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1-4 世界把握編:小さき転生者、冒険者ギルドで暮らす
42 ギルドの日常①
しおりを挟むギルドに来てから数日が経ったっていうのに、未だにその習慣を体に慣れさせるのに必死になっていた。
朝は比較的に平気なんですよ。朝は。
回数を重ねていくにつれて扱う内容のレベルが上がっていったといえば上がっていったけど、僕のユニークスキル『言語理解』がとても役に立ってくれているからとても楽に感じた。
言語部分と数学はユニークスキルのおかげで、元の世界の知識がこの世界でも適応できるように脳内変換され、理解しやすいようになっているらしい。
高校程度の知識なら把握はできているつもりなので、三か月やそこらで教えられる一般的な教養は何の問題もないだろう。
それにしても、白の部屋で英語とか覚えるのが大変だから、とか適当な気持ちで選んだスキルが役に立ってくれるとは思ってもみなかった。
第四創造神が言語とかを統一してくれている、みたいなことを無意識にでも期待をしていなかったって考えると面白い。昔の自分をよく選んでくれた! とほめてあげたい。
朝はこんな感じでとても楽なのだ。
だが夜はフルで訓練をした場合、余裕で二時を過ぎてしまう。つまり睡眠時間は三時間から四時間だ。
毎晩毎晩、体をこき使ってるので自分の体にごめんなさいと言いたい気分になってしまう。
それでも頑張って武器の扱い方や体の動かし方を反復して練習していた三日目……くらいだったっけ。その時にとんでもないことを言い出した。
「今日からは『武器を使う私に攻撃を当てる』にしましょうか」
ナグモさんは楽しそうな顔で木刀を取り出したのだ。
不敵な笑みを浮かべ、武器を構えるナグモさんに僕は自然と体が引けてしまった。
先程までとは圧が明らかに違ったのが記憶に新しい。
あの時は武器を構えているだけで、直接何かをしている訳では無いのに完全に別人に感じた。
「……なぐもさんは攻撃を……するんですか?」
その圧力に肝を冷やした僕は怖くなって聞いてみた。
ナグモさんは僕の質問を聞くと、一瞬驚きの表情をし、さっきより口端を上げた。
その笑みに対し、本能的に危険を察知した僕は直ぐに発言を訂正しようとしたのだけど……。
「クラディス様のお望みなら、私も心を鬼にして致しましょう」
遅かった。ほんとうに、遅かった。くそ。
絶対僕の声が聞こえてるのに、わざと遮って、大袈裟に『私はしたくなかったけど……仕方がない』みたいな表情をして話した。
この時僕は、すごく悲しそうな顔をしていたの違いない。
こうして攻撃を避けつつ、ナグモさんに攻撃を当てる訓練が始まった。元々ハードだった夜の訓練がさらにハードになって、体の状態が言葉の通りボロボロだ。
受け流されないから体力はイタズラに減っていくことはないけど、打撲や擦り傷が体中にできる。
全くお構いなしに攻撃してくるので、僕が回避行動をとらないと顔面に木刀が突き刺さるとか普通にある話だ。なんなら、一回本気で当たりそうになった。その時も頬を掠めたからよかったんだけどさ。
ナグモさんの中に『限度』というものが存在していてほしいと願うばかりだ。
そんな僕の憩いの時間は、朝の勉強会が終わった流れでペルシェトさんと丸さんと一緒に食べるランチ。
スタッフ向けの食堂ということもあって、大勢のスタッフに混じって食べさせてもらっている感じ。そこでスタッフの人と知り合いになったりして、僕としても交流の場が出来てとても嬉しい。
丸さんは食事中も周りのスタッフから色々話をかけられているから、頼られているんだなと感じる。ペルシェトさんはそんなのお構い無しに食べることに集中して、すごく美味しそうに食べている。うん、マイペース。
昼食の後は基本暇なので何をしようかと悩むが、外に出ていくのもめんどくさいと思って第二書庫か訓練場で過ごしている。そしてたまに寝ている。体が悲鳴を上げてんだ……。
朝は勉強会、昼は自由時間という名の予習と復習、訓練について行けれるような基礎体力の向上と反復練習。夜は気絶する、または時間を迎えるまでの訓練……だけだっけ。他にはなにか……。
――あぁ、忘れてた。最近、悪魔的なモノが夜の訓練に現れたのだ。
試験管のようなものに入った薄緑の液体――その名も『ポーション』。
それが登場する前までは気絶をしたら訓練が終わっていたというのに、気絶したらその『ポーション』っていう薬を僕に飲ましたりぶっかけたりして強引に元気を取り戻させてくる。
どうやら肉体的な回復が望める回復薬らしい……が、絶対当初の目的じゃない使い方してるでしょ、アレ。
結局気絶しても起こされ、戦って、気絶して、起こされて。永遠と体が元気だから続けることができる。しかし、頭は一度気絶しているわけだから相当な負担がかかっている。まさに、生き地獄だ。
と、こんな感じで僕のギルド生活は毎日楽しくやっている。
僕は、寝起きの頭でぼんやりしていた頭を軽めに叩いて、目の前のことに集中をしようとした。
今は、勉強会の途中なんだから。
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