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2-5 少年立志編:友人としての線引きを
120 寝る前のこそこそ話
しおりを挟む「やだ! 今日はクラディスと約束してるボクがベッド使うんだから!」
「分かったって、ベッドはイブに譲ろう」
「譲ろうも何もボクの番なんだ!」
「その代わり、僕とクラディスは男二人で仲良く床で寝させてもらう」
「なっ!」
「あー、イブさんはそうかー、一人でベッドで寝るんだもんなー。仕方ないなぁー」
何、僕がいないところで楽しそうな話をしているんだか……。
洗い物をしながら二人が寝る場所の話をしているのを2人に聞こえないように笑って聞いている。
そうだったな、三人だから毛布とかも人数分ないし、食べることばかりで寝ることは何も考えてなかった。
「ぐぬぅー! ボクも床で寝る!」
「だったら僕はベッドを貰おう!」
「嫌だ!」
「わかりやすくワガママ……」
「今日はイブがベッド使う日だからね、ケトスは申し訳ないけど床かソファになるなー」
「ほら! クラディスもああ言ってるよ!」
「うん、それは分かった。だけど、そうしたらイブは一人でぬくぬくとベッドで寝ることになるんだよ」
「そ、そっか……」
「3人で床で寝るっていうのは? カーペット敷いてる所あるし、部屋は綺麗にしてるから掛布団とか毛布を使ってさ。せっかく3人いるんだから全員で寝たらいいよ」
「選択肢が増えた……」
ケトスに言いくるめられてるイブを見て第3の案を出すと、オロオロしてたイブがさらにオロオロし始めた。
「僕はベッドで寝たいです!
それを見てハイっと真っ直ぐ手を挙げ、ケトスは訴えた。
「! ボクもベッドがいい!」
負けじと結局最初の意見に戻して、イブも手を挙げた。
「そんなんだったら、僕もベッドがいい」
僕もワガママを言っていいならベッドで寝たいから、手を挙げた。
すると「えっ!」という顔でこちらを見て来た。
「クラディスまで……!」
「だからこうなるでしょ。3人で床で寝たら解決だと思うけど?」
「むー……ボクはそれでもいいんだけど、ケトスがベッドに寝るーって言うから」
「ケトス~?」
「冗談さ、じょーだん。2人がそうするなら僕も床で寝させてもらうよ」
「なら決まりだね」
ケトスが折れてくれたから、それ用にスペースを作り、床に毛布とか諸々を投げるとイブが毛布の真ん中を持って寝始めようとしたから「歯磨きしないと」って言って、三人で歯磨きをしに行った。
「人の部屋に泊まるのなんて初めてだよ」
「ケトスは寝ずに動けるもんね」
「寝なくても動けるって……?」
「ケトスは僕とあった時も何週間も寝てなかったんだよ。凄いよね」
「ほぇ……変人だ」
「あの時はね。色々あるんだよ僕にもさ」
とりあえず歯磨きを終え、小一時間ほど会話をすると三人でカーペットの上に横になってみた。
「ぉお……なんか違和感ある」
「天井がいつもより高く感じる……!」
普段ベッドとかソファで寝てる僕とイブはそういう感想しか出てこなかった。
明るい木目が視界沢山に広がり、こんな天井をしていたのかと新たな発見をした。温かい雰囲気はあったが、天井が結構重要な役割を果たしていたんだな……。
「あー、結構落ち着く……」
「ケトスって普段どんな所で寝てたの?」
「クラディスと会う前はどこでも寝てたよ~。人の気配とか魔物の気配に敏感だからすぐ起きれるし」
「森の中で寝たこともあるの?」
「うん。だって流石に眠たい時はあるからさ、体の動きも鈍くなるからね」
「大体の人って2日、3日でそうなるんだけどね……。ケトスはスタミナお化けだよ」
「クラディスの生活の方が僕は怖いけどなぁ。毎日毎日勉強して、訓練して。それが終わったかと思うと魔物とのスキル無しの実践訓練、その休みの日もクエストをやる。僕には絶対耐えられないよ」
「分かる! ボクもクラディスのストイックさに驚いた!」
「イブにちょっと注意されたから、反省してるよ」
「注意されたの? クラディス。ははは、若いなぁ」
「そんな年齢変わらないと思うけど」
「え、何歳だっけ?」
「12とかそんなところ」
「若い若い、僕は15だからね。イブは?」
「えー、内緒ー」
「なんだそれ」
「でも、ケトスって僕の一年前くらいに冒険者になったんだよね? なのに15歳なの?」
「えー、秘密ー」
「はいはい」
冒険者になれるのは学校を卒業できる年齢の15歳から。
ちなみに、15歳から成人らしい。
さすがにこんな世界で義務教育なんて制度を敷けているわけもないから、学校卒業後から冒険者~ってのはかなり贅沢な進路なのだろう。
ちなみに、ぼくがゴリ押しで登録をしてもらった。本来は12歳で冒険者にはなれないみたい。といっても、割と多いらしい。年齢詐称が割りと多いってのは驚きだ。
(ってあれ? 僕ってこの世界で小学校すら卒業してなくないことになるのか)
この世界のぼく学歴なしか。とほほ。小卒ですらなく、幼卒ですらない。中退ですらないから、まっさらな状態かぁ……。でも、今更学校に行ってみようとは思わないけどなぁ。
「ケトスさんとクラディスに出会えてよかった」
「……どうしたの? 突然」
髪をクシャクシャにしながら考えていたら、突然イブが恥ずかしいげもなく呟いてきた。
「いやー、だって偶然にこうやって出会えるっていうのもレアだと思うんだよね!」
「レア、か。イブとの出会いは確かにすごかったけど、ケトスとの出会いも不思議だったからね? 森で会ってさ、僕を殺そうとしてきたんだから」
「懐かしいなー、そんなのあったなー」
「まだ一月くらいしか経ってないよ」
「あー! ふたりと会えて楽しかったぁ。ボクって同年代でこうやって話せれる人っていないからさ~」
「「僕もいないよ。」」
イブもこう見えて苦労してるらしい。ケトスも血盟にスカウトされてからは同年代の子と接する機会がないって言ってたもんな……。
お互いに交友関係は狭いってことか。泣きたくなってくる話題だ。
突然窓から入ってきて不思議な出会いをして、魔素が見えないくらい威力を抑えてても敵を屠れるイブ。
同年代の中で頭一つ抜きんでてるケトス。
二人に周りの冒険者が声をかけない理由が無いと思うのだけど……引く手あまたというか、パーティに誘われたりするのが無いのはおかしいと思う。どこに目がついてんだ。
「どうしたの? クラディス」
「お互いに大変だね、って思っただけ」
「? そうでもないよ。他に友達がいなくても、ボクにはこうやって話せれる友達がいるから」
「……そういうこと、恥ずかしげなく言うのはズルいと思うなー」
「なになにぃ? 照れてるの?」
「もーいいでしょ! 早く寝て! 朝ごはん作ってあげるから」
「おお! 聞いた? ケトスさん」
「聞いた聞いた、誰が先に寝るかで競争だね」
「負けない……!」
寝ることまで競争しないといけないのか、この二人は。
イブの言葉を最後に無言がずっと続いた。本当に寝よう寝ようとして頑張ってるのだろう。
その時間を使って明日のことを考えようとしたら、すぐ寝息が聞こえてきた。ほとんど一緒っぽいから競争は同着ということにしておきましょう。
気持ちよさそうに寝ている二人の毛布を引っ張らないように気を遣い、僕も寝るようにした。
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