけでは甘えん坊で、しかしながら、歯を食いしばり、皆を鼓舞し続けるアキヅキに惚れこんでいたのであった。
(姫は無事に逃げ切ってくれたかな……?)
シャクマがそう思った瞬間であった。シャクマの右肩の防具がマッゲ=サーンの渾身の一振りで斬り落とされたのである。
「ふっ……。今、女のことを思っていただろ? 頬がたるんでいたでゴザル」
「うるせえっ! 少しは思い出にふけさせろってんだっ!」
シャクマの抗議を受けて、マッゲはクックックと笑ってしまう。そう言えば、南の砦に向かったミッフィー殿は無事であろうか? 何かしらの罠にひっかかり、怪我をしていないだろうか? と思うのであった。
「おい……。お前こそ、今、女のことを思っているだろ? 頬がたるみきっているぜ?」
「おっと。拙者としたことが、戦いの最中に物思いにとらわれてしまったのでゴザル」
おどけた雰囲気でマッゲがそう言うモノだから、ついシャクマも、はーははっ! と大笑いをしてしまうのであった。ひとしきり笑い合った彼らは、それぞれに朱槍と長剣を構える。そして、これが最後の一撃だとばかりに渾身の力を振り絞って、相手の身に叩き込もうとするのであった。
ガギイイインッ!
耳をつんざくような金属音が2人の間で起きる。マッゲが右手に握っていた紅い長剣が、衝撃に耐えきれずに半ばから折れてしまったのであった。
「勝負ありだな。退くなら追わないぜ?」
「ふっ。まことに鎧武者らしき台詞でゴザル。武人としての戦いはここまで。ここからは拙者の真の力を見せるのでゴザル!」
「何を言ってやがるん……」
シャクマがそこまで口から言葉を漏らした時であった。いつの間にか、マッゲの左手には直径15センチメートルほどの紅い珠玉が存在していたのである。しかも、その珠玉から天を衝く火柱が舞い上がる。
(こいつ、俺と一緒に自滅するつもりなのか!?)
シャクマは火柱に巻き込まれてなるものかと、バックステップで、マッゲから大きく身を離す。マッゲは珠玉が創り出す火柱の中心に居た。どうにか難を逃れたシャクマであったが、その火柱の中でうごめく存在を視認する。
「う、嘘だろ……。こんなのどうやって相手しろってんだ!?」
天を衝く火柱が収まっていくと同時に、その火柱を全て吸い込み、急激に巨大化していく物体があった。それは全身が燃え盛る炎で出来た全長5メートルの虎であった。
その巨大な焔虎は、ガオオオン! と虎の咆哮を放つ。近くにいる者たちの鼓膜を破ってしまいそうなほどの重低音が周囲に襲い掛かる。
シャクマは、ぐわっ! と悲鳴を上げながら、すぐさま自分の両耳を両手で抑える。だが、それでも虎の咆哮を防ぎきることは出来ず、彼の脳内にはキーーーン! という高い耳鳴りに近い音がこだまするのであった。
その音による衝撃を受け、身体をよろめかせるシャクマに対して、焔虎は容赦なかった。彼は燃え盛る右腕を大きく振り上げて、シャクマの頭上へと振り下ろす。
ドゴオオオンッ! という音と共に、焔虎の右手は地面を抉る。シャクマは焔虎の攻撃というには大雑把すぎる暴力をすんでのところで回避する。だが、巻きあがった土砂にシャクマは巻き込まて、ふっとばされることになる。
しかしながら、シャクマはすぐさま身を起こし、またもや腰に結わえた小袋に右手を突っ込み、紅い水晶を取り出し、それを右手の中でへし折る。そして、新たな朱槍を手にする。
シャクマが槍を上段構えにしたまま、助走をつけて、上方へジャンプする。そして、渾身の力を込めて、焔虎の頭に槍の柄をぶち込んだのであった。
「全然、通じてねえ!?」
シャクマが驚くのも当然であった。勢いをつけた槍の上段叩き割りはシャクマが着ている鎧武者の兜すら、叩き割る威力を発揮する。しかしだ、槍の柄を顔面に叩き込まれた焔虎は、まるで竹ぼうきで顔を撫でられたかのようにややうっとおしいと言った表情を見せるだけであった。
顔面にほんの軽くめり込んだ槍を振り払うかのように、焔虎は左腕でどける。それだけで、圧倒的な力が生み出され、シャクマは宙に放り投げられることになる。
その宙に放り投げられたシャクマを、ハエを叩き落とすかのように焔虎は右腕を振り下ろす。シャクマは空中で身をひるがえして、焔虎の一撃を両手で握る槍で防ごうとする。
そこでシャクマは3度目の驚きに襲われる。マッゲとの斬り結びで、逆にマッゲの長剣を叩き折った朱槍が、焔虎の単純な暴力の1撃のみで、砕け散ったからだ。折れるなどという表現が生易しいと思えるほどの槍の砕けっぷりにシャクマは吹き飛ばされながら、苦笑せざるをえないのであった。
「冗談は、よしこさんだぜ……っ」
しかしながら、シャクマの心までは折れていなかった。身をひるがえし、足から地面に着地した後、腰に結わえた小袋に左手を突っ込み、紅い水晶を取り出し、左手の中でへし折る。そして、現出させた炎を象る弓矢を連続で焔虎に速射していくのであった。
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