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2-3 少年立志編:大人たちは机で語る
83 血盟報告会①
しおりを挟む組合とは、各職業が共存繁栄をするために結成される同業者組織の事である。
組織されている組合数は多く、その全てを把握するのは世界に住むものでも難しい。その中でも代表的なものをあげるとするのなら、傭兵組合や商人組合だろうか。
いや、無頼漢をまとめ上げて依頼を斡旋し、階級を付けて、魔物退治から溝掃除までを幅広く取り扱う組合――冒険者組合抜きで組合は語れまい。
国だけでなく、街、小さな村にまで冒険者組合は根を張り巡らし、便利屋の如く冒険者に仕事を与える。彼らなしではとっくの昔にこの第四地区は滅びているだろう。
一組合が戦力を持ちすぎている、という非難はあれど、組合自体は中立組織であるからと今日まで世界の便利屋として存在してきている。
冒険者組合が管轄しているのは、主に依頼の発行と受注、冒険者への登録、昇格、降格、資格の剥奪、個人情報の管理など。
難しい話ではない、組合の理念に則し、『冒険者』という職業が滞らないような業務を取り扱っているだけだ。
その数ある業務内に、冒険者が所属する【血盟】という『複数人の冒険者で結成された組織』の情報管理と広報という項目が存在している。
その情報を基に血盟の報告会が、今日行われようとしていた。
◆◇◆
場所はデュアラル王国にある冒険者組合管轄の建物。その内装は、裁判でも行えそうな厳格さもあり、前に立って話す者の話を聞く施設だとするのなら大講義室のような印象も受ける。
中央の窪みに人が立てれる台。その中央を向いて座れるように緩やかな斜面に設置された椅子。机がその椅子の各列に並べられている。
特筆すべきは、中央の台の上には、異世界らしからぬ大きなモニタ―のような物が四方に向けらえて設置されていることだろうか。
科学技術が魔法でほとんど代替されている世界だと言えども、最低限の資格情報を伝達する手段としては十分過ぎる技術は持ち合わせていた。
ましてや、血盟報告会ともなれば最新鋭の設備で迎えなければなるまい。
組合は、馬要らずの魔素注入型の車! を開発した者がいる最新鋭の技術者が集まる街にアイデアを出して、わざわざ大がかりな設備を拵えた。
空中から吊るされた技術の結晶と言える代物の周りを囲むのは血盟主。その目下の台にいるのは眼鏡をかけた冒険者組合の女性職員。
「これより血盟上半期の結果報告会を始めます。担当は私、組合本部のスタッフリーダー、リンク・ルースが務めさせてもらいます。よろしくお願いします。――では早速、前年の順位を参考して【シュテルクト】から報告をしていきます。上をご覧ください。まず、クエスト受注数に対しての……」
中央に立っているルースが資料を片手に、モニターにグラフを映し出しながら話を始める。
事務的に進められる報告会。それを見聞きする血盟主側の様子は三者三様だ。
映し出される情報を見ながら欠伸する者、苛立ちからか貧乏ゆすりをし、手の爪を噛んでいる者。テスト返却を待つ童子のような、と言えば怒られるだろうが、そう見えてしまう。
(だとしたら、態度の偏りは成績の良し悪しですかね)
血盟主が座るところは大まかに指定され、上位の血盟はルースが立っている場所の正面。そこからは順位が下がっていくと、段々と座る場所が背面に回っていく割り振りだ。
正面席に座っている優秀な血盟を抱える血盟主達は、内心はどんな思いをしているかは分からないが、真剣に話を聞いてくれているような気がする。
問題は、側面や後方。そこに位置する者らは大きく順位変動をする血盟であり、年齢的にも血盟主的にも若い者が多い。
ルースはスムーズに報告会が終わってくれることを祈って、報告を続けた。
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