『君、アイドルじゃなくてマネージャーになってみない?』

ドングリ

文字の大きさ
1 / 1

第1話『beforeアイドル→afterマネージャー』

しおりを挟む
私の名前は星久喜ほしくき雪海ゆきみの16歳の女だ。
私の夢はずばりアイドルになること!トップアイドルのひびきカノンちゃんを目指して1年間ぶっ続けでアイドルになるための勉強や訓練をしてきたのだ。

そして今日は夢にまで見た大手アイドル事務所のオーディションの日、練習の成果を試す時が来た。

[審査員A]
「次、18番!」

「はい!」


アイドルはまず元気と声と第一印象が大切だ。ここでへまをしたらあとからの印象も当然悪くなる。
気は抜くことが出来ない。


[審査員B]
「お名前は?」

「星久喜雪海です」

[審査員A]
「ふんふん、なかなかのオーラがありますよ。どうですか?」

[審査員C]
「まあまあじゃないかな…」


よし!まずまずの反応だ。今日のために奮発してオシャレをしてきてよかった。


[審査員B]
「好評ですよ、星久喜さん」

「ありがとうございます!」


ちゃんとお礼が言える素直なアイドルは確実に売れると私は信じている。


[審査員C]
「ちょっと聞いてもいいかな?」

「はい?」

[審査員C]
「君、中卒なんだって?」

「そ、そうですけど…」


なんだか嫌な予感がする。ここまでは全て上手くいっているつもりだったが。


[審査員C]
「じゃあ無理だね」

「え?無理って…」

[審査員C]
「て言うかバカでしょ?中卒なんて」

「は?」


数時間後…。


[審査員A]
「今回は残念だったね…まあ、次も待っているよ」


審査員にそう言われて私は不合格の書類を渡された。あのあと、面接の次はステージのオーディションがあったはずだが、それすらも受けさせてもらえなかった。
理由はたった1つ、私が中卒だったから…。


「そんな…今までの努力は何だったの……」


私は休憩部屋でひとり、深く落ち込んでいた。
家に帰るのも、不合格になったのはまだいい(?)、でもその理由が、中卒だったからなんて誰にも言えない。
私はアイドルになるため、学歴も友達も全部犠牲にしてきた。それなのに、こんなことって無いよ!


「くっ…えいっ!」


私は飲み終わった空き缶を握り潰してゴミ箱に勢い良くダストシュートした。気高く上品なアイドルはこんなこと絶対してはいけないはずなのに、今はとにかく頭にきてしょうがない。


「私にはアイドルしか無いのに……」

[???]
「いや、そんなことありません」

「……!?」


見上げると、目の前に黒いサングラスをかけていて、リクルートスーツを着ている金髪の男の人が立っていた。


「誰…?」

[宇佐美 星人]
「初めまして、わたしは歌早稲うたわせアイドル事務所のスカウトマンをしている、宇佐美うさみ星人せいとと申します。けして、星人せいじんじゃありませんよ?」

(歌早稲アイドル事務所?聞いたことないな…)

[宇佐美 星人]
「そちらの書類を持たれているということは、不合格だったようで?」

「っ…」


私は恥ずかしさのあまり、書類を手で隠す。


「何ですか?落ちこぼれを笑いに来たんですか?」


私は宇佐美星人に睨みを効かす。


[宇佐美 星人]
「そんな怖いお顔をなさらないで下さい…笑いに来たのではありませんよ、と言うより、頼みがあって来たのです」

「頼み?」

[宇佐美 星人]
「君、アイドルじゃなくてマネージャーになってみない?」


ここで、タイトル回収。


「マネージャー?」

[宇佐美 星人]
「そう、マネージャー。君、アイドルの知識は?」

「え………あ、ば、ばっちりです!」

[宇佐美 星人]
「そう…じゃあこれは当然知っていますね?アイドルの3ヶ条は?」

「元気と、声と、第一印象…!」


私はこの時、すらすらと言葉が出てきた。


[宇佐美 星人]
「Oh!beautiful!!素晴らしい!きっと君なら、良いアイドルになれるでしょう!」

「あっ…待って下さい!」

[宇佐美 星人]
「どうしました?」

「私はアイドルになりたいんですっ!それなのに…アイドル達がファンの前で楽しく踊って歌ってるところを指くわえて見てろって言うんですか!?それにアイドルになろうとしてた私がマネージャーになれるわけ無いじゃないですか!」

[宇佐美 星人]
「いいやなれます」

「…っ」

[宇佐美 星人]
「アイドルの知識を持っているならそれだけで充分!星久喜雪海さん、是非わたし達の歌早稲に…」


宇佐美さんが私に手を差し伸べる。


「……」


どうしよう、もしこのチャンスを逃したら、アイドルになれない私に居場所はあるのだろうか…。


「その前に…親に相談していいでしょうか…」

[宇佐美 星人]
「……もちろん、では、これは事務所の名刺です」


私は宇佐美さんから歌早稲アイドル事務所の名刺を受け取った。
決める前に、私はどうしても親であるお母さんに相談しておきたかった。


「もしもしお母さん?」

[雪絵ゆきえ]
『雪海!どうだったの?オーディションは?』


直接会って話をするのは勇気が無かった。


「……落ちちゃった」

[雪絵]
「もう!何それ冗談?もちろん合格したんでしょ?貴女頑張ったんだもの」


お母さんは愉快な人だった。


「…っ、聞いて!お母さん!私アイドルをやめてマネージャーになりたいの…!」

[雪絵]
「それって…」


お母さんはしばらく黙っていた。
大丈夫、怒られる準備は出来ている。


[雪絵]
「いいじゃない、マネージャー。貴女向いてそうだし、やってみれば?」


だが全く怒る気配も無く、声色こわいろも愉快なままだ。


(あれ?)

「お母さん?」

[雪絵]
「ん?」

「もっと怒らないの?」

[雪絵]
「どうして?マネージャー、やりたいんでしょ?だったらやればいいじゃない」

「…………分かった…やってみるよ…」


ピッ…。


私は通話停止ボタンを押して電話を切る。


「星久喜雪海です私を、マネージャーにさせて下さい!」


私は渡された名刺を頼りに、歌早稲アイドル事務所までたどり着いた。
そして、若干アイドル臭さを残して再び宇佐美さんの前に顔を出した。


[宇佐美 星人]
「決心が着けたようだね…」

「はい…」


そして私は、アイドルから、アイドルをトップに導くマネージャーになることが出来た。


[宇佐美 星人]
「では紹介しましょう」


宇佐美さんが片手を上げて指を1回鳴らす、すると、ステージの幕が上がり始める。
見えたのはキラキラと輝くスターだった。


[白樺 月也]
「太陽よりでっかい夢!オレはオレを越えてゆく!その名は白樺しらかば月也つきや!誰よりもNo.1が似合う男はこのオレ様だ!」


月光のように、白く光り輝いているようで何故か熱い光りを持っている者。


「ず、ずいぶん派手な演出ですね…?」


気付いたらそこら中に紙吹雪の紙やら花びらやらが床に散らばっていた。


「って!?ひとりだけなんですか?」

[宇佐美 星人]
「なかなか良さそうなアイドルが見つからなくてね…」

[白樺 月也]
「おいっ!あんな恥ずかしいことさせておいて無視してんじゃねーよマネージャー!!」

「きゃっ…」


大声で怒鳴られた。


[宇佐美 星人]
「彼は白樺月也君。先月スカウトしてきたおとこのこなんだ」

「は、初めまして…私、マネージャーの星久喜雪海です」


今はもう第一印象とか考えている暇は無かった。だからせめて私は丁寧に挨拶する。


[白樺 月也]
「おうっ!これからよろしくなマネージャー、それと、タメ口でいいからな?」

「う、うん。よろしくね、白樺君」


アイドルとしては素直に受け取った方がいいだろう。


[白樺 月也]
「月也でいいよっ!名字なんてかったるい呼び方するな」

「じゃあ月也君だね」

[宇佐美 星人]
「よし、それじゃあ星久喜マネージャー?君にさっそくお仕事を用意してあるんだけど」

「初のお仕事ですか?」


ドッキドキのワックワクだ。


[宇佐美 星人]
「まずは月也君と交際してみて下さい」

「は?交際?」

[宇佐美 星人]
「期間は3日です。それまでに月也君のことをしっかりと理解しているようにして下さいね?」

「待って、待って下さい!何ですか交際って?」

[宇佐美 星人]
「ふたりの男女がお付き合いすることですよ?」


それは分かっている、理解している。


「アイドルは恋愛禁止でしょう?!」

[宇佐美 星人]
「デビュー前だから平気ですよ」

「そんな軽い考えでいいんですか!?」

[宇佐美 星人]
「じゃ、明日から月也君をよろしくね?」

─────────────────────

第2話 『いきなりデート』 近日公開
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

貞操逆転世界で出会い系アプリをしたら

普通
恋愛
男性は弱く、女性は強い。この世界ではそれが当たり前。性被害を受けるのは男。そんな世界に生を受けた葉山優は普通に生きてきたが、ある日前世の記憶取り戻す。そこで前世ではこんな風に男女比の偏りもなく、普通に男女が一緒に生活できたことを思い出し、もう一度女性と関わってみようと決意する。 そこで会うのにまだ抵抗がある、優は出会い系アプリを見つける。まずはここでメッセージのやり取りだけでも女性としてから会うことしようと試みるのだった。

処理中です...