【HIDE LEVELING】転生者は咎人だと言われました〜転生者ってバレたら殺されるらしいから、実力を隠しながらレベルアップしていきます〜

久遠ノト@マクド物書き

文字の大きさ
144 / 283
3-1 残穢足枷編:最強の少女

141 上位部門 選手入場

しおりを挟む


 僕たちは簡単に昼飯をすまして席に座って話しているとお昼の休憩時間も終わったようで、観客席が徐々に埋まっていった。

(そういえば中位部門に転生者はいたの?)

 次の試合が始まる前にエリルへの確認をしておこう。

(いえ、そのような反応は無かったです)

(そっか……そんな沢山いる訳でもないか)

 奴隷の名簿にはチラホラと『転生者』と疑われていると記述がある人がいた。その人たちが全員白ということだ。
 やっぱりこの世界は現時点で転生者かそうでないかの判断ができないのかもしれない。『疑いがある』と濁す辺りによくそれが表れてるし……。

(それで.......、ますたー。お金の方はどうなりましたか……?)

(あぁ、うん。なんとかマーシャルさんが勝ってくれたおかげでね。足りるかは……分からないけど、一応は確保出来たと思う)

(ってことは賭け事に勝ったわけですね! やはり神運は伊達じゃないと)

(あ、やっぱりそれ関係ある……?)

(あると思いますよ! まぁ、運も実力の内ってことで!)

 恩恵を感じることがそこまでなかったが、神運……か。
 感謝しないとな。どこまで運が絡んでるのかは分からないけど。

(では、私は引き続き鑑定を続けますね)

(うん、任せたよ)

 エリルとの会話が終わると、ふぅーと長い息を吐いた。

 現状は、転生者だと断定ができないから怪しい人をとりあえず引っ捕まえてる感じか。
 なんというか、そんなので勘違いされて人生が終わるのは酷い話だな。
 それも全部、僕達のせいってことなんだよな。気が重い……。

(鑑定士の数が少ないのか……)

 さすがに冤罪で殺すってことはしないだろう。殺す前に鑑定は通すハズだ。
 だとしても……。

(……ぼくらのせいで、ごめんなさい)

 誰にも届かない謝罪をしておいた。
 転生者だとバレたら殺される世界は、転生者以外の人にも良い影響は与えていない。
 ……ちぐはぐな世界だ。

 『では皆様掛け金!! お昼休みが終わりましたがお腹は膨れましたか? この上位部門は見るだけで胃もたれをしてしまうかもしれませんのでどうかお気をつけてください!! まずは掛け金の準備を!』

 あれこれと考えているとアナウンスが響いた。

(まぁ……今考えることではない、か)

 僕は727番を見つけようと端末に目を走らせて、少し下に行ったところに見つけた。

 戦闘奴隷727番
 出自:ロベル王国近郊の農村地
 レベル:およそ100
 闘技場連勝回数/出場回数
 下位部門:1/1回
 中位部門:1/1回
 上位部門:27/27回(通算29連勝中)
 備考:転生者の疑いがかけられている

「出ている試合は全部勝って通算29連勝……。レベル100…………はっ!?? えっ!?」

 ざっと目を通しているとレベルの欄に目が止まり、思わず大きな声を出してしまった。
 それと同時に会場のモニターに掛け金の順位が表示された。

『おおぉっと!! やはり賭け金1位は727番だー!!!! 幼い体で大きい体を力任せに倒していく姿はまるで鬼!! 今まで彼女が出場した試合は全戦全勝! 無敗の727番です! 賭け金2位大きく差を広げて堂々たる1位です!』

「わぁお、やっぱり凄いですね」

「みんな727番が勝つと思ってるみたいな盛り上がり方……」

『――はい、それでは選手入場といきましょう!!』

「で、でもレベル100って、え……?」

「まぁまぁ、クラディス様。見てたら分かりますよ」

 アナウンス後に1つの入場口からゾロゾロと闘技台の中央へと出てきた戦士達。

「ふぇ~! さっきより人が少ないんですねー!」

「普通ならもっと多いはずなのですが……727番が影響しているんですかね。」

 参加者が入ってくるのを目で追っていると、一人だけ遅れて場内に姿を現した人がいた。
 拳殻と言われる武器を両手に装備し、ぼろぼろな服を着てガスマスクのようなモノを付けている少女。
 一目で「あの人が727番だ」と分かった。

 腰辺りまで伸びている真っ黒い髪の毛、褐色肌で耳が人間より長く、エルフより短いように思える。
 目の色は黒く、服から見える肌には古傷のようなモノも見え、彼女がどれだけ戦いの場に身を置いているのかが想像できる。
 その体は周りの屈強な戦士と比較するには可哀想なほど、あまりにも小さかった。

「……あの目……」

 その少女が浮べる目の色を見ていると、どこか悲しい気持ちにさせられた。
 黒い瞳、だが他の戦闘奴隷が浮かべていた色よりも深く、重い感情が奥底にあるような気がする。

 僕がその少女のことを見ていると、観客から凄まじい歓声が727番へと向けられ、その歓声を聞いた他の選手は怪訝な顔になった。

 そして、歓声が一向に落ち着かず、場内の緊張が高まった瞬間。

  ――ゴォォォォン。

『鐘が鳴りました!! 戦闘開始です!!』

 闘技場上位部門、本日の最後の試合が始まった。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...