51 / 51
第5章:後退は撤退にあらず
エピローグ
しおりを挟む
――ポメラニア帝国歴261年7月23日 火の国:イズモ:シュレイン邸――
「うひいいい。こっちの世界も、ひのもとの国と同じくらいに暑くて、たまんねえや!」
シャクマ=ノブモリが燦々と照り付ける太陽に毒づく。シャクマは、あのゼーガン砦の攻防戦の後、アキヅキ=シュレイン共々、お役御免となり、シュレイン邸でのんびりと過ごす毎日を送っていたのである。
まあ、本当にのんびり出来たかは諸説あるのだが……。
アキヅキ=シュレインは、ゼーガン砦の遺体安置所に置かれていた父:カゲツ=シュレインの遺体を引き取った後、地元に戻り、葬儀を行うこととなる。サラーヌ=ワテリオンが気を利かせて、遺体安置所を防腐処理用の液体で満たしてくれていたおかげで、見るも無残な姿になっていなかったのは不幸中の幸いであった。
あの壮絶な戦いから2年余りが過ぎていた。父:カゲツ=シュレインの三回忌も無事に過ぎて、どこか安堵の表情を浮かべるアキヅキであった。
この太陽が照り付ける中、シュレイン邸の広い庭で木刀を使って素振りをするシャクマを見ながら、日傘と白いテーブル、それと白い椅子が置かれているテラスでアキヅキは幸せそうに笑う。
「あっ。シャクマ! 今、赤ちゃんがわたしのお腹を蹴ったわよ!」
「えっ! アキヅキ、本当か!? ちょっと、俺も赤ちゃんが腹を蹴ってる音ってのを聞かせてくれよっ!」
2階のテラスからシャクマに手を振るアキヅキのお腹はぽっこりと膨らんでいた。アキヅキが妊娠してから、早8カ月目を迎えていた。予定通りならあと2カ月もしない内に待望の第1児を出産することになる。
「良いニャー。アキヅキちゃんは……。フランちゃんも早くシャクマとの子供が欲しいニャ」
「そんなこと言っても、他種族同士だと子供は出来にくいのよ? わたしのはたまたま、たまたまよ?」
「そんなこと言って、アキヅキちゃんはシャクマ独り占め月間とか言い出して、シャクマと1カ月もの間、寝室から出てこなかったニャーーー!!」
シャクマを諦めきれないフランに、アキヅキが提案したのは、半年に一度の頻度で1カ月間、シャクマをアキヅキが占有できる権利を認めるならば、第二夫人として、シャクマと同じ家に住んでいいわよ? とのことであった。
フランは不承ぶしょうであるが、それを了承したのは良いのだが、アキヅキはシャクマとの結婚式を終えた直後にその権利を発動して、一カ月間、夫婦の寝室から出てこないという荒業を繰り出したのである。
それがちょうど9カ月前の出来事であったから、アキヅキは抜けているところはあるが、女性としてのたくましさに溢れているとでも言えよう。結局のところ、シャクマとの間柄において、アキヅキは一歩も二歩もフランに差をつけたといえよう。
「フラン? 恋は戦争なのよ? それを教えてくれたのは、フラン、あなた自身よね?」
フランはフランで、シャクマの今の身体においての童貞を、アキヅキに黙って奪っていたのである。だからこそ、アキヅキはフランが抜け駆けしないようにとのことで、強硬策に打ってでたわけである。
「ほっほっほ。シャクマさまは男冥利に尽きますな。こんな美しい女性たちを虜にしていますのじゃ」
言い争いを続けるアキヅキとフランの間に割って入るかのように、テラスに現れたのはシュレイン家の筆頭執事であるバジル=フォルジュ、通称:バジル爺であった。かれは冷たく冷やした麦茶を入れた鉄製のヤカンと、空の縦長のコップを3つ持ってきたのであった。
彼は白いテーブルの上に縦長のコップを並べた後、その中に麦茶を注いでいく。そして、3つ目のコップに麦茶を注ぎ終わったと同時に、テラスにシャクマが飛び込んでくるのであった……。
「うひいいい。こっちの世界も、ひのもとの国と同じくらいに暑くて、たまんねえや!」
シャクマ=ノブモリが燦々と照り付ける太陽に毒づく。シャクマは、あのゼーガン砦の攻防戦の後、アキヅキ=シュレイン共々、お役御免となり、シュレイン邸でのんびりと過ごす毎日を送っていたのである。
まあ、本当にのんびり出来たかは諸説あるのだが……。
アキヅキ=シュレインは、ゼーガン砦の遺体安置所に置かれていた父:カゲツ=シュレインの遺体を引き取った後、地元に戻り、葬儀を行うこととなる。サラーヌ=ワテリオンが気を利かせて、遺体安置所を防腐処理用の液体で満たしてくれていたおかげで、見るも無残な姿になっていなかったのは不幸中の幸いであった。
あの壮絶な戦いから2年余りが過ぎていた。父:カゲツ=シュレインの三回忌も無事に過ぎて、どこか安堵の表情を浮かべるアキヅキであった。
この太陽が照り付ける中、シュレイン邸の広い庭で木刀を使って素振りをするシャクマを見ながら、日傘と白いテーブル、それと白い椅子が置かれているテラスでアキヅキは幸せそうに笑う。
「あっ。シャクマ! 今、赤ちゃんがわたしのお腹を蹴ったわよ!」
「えっ! アキヅキ、本当か!? ちょっと、俺も赤ちゃんが腹を蹴ってる音ってのを聞かせてくれよっ!」
2階のテラスからシャクマに手を振るアキヅキのお腹はぽっこりと膨らんでいた。アキヅキが妊娠してから、早8カ月目を迎えていた。予定通りならあと2カ月もしない内に待望の第1児を出産することになる。
「良いニャー。アキヅキちゃんは……。フランちゃんも早くシャクマとの子供が欲しいニャ」
「そんなこと言っても、他種族同士だと子供は出来にくいのよ? わたしのはたまたま、たまたまよ?」
「そんなこと言って、アキヅキちゃんはシャクマ独り占め月間とか言い出して、シャクマと1カ月もの間、寝室から出てこなかったニャーーー!!」
シャクマを諦めきれないフランに、アキヅキが提案したのは、半年に一度の頻度で1カ月間、シャクマをアキヅキが占有できる権利を認めるならば、第二夫人として、シャクマと同じ家に住んでいいわよ? とのことであった。
フランは不承ぶしょうであるが、それを了承したのは良いのだが、アキヅキはシャクマとの結婚式を終えた直後にその権利を発動して、一カ月間、夫婦の寝室から出てこないという荒業を繰り出したのである。
それがちょうど9カ月前の出来事であったから、アキヅキは抜けているところはあるが、女性としてのたくましさに溢れているとでも言えよう。結局のところ、シャクマとの間柄において、アキヅキは一歩も二歩もフランに差をつけたといえよう。
「フラン? 恋は戦争なのよ? それを教えてくれたのは、フラン、あなた自身よね?」
フランはフランで、シャクマの今の身体においての童貞を、アキヅキに黙って奪っていたのである。だからこそ、アキヅキはフランが抜け駆けしないようにとのことで、強硬策に打ってでたわけである。
「ほっほっほ。シャクマさまは男冥利に尽きますな。こんな美しい女性たちを虜にしていますのじゃ」
言い争いを続けるアキヅキとフランの間に割って入るかのように、テラスに現れたのはシュレイン家の筆頭執事であるバジル=フォルジュ、通称:バジル爺であった。かれは冷たく冷やした麦茶を入れた鉄製のヤカンと、空の縦長のコップを3つ持ってきたのであった。
彼は白いテーブルの上に縦長のコップを並べた後、その中に麦茶を注いでいく。そして、3つ目のコップに麦茶を注ぎ終わったと同時に、テラスにシャクマが飛び込んでくるのであった……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる