【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

文字の大きさ
56 / 283
1-5 世界把握編:小さき転生者、世界を知る

54 突撃お宅訪問……のされる側

しおりを挟む


「……んぁ……まぶし……い」

 窓からの日差しが、顔にチラチラと当たったことで目が覚めた。
 寝起き特有の気怠けだるさが、体全体を支配している。とても眠たい。
 一回は日差しを避けるように体勢を変えたが、何かに気づくように再度、窓の方を向いた。

「まぶしい……って……あれ? 今何時……?」

 ゆっくりと、壁にかかっている時計に目を向けると短針が8を指していた。

「20時……ね……。オーケーオーケー……」

 頭が鉛のように重たいの感じ、座ったままぼーっと宙を見つめる。
 20時ってことは……あと1時間後にナグモさんとの戦闘訓練が始まるから家を出ないといけないから……。 
 それにしても、差し込む日差しが鬱陶しいくらいまぶしいな。

「……って、まぶしい……?」
 
 ベッドで目をこすっている手を止めた。

「!!??」

 ベッドから飛び降り、窓に手を当て外の様子を見てみると20時だと思えない程外が明るい。
 人が楽しそうに話して歩き、窓から見えるコーヒー屋さんで何人もの人が新聞を片手にコーヒーをすすっている。
 そこでようやく状況を飲み込めた。

「これって……朝の8時!?」
 
 寝すぎた感覚だったからおかしいと思ったんだ! くそったれ!!

「普段ならちゃんと起きれるのに……吐きそう」

 頭を抱え、ふらふらとベッドに座った。
 一度もサボったことのない訓練をサボってしまったという罪悪感と怒られるという恐怖心がただでさえ重たい頭に広がっていく。

「と、とりあえず落ち着け……ギルドに言って真っ先に謝れば……」

 寝てた理由は、えーと「僕の種族が亜人だったから、驚いて寝ちゃいましたアハハ」――って、そんなの言えるわけないだろ!
 ど、どうしよう……。ナグモさんの出勤時間は何時だ? 仕事が始まる前に会いに行った方が良いよな? 仕事をしている時には迷惑がかかるし……。毎日2時過ぎまで僕に付き合ってるんだから、朝の出勤時間は遅いはずだ。

 ――コンコンっ。

 言い訳をベッドの上で縮こまりながら考えていると、ドアがノックされた音が聞こえてきて顔を上げた。

「ひっ!? ナグモさんっ!??」

 僕の部屋をノックするのはこの寮でナグモさんしかいない。

「はい! す、すみません!! 今出ます!!」

 とりあえず返事を返してみるがナグモさんだった場合、何をされるか分からない恐怖がある。
 ベッドから降りて玄関まで走っていくと、鏡に映る自分が眼帯をしていないことに気付いた。

「ちょっ!! ちょっと待ってください!! あー!!」

 バタバタと慌てて机の上に置いてあった眼帯をつけようとしたら、またノックされた。

「ご、ごめんなさい!! 今行きます!!」

 扉が開けられた瞬間殺されるか? 蹴りか? いや、ナグモさんのことだ、武器を持ってたりするか……?
 眼帯をつけ、急いで玄関の所に行って鍵を開けようとしたら鍵が開いていることに気付いた。
 しかしそれについて考える暇は作らず、ドアをゆっくりと開けて見上げると――

「お、久しいな――って、すごいボロボロじゃないか、どうした」

 目の前には高身長の長髪の男性が立っていた。

「うえっ!? レ、レヴィさん……!?」


      ◆
 
 
 突如来たレヴィさんを部屋に招き、適当に座ってもらった。

 出会って一言目でボロボロと言ってきたのは、もちろん寝ぐせもあるが体の怪我がひどいことを言っていたようで。とりあえず冒険者に絡まれたことと、訓練で避け切れずに付いた怪我なのだと説明をしておいた。

 そうして少し話をしようとしたらレヴィさんから「今日と明日の訓練は無し」との報告を受けた。

 何故レヴィさんがその話を、と思ったがこの部屋による前にギルドに立ち寄った際、ナグモさんと遭遇して話を聞いたのだと。
 王国に来る友人を迎えに行ってくるからとかなんとか。ナグモさんの友人ってどんな人なんだろうかと気になるところだが、とりあえずは今日家に来たのがレヴィさんでよかった。
 首の皮が一つ繋がった……殺されると思っていたけど、一安心だ……。

「この椅子……とても座り心地がいいな。それに結構しっかりした部屋なんだな……本棚やベッド、机もあるとは」

「そうなんですよ、必要なものが粗方そろってる感じで。私物はほとんどないんですけど」

「宿舎とは聞いていたが、私たちの血盟拠点ホームよりも過ごしやすそうだ」

「えっ! その……すみません」

「何故謝る。ウチはウチで冒険者しかいないから留守になることが多いからな、お金をかけていないだけだ」

 砕けたように笑うレヴィさんに目をぱちくりとさせた。
 僕の記憶にあるいつものレヴィさん……だが、どこか動作にぎこちないような気もする。久しぶりだから緊張してるのか、こんな子ども相手に? 

「……それで、レヴィさんは今日何しに来てくれたんですか?」

「職員からは色々と進捗を聞いていたのだが、本人に直接話を聞こうと思ってな……というのは建前で、溜めていた指名依頼を消化し終えたから。つまるところ、暇だったから子どもの様子を覗きに来た、ということだな」

「仕事の合間を縫ってきたパパじゃないですか」

「実質、私たちが面倒を見てるのだから似たようなものだしな」

「レヴィパパ! へへへ」

「……調子が狂うな」
 
 恥ずかしそうに顔を背けたレヴィさんに、追撃で覗き込むように体を傾けた。
 ずっと体勢を変えて来るので、ずっと追うように覗き込んでいると頭をぺしっと叩かれた。調子に乗り過ぎたみたいだ。
 
「それで、他のお二人は? 別でクエストとかを」

「いや、アイツらは血盟主に捕まって身動き取れなくなってる。会いたかったか?」

「はい……あ、いいえ。会いたいですけど、わがままを言うのも嫌なので。クエストで疲れてるでしょうし、レヴィさんが来てくれただけでも僕はうれしいです」

「そうか……」

 と、何か逡巡をするような間があったが、目を細めて笑った。

「ならよかった」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

処理中です...